第14話 うつ伏せにて

  目を開けると硬く冷たい岩を加工された床があった。そう言えばアルカプルルを倒して、あまりの大ケガで手も足も動かせず、腰も背中も痛いので身動き一つ出来ずに、只肉を食ってそのままうつ伏せで寝たんだっけか。何とか無事に目覚める事が出来たな。

 腕は...まだ痛いけど指先だけなら動くな。足も...うん、痛いけど指先だけなら動く。けど、立とうとするも腰と背中が激痛が走り、うつ伏せから身動きが取れない。衣類もボロボロ、上着は見事に破れ散りジーパンもホットパンツみたいになってしまった。


 『お早うございます。ご主人様。』


 「お早うローニャン、俺はどれくらい寝てたんだ。」


 『アルカプルル討伐後から三日経っております。』


 「なっ三日!?」


 そんなに寝てたのか、道理でお腹が減ってるわけだ。しかし、これでは暫く動けないぞ、クソッちょっと魚が食べたいと思って藪をつついてみたら、とんでもない蛇が出てきたな。まさか魚が陸であれだけ強いとは思わないだろ。

 いや、俺が少し強くなったからって調子のってたのが原因か。ローニャンの忠告少しでも耳を貸しておけば、こんな無様な姿にはなってなかったはずだ。

 これから先はもう少し慎重に行かないとな。このダンジョン脱出まで1ヶ月位かなと考えてたけど、ダンジョンに迷いこんで五日目なのにまだ此処と一階下の一部屋しか進んでないからな、もう少し掛かると思って焦らず慎重に行こう。


 『ご主人様、先ずはご無事でお目覚められて何よりです。ですが、これから先はもう少し勝てる算段を踏んでから挑んでいかないと、遠からず死んでしまうと、愛玩ペットの身ながら忠告させていただきます。』


 「あぁそれについては本当に耳が痛いよ、でも反省はしてるよ。これからは相手を徹底的に調べて、可能な限り安全策を取っていく。少しくらい強くなっても慢心はしない。」


 『そこまで分かってらっしゃるのであれば、私からはもうなにも言いません。では気持ちを切り替えて食事にしましょう。聡四郎、聡五郎、聡六郎を出してください。』


 「何で起きて一発目にそんなゲテモノ兄弟食わなきゃならんのよ。」


 『ふぅ反省したと思ったらまたそんな我儘を。』


 「これは断じて我儘ではない、俺は今は口が魚になってるんだよ。折角死にかけてまでして狩った魚なのに今食わずしていつ食うんだ?」


 『しかし、手と足が辛うじて動くだけのその体では2mを越えるアルカプルルは捌けないと思われますが。』


 「ぐぬぬ...」


 仕方がないので目に前にファイティングウルフの生肉を出し、手も使えずと言うか寝返りすら出来ない状況なので、口だけでムシャムシャと生肉を貪る。何だかカフカの芋虫に変身したらこんな気分なのだろうかと思った。

 食事を終えるとステータスを確認する。


柳 聡介やなぎ そうすけ 23才 男

⚫種族 人間

⚫レベル 42

⚫体力 3800/3800

⚫魔力 2400/2400

⚫力  1200

⚫防御 1000

⚫技量 2200

⚫俊敏 1700

⚫スキル 狼娘娘ロウニャンニャン 成長EX アイテムボックスEX 鑑定EX 回復EX 悪食 無属性魔法 水属性魔法(new) 魔力操作Lv3→4 痛覚耐性Lv1→2 体術Lv4→5 短剣術Lv2 剣術Lv2 槍術Lv2

⚫魔法

 ・無属性魔法【魔弾Lv1 身体強化Lv1→2 金剛Lv1(new)】

 ・水属性魔法

⚫状態 複数骨折


 各種ステータスはレベルアップにより軒並み上がっていたが、特に体力と魔力の上がり幅が他の上がり方よりも高かった。限界ギリギリで死にかけたのと、ずっと無属性魔法を使っていただからだろうか。後はネームドモンスター討伐報酬として水属性魔法を新たに覚え、魔力操作が元からあったのに追加されたのかLvが上がっていた。この水属性と魔力操作はアルカプルルが持っていて、それを倒したからそれが賦与されたんだろうか?

 その他もちょこちょこ上がっているな。


 一通りステータスの確認を終えてすることが無くなってしまった。寝返りすらも出来ない体で出来る事なぞ殆ど無いのだが、もし今ファイティングウルフでもその階段から上がって来られたら間違いなく死ぬな。


 「なぁローニャン、ここってモンスターが来にくい場所だったりするのか?」


 『はい、ご主人様がラナ・ダーファング戦っていた場所がラナ・ダーファング達の巣になっていましたので、他のモンスターはラナ・ダーファングを恐れて近寄っては来ないでしょう。ただ狼男達があれで全員とは限りませんので、それらは戻ってきてこちらまで上がってくる事は考えられます。只、下の階はまだニシンの臭いが充満しておりますので、暫くは狼男達も近寄らないでしょう。』


 「そうか狼男の鼻に乗せてたニシン置いてきて正解だったな。」


 『はい、流石はご主人様です。』


 取り敢えず一安心し、うつ伏せの状態で出来ることを考える。まぁ魔法の訓練しかないのだが、やはりここは魔力操作が上がって《魔弾》がどの程度自由に動かせるか試したい。アルカプルルはウォーターボールを何十個も自由に操っていたしな。あそこまでいかずともあれに近いことができれば...


 そう思いうつ伏せの状態で丹田から魔力を抽出し、お尻あたりから体外へ押し出す。そしてそのまま空中で保持する。どうだ、上手くやれたのか?うつ伏せだから全く見えない。


 『ご主人様!ご主人様のおならが集まって宙に浮いています!危険です!この世のすべての生物を死滅させる気ですか!?』


 確かに尻から出たけどそれ魔弾ね。それに俺のおならは何だと思ってるんだよ。でもどうやら成功したみたいだな。

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