第23話 HA NU MA N!
黄色い猿のネームドモンスターへの進化が終わったようだ。苦悶の表情をしていた先程とは一転して、悟りを開いたかの様な清々しい笑みを含んだ表情をしていて、背筋が伸びて人間らしくなり、頭の毛も逆立ちスーパーサ○ヤ人みたいになっている。
気付かれないようにそっと《鑑定EX》を掛ける。ハヌマンまで100m程距離があるがどうやら成功したみたいだ。
⚫名前 ハヌマン 15才
⚫種族 グレイデェアモンキー
⚫レベル 32
⚫体力 900/4800
⚫魔力 350/2500
⚫力 1800
⚫防御 1300
⚫技量 2400
⚫俊敏 3400
⚫スキル 王の資質 統率 鼓舞 カリスマ 土属性魔法 体術Lv3 棒術Lv3 空間把握Lv5
⚫魔法 土属性魔法【アースバレッドLv3 アースウォールLv2 土操作Lv2】
⚫状態 疲労
『ご主人様、無事にハヌマン様がネームドモンスターに進化されたようです。挨拶にいきましょう。』
「行くわけ無いだろ!殺されるだろうが。」
『また我儘を仰って困ったご主人様です。』
ローニャンの頭がおかしくなったのもハヌマンのスキル《王の資質》か《カリスマ》のせいなのか?2日に渡ってずっと注目してたから、より強く惹き付けられたのかもしれないな。そうじゃなかったらローニャンがあんな金髪で襟足が長いヤンキーみたいで、目がキリッとしてて鼻も団子みたいで可愛く、胸板も厚く毛がモジャモジャで一日中指でクルクルしてたい......って俺は何言ってんだ!?
想像以上にヤバイなアイツは......今でこそ進化したてだからそこまで強くはないが、この先成長していけばラナ・ダーファングやアルカプルルなんかよりも遥かに恐ろしい脅威になる予感がする。
今ならアイツも疲弊してるし体力も残りわずか。俺の《気配遮断》もこの2日間でLv5まで上がっているしかなり近くまで近付けるはず、今のうちに殺しておくべきか。
ハヌマンの周りにはまだ200匹以上の猿達が頭を垂れて平伏している。
無事にハヌマンを殺せてもこの200匹以上の猿を相手にできるか、しかしコイツらも疲弊してるはず、イケるか?
静かに身体中に取り付けた偽装を外し《アイテムボックスEX》からナイフを取りだす。ハヌマンがひれ伏している猿達にナニヤラ語り掛けているうちに距離を詰める。
その距離50mほど、今の俺なら3秒も掛からないだろうし、全員がひれ伏している今なら殺れる。先程からポンコツ化したローニャンが暗殺を阻止するように喚いているが全部無視だ。
「!?」
行こうとしたその時にハヌマンがこちらを見て目が合う。何故ばれた?
『キャァー!目が合いました!!私を見てますよ!!手を振ってくださいご主人様!!』
《空間把握》か?確かに一番Lvが高かったけれども、50mも離れているのに何かを感じ取れるというのか。
不意討ちは無理になったが、それでも相手は連戦続きで疲弊している。
「.........」
「.........」
両者の緊迫した見つめ合いが続く。
それは数秒だろうか、はたまた5分くらいはあったであろうか。
「.........」
「.........」
『L・O・V・E・HA・NU・MA・N!!』
緊張の汗が頬を伝う.........
ハヌマンが仲間の猿に声を掛けられ、それにともないハヌマン含めた猿達が戦場から立ち去っていく事で戦闘は回避された。
あれと戦わなくて良かったのかこの場で殺しといた方が良かったのか分からないが、どうせこのダンジョンを出てしまえば合うことは無いのだと考えることにして、この胸の奥で燻る一抹の不安に無理やり蓋をした。
2日間にわたる猿の合戦は新たな指導者が誕生し、種族を超えて纏めあげる形で決着を迎えたのだが、その戦場の後は数百匹の猿の死骸が放置されていて、昨日の内に死んだ猿達はもう腐敗が始まっているのもあり、立ち込める死臭が鼻腔の奥を刺激する。
辺りに猿達が完全にいなくなったのを確認して、腐敗の始まった猿の死骸に近付く。
「ダンジョン内では土に還るのも早いんだな。」
『はい、ダンジョン内では三日も待たずして土に還ります。』
ローニャンが元に戻ってる。只、俺の中でローニャンの評価が出来るインテリキャリアウーマンから、家族のご飯を作らずに韓流アイドルの追っかけをしている中年主婦女性位まで駄々下がりだ。
数百匹に及ぶ新鮮な死骸から腐敗している死骸全てを《アイテムボックスEX》に収納して戦場を後にして洞窟を目指した。
その後はひたすら《身体強化》を掛けて走ってることで、日没までには何とか無事に100キロ近くあった目的地の洞窟まで辿り着いた。そこは10m程の小さい滝の裏側にあり、一つの部屋だけだったが、大きさも思っていたよりも広く、藁などが敷かれていてこのダンジョンに入ってから一番快適そうな寝床だった。まぁ巨人のクンナバカルナの寝床なんだから大きいのは当たり前なのだが、それよりも40畳程の大きさの部屋の隅に置かれていた物に目がいった。
「あれは......もしかして......」
『エロ本の隠し箱ですね』
んなわけあるか!!中学生じゃないんだから!何処からどう見ても宝箱だろう!宝箱だよね!巨人のエロ本なんかいらねぇからな!!
と祈りながら宝箱にしては少々大きいような気もする畳一畳程ありそうな箱に手を掛けた。
「これは!?」
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