見返す

 隠れ家感を押し出す安居酒屋にありがちな薄暗い照明の中で、机の端に置いたスマホの画面がぼんやりと光る。表示された時刻は九時を回っていて、俺はドラマの録画予約を掛けてきたかどうかを一瞬不安に思う。


「チェーン店のラインナップって基本炭酸モノばっかじゃねえ? 酔いより先に腹が膨らむやつ」

「顔真っ赤でそういうこと言うのは説得力がない」

「血行がいいんだよ……あっ、めぐりがいいんだよ、頭が」

「小賢しい言い回しをするな。腹立つ」


 しまりの悪い蛇口のようにだらだらとうわごとを並べながら、安白あじろはまたグラスを空ける。そのままもそもそと唐揚げを齧り始めたのを眺めながら、俺は自分のために烏龍茶とフライドポテトをタッチパネルに入力する。


「食いたいもんある? もうだいぶ食ったけど」

「軟骨唐揚げとアジフライとファジーネーブル」

「揚げもんばっか……どっちかにしろ俺ポテト頼んだから。あとあんま飲むなよ」

「うるせえなあ好きに飲ませろよ」


 軟骨だけで勘弁してやると怪しい発音での物言いが返ってきて、俺は言われた通りの内容で注文を送信する。しばらく待てばすぐさま店員がグラスを運んできた。目の前に置かれた烏龍茶をちびちびと飲む俺を半眼で見ながら、一息で届いたばかりのグラスの半分ほどを干してから安白が口を開いた。


「そもそも何で六時からじゃねえと飲めねえの。岬なんかこないだ昼飲み報告してきたぞ午後三時に。いいよな東京の大学生はよ」

「家で飲めば朝からだって飲めるだろ」

「店で飲み食いしたいんだよ酒のバリエーションとかさ。家でカシオレとか飲めねえじゃん。俺ビール嫌いだし、日本酒飲めないし、缶買うと捨てるのめんどくせえし」

「わがままばっか言うな。王様か何かかお前」

「俺散々あいつのわがまま聞いてきたのに何で俺のわがままは誰も聞いてくんねえのよ」

「土曜日の夜潰してお前の愚痴に付き合ってる俺の前でそれを言えるん?」

「俺の付き合ってた女が悪いって言いたいのかお前」

「どうでもいいいちゃもんをつけるなよ。正解がないやつじゃんかそれ」


 大学近くのチェーン店、大外れもないがぱっとしない肴と酒。安さと立地に大部分の価値を依存している、そんなしみったれた飲み屋で野郎の泣き言を延々と聞いているのだから、傍から見れば俺自身が相当間抜けであることは否定できない事実だろう。

 安白が彼女に振られたと死にそうな声で電話を寄越したのが昨日の午後だった。あまりに声から生気と覇気が抜け落ちているものだから一人にしておくのが心配だと仏心を出したのがいけなかった。午後に入っていた授業が終わる時間を目途に中庭のベンチで待ち合わせた。どうせ遅刻するだろうと踏んでいたのに、意外にも約束の時間通りに淀んだ目とよれたジャケットという社会性に欠けた格好と哀愁とも殺気ともつかない暗澹とした雰囲気を纏って歩いてきた安白を見たときに、このままお茶を濁して帰った方がいいような気はしていたのだ。

 そうし損ねたのは入学時からの同学科の友人だからという義理人情と青臭い友情じみたものを合わせて七割。もう三割はこいつが失恋で弱っているところが見たかったという悪趣味な好奇心だ。俺にも弱みがあると自覚がある分、見捨てて逃げるのもさすがに心苦しいものがある。


 そうして友情と野次馬根性のもと、安易にアルコールと飯を突っ込んで全部吐かせてしまおうという横着をした結果、連れ込んだ居酒屋で飲み放題もつけず串盛り合わせと一皿目の軟骨唐揚げを頼み届けられたカルーアミルクを一息で飲み干してから据わった目で延々と元カノの話を始められたのだからバチの当たりが早いとしか言いようがない。酒という情緒への燃料とテンションだけは上がる脂と塩の濃い惣菜に安白の口は滑らかに回る一方で、俺は結論も落ちも生産性もない愚痴をかれこれ三時間は聞かされ続けているのだ。

 運ばれてきたポテトをつまみながら、一気に干すには辛い程度に冷えた烏龍茶を傾ける。安白はぐすぐすと鼻を鳴らしながら、二皿目の軟骨唐揚げをごりごりと音を立てて噛んでいる。


「泣くなよ。二十過ぎた野郎が泣きながら飯を食うなよ」

「軟骨唐揚げおいしいじゃんか……」

「お前余裕あるのかダメなのか分かんないんだけど」

「余裕がないってさあ、つまんない男っていうんだよあいつ俺頑張ったのに」

「余裕はともかくそんなにつまんなくはないんじゃないかお前。普通なのって長所だぞ」

「俺だって面白くなろうって思ってさ、流行りの曲は押さえたし、ドラマも見ようと頑張ったし、映画だってなんか観た後にカフェでいい感じになれそうなやつチョイスしたりしたんだよ」


