第17話 漬け物にどうぞ
なんとクンナバカルナと猿が死闘を繰り広げていた小高い禿げ山は、でかい亀の甲羅の上という神話に出てきそうな話のオチが目の前で起こった。
クンナバカルナは食べられたの......か?
俺は切り立った山の下山途中で、岩場に腰を下ろし三角座りで空を眺めている。
「クンナバカルナ食べられちゃったよ。」
『そうですね。』
「猿もでかいし速いし狂暴そうだし強そうだったけど、クンナバカルナがそれでも必死で戦って勝利して............でも、それもアッサリとでかい亀に食べられたよ。」
『そうですね。』
ベヘモスはその後クンナバカルナを数回咀嚼した後呑み込み、辺りをキョロキョロした後に何事も無かったかのように首を縮めていき見えなくなってしまった。見えないと言っても頭が見えないだけで、あの小高い禿げ山が亀の甲羅らしいので丸見えなのだが...
「なんか生き残る自信無くなってきたな。」
『大丈夫ですよご主人様。ご主人様には頼りなる存在がいるではありませんか。』
「んー?ニシンの事?」
『違いますよ!!スーパーサポートナビゲーターこと
「.........」
『疑ってますね!この超高性能感知スキルでご主人様の危険をいち早く察知し、超高性能情報集束スキルでご主人様の疑問を解決し、超高性能演算スキルでご主人様の行く道を照らし、超高性能美声ボイスでご主人様の耳元で夜な夜な官能小説を読み上げて自慰をお助けする事ができます。ふんっ』
「自慰の助け要らない。マジ止めろ。」
『本当に要らないんですか?ご主人様の好きな露出ロリ裸エプロン緊縛物を臨場感たっぷりに耳元で読み上げるんですよ。本当に要らないんですか?』
「俺にそんな変態の詰め合わせみたいな性癖は無い!名誉毀損で訴えるぞ。」
『ふふっ』
「.........ふぅ~ローニャンのお陰で少し元気出たし、ぼちぼち行きますか。」
あまり変態トークしてると違う所も元気になりそうだしな。それに後戻りの道は無い、行くか死ぬかの2択しか無いのだ。
ベヘモスは.........近づかなきゃ良いだろ。ベヘモスを避けるように迂回しながら下山していく。
「ローニャンはB3階層への階段の場所は知っているのか?」
『大丈夫ですご主人様。私にはこの四川ダンジョンの地図は完璧に網羅しております。3階層への道はここから一番遠い突き当たりにあります!』
「何となくそうだろうなとは思ってたけど.........はぁ~仕方ないな、いっちょ北海道2個半軽く攻略してやりますか。」
『ご主人様ご主人様、2個半×3です。合計で7個半です。』
「7個半......分かってるよ!やりますよ!やれば良いんだろ!!」
『ご主人様!モンスターです!こちらに気付いています。距離200。』
「何?何処?」
切り立った山を下山途中なので回りは植物なんかも生えていないし、モンスターが隠れるような障害物もないのに、モンスターらしき姿はどこにも見当たらなかった。
「まさか、クンナバカルナみたいに実は今歩いている所は誰かのケツの上だったとかじゃないよな......」
『いえ今歩いておられる所は普通の地面ですが、モンスターはその地面から来ます。』
「え?地面から?」
『はい、恐らくサンドワームかと。』
「ワームってミミズだっけ?え?俺ミミズに狙われてるの?」
『はい、お昼のランチのご飯に添えるお漬物にと考えられていることでしょう。』
「俺はその程度なの!?せめて主食にしてってそれほどミミズの大きさがデカいってことか。」
『はい、標準サイズのサンドワームは全長30m程です。』
「もういちいちデカいな!!もっとこう可愛いスライムとかゴブリンとか居ないのかよ?」
『スライムもゴブリンもこのフィールドに居ますよ、可愛いかどうかは何とも言えませんが...』
「言うんじゃなかった。どうせデカいんだろ!」
『ご主人様よりかは大きいですね。只今ご主人様の丁度真下に距離100。』
「地面からだろ、こっちからどうしようもないじゃん。逃げれそうか?」
『サンドワームは恐らく振動か魔力の感知でご主人様を捕捉していると思われますので、走って逃げるのは不可能かと。距離50』
「くそっ戦うしかないのか。」
『ご主人様、距離30です。』
「ローニャン、10を切ったらカウントダウンしてくれ。」
『はい』
逃げるのを諦めて《魔弾》を限界の5個出現させ俺の真上の頭上に大きな円の線上に浮遊させ、自身には《身体強化》を掛けてじっと待機する。
次第に地震のような揺れが起こり、サンドワームが近づくにつれて大きくなっていく。
『10、9、87654、3、2、1、来ます!』
地面が盛り上がると同時に大きく前方へジャンプする。《身体強化》によって強化されたジャンプ力は一足飛びでも10m位は飛べる。タイミングさえ解れば避けるのはそう難しくはないと思うが。
予想通り俺の後ろでサンドワームが轟音を立てながら地面から物凄い勢いで空に向かって伸びていく。着地後素早く振り返り見上げると、地面から出ている部分だけで20mほど直径3mほどのサンドワームが、獲物を補食出来なかったことに気付いたのか、禍々しい口だけの頭を左右に振って獲物を捕らえんとしている。
足下にいる俺のことも魔力で作られている《魔弾》にも反応していない。アイツはどうやら視力も殆ど無く魔力感知も持っていないのだろう。とすると地面から伝わる振動だけで獲物を捕捉しているのか。
サンドワームは俺の真下から垂直に向かって伸びているので、俺の頭上で円の軌道上に展開している《魔弾》をサンドワームに撃ち込む。
貫通するもやはり本体がデカ過ぎるのか、あまり気にした素振りはない。サンドワームからすれば爪楊枝でつつかれたようなもんか。貫通した穴から体液が飛び出すも直ぐに体液の流出が止まり、穴が少しずつ塞がっていくのが見えた。
「《回復》持ちか!」
『いえ、あの回復スピードは《再生》でしょう。』
そう言えば地球産の可愛いミミズも体を半分に切っても頭の方は尻尾を再生する種もいれば、頭の方も尻尾の方でも再生し1匹が2匹に増える種もいると聞いたことがある。
こいつも少々の穴は勿論、ちょん切った位でも死なない可能性もあるってことか、ちょん切って其々で再生して数が増えるのだけは勘弁してほしいけど。
「どうやって倒すんだよコレ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます