第10話 さよなら聡二郎

 『はぁ?何言ってるんですかご主人様。私は4階層とは言いましたが、誰も狭いとは.........ご主人様、モンスターが近づいて来ますので警戒してくさい。』


 「えっ何処?ってか何でわかるんだ?」


 『私には高性能な魔力感知スキルが備わっております。半径約300mの探知範囲があり、その中でご主人様に敵意の有無等も判別できます。』


 「マジか、それは凄いな。で何匹だ?」


 『1匹です。』


 急いでナイフを手に構えて戦闘体勢にはいる。50m程先の出入口にはいまだモンスターの気配は無い。


 「......なぁ俺が戦ったファイティングウルフはモンスターの中ではどれくらい強いんだ?」


 『ファイティングウルフは中級モンスターに位置付けられています。もう少し細かく分類するとファイティングウルフは中の下程で、ラナ・ダーファングは中の上程かと思われます。

 因みにファイティングウルフは群れでは厄介ですが、単体で考えるとこのダンジョンでは最弱モンスターの一種です。』


 「なっ!?あれで最弱か!!マジかよ!」


 『ご主人様、敵はそちらからではございません、後ろです。』


 「え!?後ろって......地底湖しか無いけど...」


 『来ますっ』


 50mプール程の大きな地底湖だが、底で何処かと繋がっていて水棲モンスターがそこからやって来たというわけか。


 波一つ無い地底湖にプカプカ漂う聡二郎こと狼男のチ○コ。嵐の前のような静寂の中、緊張が頬に汗を伝わす。


 暫くすると湖面に気泡が現れる。それと同時に猛烈なスピードで上がってくる魚影も確認できた。



 「デカイ!!」



 と思った瞬間、2m位ある魚の様なオッサン又はオッサンの様な魚が跳び跳ね、聡二郎をくわえてそのまま地底湖に戻り大量の水飛沫がこちらに襲ってくる。

 そして何事もなかったかのように再び湖面に静寂が戻る。



 「............え?.........終わり?何か顔がオッサンみたいな人面魚だったけど...」


 『はい!アレが魚人オアンネスです。』


 「おい!アレの何処が俺と似てるんだよ!!」


 『滅多に姿を見せないんで、出会いはもう少し後かなと思いましたが、意外と早く出会えましたね。聡二郎は残念でしたがまだ6本も有りますし。』


 「いや、別に会えても全然嬉しくないんだけど...って言うか食べないからな。」

 

 ん?でもアレが聡二郎を食べるなら、あと6本有るってことは1匹位は釣れるかもしれないな。生肉ばかりは流石に気が滅入るしな。刺身が食べたいな。どうせ狼男のチ○コなんかアイテムボックスに入れてても仕方がないしな。


 「よし!アレを食べるぞ。」


 『ついに決心されましたかご主人様、新しいスキルは手に入らなくても新しい世界は開けると思います。6本残ってますが全部一気にいきますか?それとも朝昼晩と分けて食べますか?』


 「いや、そっちじゃなくて魚の方だよ!魚人オアンネスを狩るぞ。」

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