第12話 魔力操作Lv6

 『来ますっ距離20』


 「了解。」


 ローニャンがどんどん縮まる距離を読み上げていく中、俺は聡三郎に向かってクラウチングスタートの姿勢を取り《身体強化》を発動させる。


 『10』


 『5、3、2、1、跳ねました!』


 よし!跳ねたと同時にスタートを切り、それと同時に地底湖に向かって水全体をアイテムボックスに収納する。この辺は賭けだけど、狼男達と戦った下の部屋ほどの大きさの収納スペースがあるなら、50mプール程の水ならギリギリ収納できると考えたのだ。

 案の定、地底湖の底の方まで水が収納され、オアンネスは湖底に打ち上げられてピチピチ跳ねている。ここからはスピード勝負、この地底湖は底で何処かと繋がっているので数十秒又は数秒でオアンネスの打ち上げられている所まで再び水が満たされてしまえば、逃げるか応戦してくるのは必死だろう。

 身体強化を使っているので、足場の悪いゴツゴツした湖底でも数秒で到達できる。そこで速やかに止めを指しアイテムボックスに回収して戻る。

 これが俺の作戦だったのだが、俺の接近に気付いたオアンネスが同時に幾つもの水球を飛ばしてくる。威力は凄そうだが、やはり速度が100km/h程なので同時に数個位ならば、身体強化している今では避けれない事はない。

 しかし予想以上にオアンネスの元に辿り着くまで少し時間が掛かってしまったか、オアンネスの体の半分ほどまで水かさが戻ってきている。やむ終えずオアンネスの尾ビレを掴み陸の方へ放り投げた。流石に2m以上もあり体重も300kg以上ありそうな魚を片手で放り投げたのだ。身体強化をしていても腕が悲鳴を上げているのが分かる。

 急いで陸へと戻り、オアンネスと対峙する。改めて見るとほんとにオッサンの顔を持つ大変気持ち悪い人面魚だった。恨めしそうに横たわりながらこちらを睨んでいる。


 「オブラァァァア!!」


 昔ヤンキーで今はメタボな中年の中間管理職のオッサンで、ブラック会社で成績の奮わない部下に頭ごなしで威嚇するようなドスの効いた低く汚い声を放ってきた。相当お怒りのようだ。

 その様子を見ながら、鑑定を掛ける。


⚫アルカプルル 23才 雄

⚫種族 オアンネス

⚫Lv 58

⚫体力 4250/5680

⚫魔力 5460/6820

⚫力  650

⚫防御 480

⚫技量 7680

⚫俊敏 5580(水中)

⚫スキル 水属性魔法 水中移動Lv7 魔力操作Lv6

⚫魔法 水属性魔法【ウォーターボールLv5、ウォーターカッターLv3、ウォーターシールドLv3 水流操作Lv4】

⚫状態 酸欠(軽)


 「!?」


 俺と同じ年齢!って驚くところはそこじゃないか、こいつもネームドモンスターだったのか、力と防御以外はメチャクチャなステータスだ。それにオッサンみたいな面で可愛い名前しやがって。


 そしてそのアルカプルルの回りには無数の水球が浮いている。その水球が一斉に襲い掛かってくるも、先程の水球よりも速度が遅い。少し変に思いながら避けるも、避けたはずの水球がこちらに曲がってきて直撃する。


 「フグァッ!?」


 そんな事も出来るとは流石は魔力操作Lv6の水の賢人と言ったところか、魔法の可能性を十分に示してくれる。だが今ので前回の戦いで負傷した肋骨がまた折れたっぽいな。

 まだ水球は10個以上あり、それら全て直撃すれば十分死ねる。だが相手も相当焦っているはず、なんせもう既に軽い酸欠なんだからな。


 集中しろ、相手は水中では無敵だろうがここは陸上だ。時間を稼げば勝てるはず。丹田から魔力を抽出し、皮膚を覆うようにコーティングし固く凝固させるイメージで魔法を発動させる。


 『ピコーン!スキル《金剛Lv1》を習得しました。』


 よし、《身体強化》と並列使用だが何とか上手くいったみたいだ。まだLv1だけど無いよりましだろう。


 「バベラァァァァァァァ!!!!」


 縦横無尽に飛んでくる10数個の水球誘導弾とも言うべきか、それに《金剛》と《身体強化》させた蹴りを食らわすも、Lvが低いせいなのだろうか相殺しきれずに、こちらの方が吹き飛ばされてしまった。兎に角足で受けるのはダメだ。足が動かなくなったらそれこそ袋叩きにされてジ・エンドだ。

 避けれない、攻撃できないのならと腕をクロスにして覚悟を決める。


 「ローニャン応答しろ!」


 『ご主人様!だから言ったのです!!相手はかなりのモンスターだと!しかもまたネームドモンスターですよ!今度はニシンでは倒せないですよ!!どうするんですか!!』


 「うるさい!!小言は幾らでも生き残ったら聞いてやる!!」


 『ひゃっひゃい!!』


 「今から来る攻撃の方角を全て教えろ!」


 『分かりました、でも避けても追ってきますよ!どうするんですか!ご主人様!!』


 「うるさい!!言われたことをやれ!」


 『ひゃっひゃい!!』


 『ご主人様、あれを全部受ける気ですか?気狂いですか!ほんとにやるんですかご主人様!!』


 「黙って俺の言う通りにしろ!!」


 『ひゃっひゃい!!』


 ......こいつ絶対わざとやってるよな。ドMの属性も兼ね備えていたとは。

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