第6話 レオンハルト様と視察の帰り道
今日は朝から街へ行き色々な所を見て回る予定です。朝レオンハルト様を起こしに行くと、すでに起きていた。着替えをしたら、一緒に朝ごはんに向かいます。
今回は視察中なので、みんな一緒にご飯を食べるのです。
レオンハルト様は食べておいしくても表情はあまり変わらないけれど、お耳がぴこっと動くんです。いつまででも見ていられそうですが、見てない振りをしてぱくぱくと食べ進めます。
朝ごはんも食べ終わり、宿を出て街を歩き回ります。護衛の3人も一緒に歩いています。レオンハルト様は街を歩いて、普段目にする事がない物を見ているのでとても楽しそうです。
表情にはあまり出ないのですが、お耳の動きが速いのでよく分かります。そしてしっぽも楽しそうにぴょこぴょこ揺れているのです。
後ろを付いて歩いている私ですが、お耳としっぽの動きが良く分かるので幸せ気分です。レオンハルト様が見ているお店をちらっと見てみたら、調味料が沢山あるお店だった。色々な調味料があって楽しい。
夢中になってあちこち見ていたら、いつの間にかレオンハルト様に見つめられていた。
(しまった。つい昆布とかもあってテンション上がってしまったわ)
「あっ、申し訳ありません」
「い、いや、好きなだけ見るといい。欲しい物があれば買って行こう」
「ありがとうございます」
最後はぷいっと横を向かれてしまったけれど、なかなかこんなチャンスはないのでレオンハルト様のお言葉に甘えさせて貰って色々と買って行っちゃおう。そのうち和食を作って食べたいな。
レオンハルト様のお世話係りが終わったら、和食を作るための材料を集める旅をしてみても良いかもしれない。昆布があったから他の材料もあるのかもしれない。
「レオンハルト様、ありがとうございました!」
「ん」
レオンハルト様のお耳がぴこぴこぴこっと動いている。嫌がられたわけではなかったので、ちょっとホッとした。
その後はレオンハルト様の後ろを付いて歩いている。たまにお店もちらっと見るけれど、さっきみたいに夢中にならないようにしておかないとね。
あれ、食べ物にしか夢中にならない私って枯れてない? 大丈夫!?
いや、でも、今の私はレオンハルト様のお世話係りなのだから、良い……はず!
レオンハルト様と数日視察で街や港を歩き回った。久しぶりの海は日本とこちらも全然変わらなくて、なんだか懐かしくなったけれどとても楽しかった。
レオンハルト様は視察だから、色々と見て学ぶ事が多かったみたいだ。
私はと言うと日本と違って馬車の旅、そして街並みも全然違くて観光気分が抜ける事はなかった。そんな事を考えていたら、突然馬車がガタン! と止まって身体が浮いた。
「リーゼッ!」
思わず目を瞑ったけれど、いつまで経っても痛みはやってこなかった。恐る恐る目を開けてみると、レオンハルト様に抱きしめられていた。
「レ、レオンハルト様、申し訳ありません」
「リーゼ、怪我はないか!?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
いつの間にレオンハルト様はこんなに逞しくなったんだろうか。あんなに可愛かったのに、びっくりだ。
外から戦っている音が聞こえている。何かあったみたいだ。私もエルフ族で戦えるのだから、戦闘準備をしなくては。レオンハルト様は絶対に守るんだ!
「レオンハルト様、お下がりください!」
「俺は大丈夫だ。リーゼこそ下がっていてくれ」
「いいえ。守るべき主はレオンハルト様です」
私がそう言うと、すごく微妙そうな顔をされてしまった。反抗期なレオンハルト様は、女性に守られるのが嫌かもしれませんが、そこは譲れない所なのですよ。
私がお世話係りになったのは、戦闘も出来るからですからね。レオンハルト様よりも身長が低くても幼く見えようと戦えるんですからね!
「リーゼ、俺はリーゼを守りたいんだ!」
そう言うレオンハルト様のお耳がぴこぴこぴこっとすごく速く動いている。そんなキュンとくるセリフを言われながらもついついお耳を見ちゃう私って、本当に終わってるなと自分でも思う。
やっぱりレオンハルト様は素敵に育ちましたね~。これはもう学園でもモテモテなのでは?
「ふふっ、ありがとうございます」
そんなことを言っていると、外から扉をノックする音が聞こえた。声からすると、クラウス様みたいだ。
「レオンハルト様、開けますよ。お怪我はございませんか?」
「ああ、大丈夫だ。外はどうだ?」
「賊が出ましたが、問題なく撃退しましたよ。……所で、我らが戦っている間に何やってるんですか?」
「何がだ?」
「……気が付いてないんですか?」
護衛のクラウス様はため息を吐くと、飽きれたようにさらに言葉を続けた。
「何でリーゼを抱きしめてるんですか?」
「「あっ!」」
思わずパッと離れた。すっかり落ち着いてそのまま話してしまっていた。赤ちゃんの頃から抱っこしていたからか、レオンハルト様にくっついていたら落ち着いちゃったんだよね。
「す、すまない」
「いえ、私こそすみませんでした」
「そ、それで、怪我人はいないのか?」
「ええ、こちらには怪我人は誰も出てませんよ」
「そうか、それは良かった」
その後は何事もなく王都まで帰れた。ただ、馬車の中がちょっと気まずかったけれど。レオンハルト様も外を見たままこちらを全然見なかったので、私はまたレオンハルト様のたまにぴこっと動くお耳を視界の端で見て和んでいた。
しかし、さっきのレオンハルト様は恰好良かったな。あんなに可愛い赤ちゃんだったのが、今ではこんなに素敵に育っちゃうんだもんね。きっと甥っ子姪っ子達もこう育っているんだろうなぁ。
なんだか色々考えていたら、ちょっと寂しくなってきてしまった。
後3年したら、レオンハルト様は15歳になって成人する。そうしたら、私はこの王城を去らなくてはいけない。そう考えたら凄く寂しくて、切なくなってしまう。
最近は私のやる事も本当に少なくなっている。そろそろレオンハルト様離れをしなきゃなんだよね。後3年、ギリギリまで一緒に居られるんだろうか。
出来たら、レオンハルト様の卒業と15歳のお誕生日をお祝いして差し上げたい。
「リーゼ。どうかしたか?」
「えっ?」
「何か悲しそうな顔してる」
「あっ、申し訳ありません。ちょっと考え事してました」
「何かあったのか?」
「いいえ、大丈夫ですよ」
「そうか」
ついレオンハルト様に付いている時に、そんなことを考えてしまっていた。まさかレオンハルト様に指摘されるほど顔に出ていたとは失敗した。これは気を付けないとだね。
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