第4話 勉強も修業も楽しい
肝試しの後、テオは付き合いが悪くなった、と近所の子供たちは思っていた。
遊びに誘っても「やることがあるから」と断られたり、一緒に遊んでいても心ここにあらずであったりしたからだ。
トビとポールが「お化け屋敷で鹿の
そんな噂を聞いて気になったサラがテオの家にやってきた。
「テオ。あんた最近付き合い悪いけど、何やってんの?」
「え、特に何も。強いて言うなら、勉強かな」
「は? 勉強? え、なんで」
まぁ、驚くよね。今まで僕が勉強なんてしたことなかったし。
「うーん、面白いからかな。知らないことを知るのってすっごく楽しいよ」
本当の理由じゃないけど、ウソでもない。
「それだけ? 学校に入ろうとか、そういうのじゃないの?」
サラがわけわからないという感じの顔で聞いてくる。
「まさか。ウチの稼ぎじゃ学校なんて無理だよ」
「ふーん。あのテオが勉強、ねぇ」
まだ納得できないって顔をしてるけど、一応疑問が解消したのか。
「ま、分かったわ。ちょっと心配してたけど、大丈夫みたいだし。
これで帰るね。勉強、頑張んなさい」
「ありがとう。じゃあね、バイバイ」
手を振って見送る。
「さぁて、やるぞ~」
今日も修業開始だ!
弟子入りしたあの日から僕は毎日欠かさず修業をしている。
師匠から指示されたのは、①魔術の基本となる魔力感知と魔力操作の練習、②読み書き計算の勉強、の2つだ。
読み書き計算は明るいうちじゃないとできないので、お昼前にやることにしている。
文字が分かるようになってから、そこら辺の看板や立て札に書いてあることが読めるのがすごく楽しい。
とある店では書いてある品名と、店員の言ってる品名が違ってることにも気づいたし。文字が分かるってすごく大事だと思った。
計算も簡単な足し算なら今までもできてたけど、引き算とか掛け算は難しい。
割り算なんて「なんだそれ!」って思った。
でも仲間内で分け前を計算するのに便利で、知らないと分け前をちょろまかされることもあるらしいから、頑張って覚えようと思う。
で、お昼を食べてからは魔力関係の練習。
最初の頃は家に閉じこもって集中してやっていたけど、最近は外で遊びながらでもできるようになってきた。
時々集中しすぎて周りから変な目で見られることもあるけど。
魔力感知については、最初は猫型の使鬼(の向こうの師匠)に魔力操作をしてもらってその動きを感じ取ることから始め、今では起きてる間は常に自分の体内の魔力を感知し続ける練習をしている。
ようやく自分の周りにある魔力の感知も、2~3歩までの距離ならできるようになってきた。
魔力操作の方は難しい。
今は体内の魔力を操作する練習をしているけど、なかなか思い通りに動いてくれない。とは言え、最初の全くうんともすんとも言わなかった頃に比べれば、随分ましになったけどね。
そんなわけで、現在の最優先は魔力操作の練習だ。
ベッドの上に胡坐をかいて座り、目を閉じて集中する。体内の魔力を感じ取り、合わせた両掌の右から左へと魔力を動かす。
その様子を僕の膝の上にいる
『あー、ほら。また手元だけに意識が集中しておるぞ。もっと体全体、腹の底を意識して全体の流れを操作するのじゃ』
「はい、師匠」
いけない、いけない。つい1つのことに夢中になる癖があるなぁ。注意しないと。
師匠のアドバイスに従ってやり方を見直す。するとよりスムーズに魔力が動き出す。
『よし、その調子じゃ。今日はその流れを四半刻(30分)は維持するのじゃぞ』
うへー、こりゃきついぞ。
あちこちに意識を向けないと流れが乱れてしまう。む、難しい!
途中何度か流れを乱しながらも、何とか最後までやり切った。
「うぁー、しんどい」
へとへとになって、ベッドに倒れ込む。
猫型使鬼が僕の頭の方へ歩いてきて、前足でポンポンと頭をたたくふり(幽霊には触れない)をする。
『よう頑張った。あとは慣れじゃ。そのうち呼吸するのと同じように意識せんでもできるようになる』
「それってどれくらいかかるのかな?」
『人によりけりじゃな。才ある者なら1巡り(8日)もかからんが、凡人であっても1期節(5巡り)も毎日やっておれば慣れるもんじゃ』
「はぁ、僕なら1期節の方かな」
ちょっとだけ憂鬱な気分。ま、やるしかないけど。
『さて、それだけ動かせるようになったなら、次の段階に進んでも良さそうじゃな』
「次と言うと?」
『魔術を使ってみる練習じゃ』
「おおー!やった、ついに魔術だ!」
ガバっと起き上がり両腕を点につきあげて快哉を叫ぶ。
ついにあの憧れの、本当は10歳にならないと使っちゃダメと言われている、あの魔術を!僕が!
『おおぅ、そんなに喜ぶとは思わんかった』
猫姿の師匠が目を丸くして身を引いている。
「そりゃ喜びますよ。だってあと2年待たないと使えないはずだったんだから」
『ん~? 2年とな? なんじゃそれは』
猫師匠がきょとんとして首をかしげる。
「えっ? えっと、なんか10歳までは魔力を上手く使えなくて危険だから、って聞いたけど」
『なるほど、魔術の暴走のことか。そんなもん、指導者が悪いに決まっておる。儂なんぞ5歳から魔術を使えたぞ』
「ご、5歳!」
さすがは師匠。天才だ。
『当然儂が指導する限り、暴走なんぞさせんよ(キリッ)』
頼もしいです師匠!
でも猫の姿でドヤ顔はやめてください、笑ってしまいます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます