第2話 狼男との死闘

  「犬?何でこんな所に?しかも立ってるし、...でかいな...」


 大型のシベリアンハスキーを立たせたような大きさで、身長180m位全身グレーの毛で覆われており、四肢も長く犬が立ったと言うよりも狼男といった方がいいかもしれない。


 「でもまぁ犬なら俺のスキル『ザ・ムツゴロウ』があるから大丈夫だろ、ヨ~シヨシヨシ~ここがいいんですね~ヨーシヨシヨシ~この表情は敵を威嚇してるんですね~ヨーシヨシヨシ~この目はエサを狩るときの目ですねヨーシヨシヨシ~どわっ!」


 なんだこいつはいきなり噛みつこうとしやがった。野犬には万物共通のムツゴロウは効かないと言うのか?そんな馬鹿な。そう言えばムツゴロウさんも何回か猛獣に噛まれてたな。

 噛みつき攻撃を間一髪で回避し再び狼男と距離をとる。素早くリュックに挟んでいた鉈を取り出して、リュックを投げ捨てる。


 狼男が唸りながら徐々に円を描きながら間合いを詰めてくる。その距離およそ5m。


さっきの攻撃で感じたが、この狼男はかなり速い。それに加えて俺よりも大きい背丈とその体つきから予想するに、俺よりもパワーもリーチも有ると考えた方がいいだろう。しかも狼が立ってると言うよりも人間の体に狼の頭が付いてるという方が近い骨格、噛みつきだけではなく手足を使った攻撃もあると思っていた方がいいだろう。


 来る!


 「速いっ!?ぐっ!!」


 狼男の攻撃は単調な爪攻撃の袈裟懸け降り下ろし。しかし予想以上に速い、左腕で受けるも爪で左腕の肉を裂かれてしまった。鉈を降り下ろすも元々切れ味が悪いのもあるが、予想外に硬い毛と表皮と盛り上がった筋肉のため、左肩に少し傷付けただけに終わった。すかさず前蹴りで一旦距離を取りるも、間髪いれずに一足でゼロ距離まで近づいてきて首筋に噛みつきを繰り出してくる。ギリギリのところで右に飛び退いてかわす。

 あの噛みつきはヤバい。首筋に噛みつかれようものなら一瞬で勝負がついてしまうだろう。再び5m程の距離を取り、限界まで低く後方に重心を置き構える。

 背中に嫌な汗が尋常じゃないくらい涌き出る。


 「ふぅ~落ち着け、予想以上に速いし硬いな。」


 「グルルゥゥゥゥ」


 再び狼男が一足で距離を縮めて左爪による逆袈裟ぎり、それをバックスステップでかわすとすかさず右爪での右薙ぎ、避けれないと諦めて先程と同じ左肩に鉈を降り下ろすも、左の腹部にもろに右爪攻撃を受けて20m程吹き飛ばされる。


 「カハッ!ヤバい肋骨が何本かイカれた。クソッ!」


 「グルルゥゥゥゥ」


 狼男も左腕を挙げようとして痛みで唸っているので、鎖骨くらいは折れてくれたか。だがこちらは左前腕の重度の裂傷、左腹部の重度の裂傷及び左肋骨の複数骨折。段々敗色濃厚になってきたか。だがまぁまだ諦めるにはちょっと早いかな。

 再び5m程の距離まで狼男が縮めてくる、これがアイツの間合いなのだろう。むちゃくちゃ広いけど。俺はムツゴロウさんには成れなかったので、犬の気持ちなんか解らないが目の前の狼男の気持ちはビシビシと伝わってくる。メチャクチャ怒ってる。自分よりも力もスピードも劣ってる生物が中々仕留められなくてイライラしてんだろう。


 「だがな、俺はお前より怒ってるんだからな!遺跡探索のスタート地点でいきなりファンタジーみたいな生物と死闘してんだからな。」


 狼男が相変わらず一瞬で距離を詰めての右爪の袈裟切り。


 「悪いがその一手だけは読めてんだよ。」


 その袈裟切りを掻い潜り、痛む左手で毛むくじゃらの右手をつかみ腰を浮かせて片手一本背負いで狼男を倒し、そのまま狼男の手を捻り仰向けにさせ、肘関節を最大限に伸展状態にし、その肘関節に全力を持って鉈を降り下ろす。


 「グギャァァァァァ~~~!!!!!!」


 鉈の方が折れそうだったけど何とか肘を破壊できたな。

 すかさず痛みで呻いてる狼男の足に跨いで座り足首を屈曲させた状態で固定し、下腿の筋肉をを伸長状態にしてアキレス腱を張らして、そこにも鉈を降り下ろしてアキレス腱を断裂させる。


 「グギャァァァァァ~~~!!!!☆♦◯■★♯▽!!!!」


 狼男が泡を吹いて気絶してしまった。生き物をなぶる趣味はないので早く止めを指してやろう。時間にして10分くらいだが、ギリギリの戦いで一つ間違えれば俺が狼男の胃袋に収納される可能性も十分にあった。


 「世の中は広いな、こんな強い生物もいるとは。人型で俺の技が通じたから良かったけど、四足歩行で同じようなスペックの生物だったら負けてたな。また何処かで会ったら再戦しような。」


 首を持ち上げて鉈を降り下ろそうと振り上げた。


 「ワオオオオォォォォ~~~~ン」


 後ろから狼の鳴き声がし何事かと思い、狼男から飛び降りて後方を確認すると、先程とまで死闘を繰り広げていた生物と全く同じ風貌の狼男が立っていた。


 「マジか、再戦しようとは言ったけど早すぎでしょ。」


 しかも、1匹2匹とゾロゾロと通路から出てきた。合計8匹、最後に一際でかい狼男が出てきた。胸に毛むくじゃらのおっぱいがあったので狼男ではなく狼お母さんかな。


 「はっ初めまして、息子さんと仲良くじゃれて遊んでました。日も暮れだしたので帰ります。それではさようなら。」


 「ワオオオオォォォォォォォ~~~~!!」


 「ですよね~あははは~..................詰んだ。」

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