第21話 猿の陣
ラナ・ダーファングの棲み家がある山の麓は九州とほぼ同じくらいある大きな樹海が広がっていて、そこには多くの生命が互いの種の繁栄と存続を掛けて、日々命を散らすやり取りをしている。ある者は単体で、ある者はファミリーで、ある者は一種族で纏まり闘いを繰り広げている。
そんな群雄割拠の様相である樹海の一角である此処猿の森も例外ではなく、ゴリラ、チンパンジー、サルの三つ巴の争いが繰り広げられてきた。
少数精鋭のゴリラ、技巧派のチンパンジー、質より量のサル、孤高の変態オナ○ストの柳 聡介。力が拮抗していたからこそ、互いに牽制しあい多少の小競り合いは有れど、薄氷の上で一輪車を乗るかのようなバランスをとっていた。
そこに先日のクンナバカルナとの闘いとベヘモスの出現により、大きく勢力を失う事になったチンパンジー達に、ゴリラがここぞとばかりに少数精鋭を率いて大勝負に出たのであった。
そして時は同じして変態オ〇ニーマシーンこと柳聡介は必殺のマス〇ーベーションに磨きをかけるのであった。
「わーい解説ありがとうローニャン。何故か俺も不名誉な二つ名で参戦してるんだけど。」
『何か間違いがありましたか?』
「いっいえ、特に御座いませんです、ハイ。」
何か言い訳すると余計に傷口を抉られそうなので黙って頷いておく事にし、ローニャンが感知スキルで察知した場所から、ゆっくりと進みヴァイオレンスコングの縄張りとアースドエイプの縄張りの境目の草の茂みに身を潜める。
確かにローニャンの言った通り、ヴァイオレンスコングが100匹程アースドエイプの森に向かってドラミングで威嚇している。頭胴長3mを超えているであろうムキムキの巨大ゴリラが100匹集まってドラミングしてるんだからマジうるさい。
対するアースドエイプは200匹位で歯を剥き出しにして吠えている。こちらも頭胴長2mもある巨大チンパンジーが200匹も吠えているのでマジうるさい、ってかまだこんなに残ってたのか。両者とも一触即発の雰囲気は身を潜めている俺にもひしひしと伝わってきていた。
「あのさ、ここで1日間位身を潜めてたら、隠密とか気配遮断とか存在感を消すようなスキル習得出来たりしないのかな?」
『?ご主人様はもう既にスキル《存在感空気》をカンストされてるのでは?』
「してねぇよ、酷いなローニャンは。俺の精神力はもう残り僅かだよ。」
『そうですか、残り僅かですか、頑張ります。』
「そこは頑張らなくていいから。」
『先程の話ですが、スキル取得方法には大きく分けて三つございます。一つ目は研鑽を重ねて得るスキル、二つ目はネームドモンスターを討伐する等の偉業を達成して賦与されるスキル、最後にダンジョンではスクロールというスキルや魔法を習得できる巻物を、モンスターが集めてたり宝箱から稀に発見できる場合が御座います。
ご主人様の今の状況ですと、一つ目のスキル取得方法が該当されますので、ここでずっと身を潜めて気配を消す訓練を続けていれば《気配遮断》が習得できると思われます。只、どれくらい掛かるかは人によって違いますし、得られる熟練度によっても違いますので一概には言えません。ですがご主人様は《成長EX》を保持しておられるので、常人よりスキル取得もレベルアップも早いと思われます。』
「やっぱり身体能力だけじゃなくスキルや魔法にも《成長EX》が影響してたんだな。道理でスキルLvが上がるのが早いような気がしてたんだよな。もしかして天才かと思ってたんだけど違ったんだな。」
『.........天才?天災?......てん菜!!確かにてん菜に近い存在と言えましょう。』
「天才に近いか...」
『はい、限りなくてん菜かと、顔とか特に。ご主人様、ご主人様のてん菜顔の話なぞ、ゴミくず並にどうでもいいのですが、戦況が動きそうです。』
「なっ!そっそうだな、今はそんな話をしてる場合じゃないな。気配を消す熟練度ってことはより敵のそばで気付かれないのが良いってことだよな。」
『はい、その通りで御座います。』
俺はどっちの猿も特に思い入れが有るわけではないので、どっちが勝とうが滅びようが知ったことではない。あわよくば相討ちで手薄になった縄張りを静かに抜けたいのだが、これから先に進むにつれて気配を消すスキルは必須だろうし、これだけ多くのモンスターの中で俺に気を止めている暇が無い状況もそうないだろう。ここで何とか《隠密》と《気配遮断》を修得したい。
「ローニャンは俺への敵意の有無も察知できるって言ってたよな。ここで気配を消すスキルを修得したいから出来るだけ近くで身を潜ませたいんだ。今から草木でカモフラージュしてほふく前進で近付くから、気付かれた素振りがあれば教えてくれ。」
『畏まりましたご主人様。お気をつけ下さいませ。』
急いでその辺の木々の枝や草を身体中にこれでもかと言うほど取り付け、顔に泥を塗り猿共の気付かれないように、ゆっくりゆっくりと地を這うように進んでいく。
『ご主人様、アースドエイプとヴァイオレンスコングの戦いが始まりました。』
「了解、ちょっとこれは近すぎたかな、迂闊に顔を上げれないぞ。ローニャンは俺が顔を上げてなくても戦況が分かるのか?」
『はいご主人様、何ら問題ありません。』
「ちょっと中々顔を上げにくいから、戦況を報告してくれ。」
『.........』
「.........?」
『.........』
「ローニャンさん?」
『時は令和〇年、地上では初桜が咲き始める早春の候、此処四川ダンジョンの猿の森の西の小高い丘では男達が愛する家族を守る為、一族の繁栄の為、己の強さを誇示するために、互いの存続を掛けた戦いの火蓋が切って落とされるのであった。ペンペン』
.........ローニャンが壊れた。
『西に見えるは身の丈は百寸を超えるであろう巨漢の持ち主、その巨体から繰り出される豪腕の破壊力は地を割り川を割り天を割ると言うその名もヴァイオレンスコング。東に見えるは一掛け二掛け三掛けて仕掛けて殺して日が暮れて、遥か向こうを眺めればこの世は辛いことばかり、昨日の巨人に挑み散った友のため、死ぬと分かっていても男には退けぬ時もある、晴らせぬ恨みを晴らしますアースドエイプ!!ペンペン』
東に必殺仕事人がいる!?
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