第3話 レオンハルト様とデート?

 あの可愛かったぽてぽてと歩くレオンハルト様から、今では少し手足が伸びてすらっとしたけれど、それでもまだまだ可愛い5歳のレオンハルト様です。

 最近では恰好良いブームみたいで、小さいのに恰好付けている所がとってもとっても可愛いのです。


「リーゼ、おれとデートをするぞっ」


「デート、ですか?」


「そうだ、おまつりにいくぞ!」


「あっ、そうですね。今日は建国祭でしたね」


「そうだぞ。だからリーゼはぼくとデートするんだぞ」


「デートなのですね~。ふふっ、それはとっても楽しみですが、国王陛下には許可を貰ったのですか?」


「うっ。い、いくんだもん……」


 国王陛下に許可を貰ってないみたいです。しょんぼりとしたレオンハルト様の目にちょっと涙が浮かんでいるので、部屋の外にいる護衛騎士のクラウスさんに声を掛けて、聞いてきてもらう事にする。


「すみません、クラウスさん。レオンハルト様が建国祭に行くと言っているのですが、陛下に許可を頂いてないみたいなんです」


「聞いてきますので、少しお待ちください」


「はい、よろしくお願いします」


 クラウスさんが戻ってきたら、護衛をきちんと連れて行けば良いと許可が下りたので、建国祭に行く事になった。


「レオンハルト様。国王陛下から許可が下りたので、建国祭に行きましょうか」


「うんっ! リーゼとデートだな」


「ふふっ、そうですね」


 護衛がいるのはきっと気にしていないんだろう。レオンハルト様は5歳なのにデートだなんて言葉をどこで覚えて来たんだろうか。

 それでも可愛いレオンハルト様にデートに行くぞと言われて、とっても微笑ましい。


(この小さい子がお兄ちゃんぶっているのが可愛いんだよね!)


 さすがに人が多いので、手を繋いで街を歩いて行く。しかし、レオンハルト様は王子様なのに街を歩いても大丈夫なんだね。

 護衛にクラウスさんとカールさんとさらに他にもいるらしいけれど、私にはそこまでは分からないのでお任せしておきます。


 ご機嫌なレオンハルト様はとっても可愛いです。お耳の動きがいつもよりピコピコ早いし、しっぽもゆらゆらもふもふと揺れているから嬉しいんだろうな。


(レオンハルト様。そのゆらゆら揺れてるしっぽ、もふもふしたいです~)


「あっ、リーゼ。あれはなんだ?」


「えっ、あれは、果物を使ったジュースの屋台ですね」


「ジュース!? 飲みたいっ!」


「じゃあ、一緒に買いに行きましょうか」


「うんっ!」


 ちょっと危なかったです。しっぽに夢中になっていたから、返事に戸惑ってしまいました。気を付けないと、しっぽを見つめていたのがバレてしまいます!


 事前に屋台の飲み物とか食べ物を買っても良いと許可を貰っているので、一緒に買いに行く事にする。これもレオンハルト様が自分の国の事を学ぶ良い機会なんだそう。

 もちろん食べる時には鑑定の魔法をしっかり掛けてからだけどね。王族だから食べる物には気を遣わないとだものね。


「リーゼ、これおいしいぞ」


「ふふっ、美味しいですね~」


 レオンハルト様はその後もあっちこっち! と色々な物に興味を持って沢山お散歩していた。建国祭の楽し気な雰囲気の中、手を繋いでお散歩しているとレオンハルト様が何かを見つけたみたいだ。


「リーゼ、こっちだ」


「レオンハルト様、どうしたのですか?」


「これ、どれがいい?」


「あっ、クリスティーナ様にお土産ですね。だったらこんなのはどうでしょうか?」


 レオンハルト様が見つけたのは、アクセサリーを売るお店だった。だけど、本格的なのではなく手頃な物だった。だけど、レオンハルト様の事が大好きなクリスティーナ様だったらきっと喜んでくれるだろう。

 

「リーゼ。ちょっとあっちでまっててっ!」


「えっ!? ちょ、ちょっとレオンハルト様!?」


 ぐいぐいとレオンハルト様に押され、仕方ないのでクラウスさん達にお願いをして私は少し下がって待っていた。私がいると選ぶの少し恥ずかしかったのかな?


「よし、リーゼ。いくぞ!」


「はい、レオンハルト様」


 また手を繋いで歩き出す。やっぱりクリスティーナ様へのお土産を買うのが恥ずかしかったみたいだね。まだ5歳なのに、恰好良いのが好きなレオンハルト様らしい。


 その後も色々な所を見て回った。でもまだ5歳のレオンハルト様は疲れないだろうか?


「レオンハルト様、少し抱っこしましょうか?」


「なっ!? だ、だいじょうぶだぞ!」


「疲れてませんか? 大丈夫ですか?」


「だいじょうぶだっ!」


 レオンハルト様は私の手をぎゅっと握ると、ぐいぐいと引っ張って進んで行った。恰好良いのが好きなレオンハルト様に普通に聞いたらいけなかったかな。こっそりと聞いてあげたら良かったかなぁ。


 建国祭の街を沢山見て回ったら、早めに王宮へ帰る。夕方になってくると、お酒に酔ってしまう人達が増えて危険が増えるからね。

 王宮のレオンハルト様のお部屋に戻ると、レオンハルト様に呼び止められた。


「リーゼ!」


「はい、どうしましたか?」


「お、おれのおよめさんになって!」


 そういうと、建国祭の屋台のアクセサリー屋さんで見ていた指輪を私に差し出した。クリスティーナ王妃様のではなかったのか。

 というかおよめさんって!?


「えっ、レオンハルト様。私にくださるのですか?」


「そうだぞ! おれはリーゼがだいすきだからなっ!」


「ふふっ、私もレオンハルト様大好きですよ~」


「じゃあ、ぼくのおよめさんねっ!」


 最後に可愛いレオンハルト様の口調に戻ってしまっているけれど、小さい子のお嫁さんになって! は可愛いなぁ。甥っ子も言ってくれてたんだよね。


「ふふっ、そうですね~。レオンハルト様が大きくなってもそう思ってくれていたら、考えましょうね」


「やったー! リーゼ、だいすきだっ!」


(かわいいっ! 気絶しそうなほど可愛いよー! ってダメダメ、我慢っ!)


 あまりの可愛さにレオンハルト様の頭をなでなでしてしまう。小さい子のだいすきほど可愛いものはないよね。

 今日の日記も沢山書く事が出来てしまった。しかも、宝物まで出来てしまった。レオンハルト様に頂いたこの指輪は私の宝物になった。

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