 切実な泣き言を聞きながら、そこを頑張ろうとしてしまう時点で致命的にセンスがない気がするが流石に口には出せずに黙り込む。安白はそういう類の度胸がある人間ではないが、わざわざ殴り掛かられるような火種をぶつけてやることもないだろう。のたうつ様は見たいが、そのために俺自身が肉体的に痛い目に遭うのも馬鹿な話だ。


「あー、付き合ってどんくらいだっけ、彼女」


 あからさまにはならない程度に、致命傷から焦点をずらした話題を選ぶ。

 ごりごりと派手な音を立てて唐揚げを噛み砕いて、安白は少しだけ考えこんでから答えた。


「……今年の六月ぐらいからだから半年いかないな。すげえな馬鹿な小学生の習い事だってもう少し続くのにな!」

「慣れない自虐は止めなさいよ。いたたまれない」

「だって見栄張ったら振られたんだからもう下手に出るしかないだろうよ……」

「見栄張ったの? ワルかった自慢とか一番駄目なやつだぞ。嘘だと特に」

「ワルかった自慢はしてないけどさ──」


 ずるりと酔った目玉が鈍く逸らされる。どうしてこいつは誤魔化すのが大根というのもおこがましいほどに下手なのだろうと演技のまずさを問い詰めてやりたくなったが、泣かれても刺されても困るので黙っておいた。

 どんな馬鹿でもこの反応を見れば分かるだろう。こいつは何かろくでもないことを──十中八九普通の人間が聞いたら呆れ返って彼女の判断を支持するようなことをやらかしたのだ。


「何やったよ。吐け」

「いや大したことは……してない……」

「大したことじゃなかったら言えるだろ。今は反省会だ、ちゃんと言え」


 俺はお前が心配なんだよと先日見たコント番組の台詞を咄嗟に引用すれば、安白ははっと淀んだ目を見開いてからファジーネーブルを飲み干し、長い長い溜息をついてから意を決したようにぽつぽつと続けた。


「この間さ、妙に暑い夜あったろ。秋なのにさ普通に夜二十度ぐらいあった日」

「ああ、しまったタオルケット出して寝たわ」

「彼女泊まりに来ててさ、新作ホラーの心霊映像三十連発! みたいなやつを家飲みしながら見てたの。あわよくば狙って」

「おう」


 既に嫌な予感がし始めて、俺は湿気て柔らかくなったポテトをもそもそと詰め込む。安白は一丁前に目を伏せて、テーブルの隅に雑に畳まれたおしぼりのあたりを眺めている。


「彼女そこそこ怖がってくれてさ、ほら、いつも気が強めの子だったからギャップが可愛くてさ、盛り上がったんだよそこそこ」

「上手くいったんならよかったじゃん」

「上手くいってたんだよ。で、更に上乗せ狙ってさ、小腹空いたしコンビニ行って夜のお散歩とかしないって非日常にロマンティックなお誘いをしてみたんだよ。隠しプラン仕込んで」


 惜しげもなく放り込まれる不穏バカな単語に下種な好奇心を煽られつつ、反面友人に対しての不安がみるみる増していく。

 黙って視線だけで続きを促す。安白の暗い目が真っ直ぐにこちらを見て、こくりと凛々しげな表情で頷いてから意を決したように口を開いた。


「コンビニでお菓子と肉まん買ってから、心霊スポット連れてった」


 大失敗だったよと生意気に憂いを帯びたような風情で俯く様子に無性に腹が立って、俺は箸置きに畳んだ紙袋を投げつけた。


「危ねえな何すんだお前!」

「うるせえよ馬鹿!」


 思わず発した大声が店内に響いたようで、向こうのテーブルを片付けていた店員が剣呑な視線をこちらに向ける。慌てて頭を下げてから、俺は目の前の馬鹿の顔をまじまじと見る。


「何でそんなことした。コンビニまでは奇跡的に正解ルート乗ってるのにどうしていきなりコースアウト決め込んだ」

「だって俺んち近かったから……知ってるだろ幽霊屋敷、俺んちから例の住宅街まで徒歩十分だから最寄り物件だし」

「距離は問題じゃない。どうして心霊スポットに連れて行こうとしたんだって聞いてんだ」

「作りモンの映像であんだけ怖がってんの可愛かったし、じゃあ現場行ったら必然的に俺しか頼る人間いないから縋りついてくれたらすげえいいなって思った……」


 思いのほか同情の余地がない所業と動機に、かける言葉も返事もひねり出せずに俺は半分ほどに減っていた烏龍茶をゆっくりと飲み干した。


「で、連れてったのか」

「近道って途中まで騙そうとして門の前までは行けたんだけど、彼女も知ってたらしくて」

「そもそも彼女地元組だろ。よそ者の俺らが知ってるのに知らないわけないだろ」

「すげえ怒られた。警察呼ばれそうになったから冗談って押し切って、とりあえず俺んち戻ったけど、そのままタクシー呼んで帰られた」


 そのまま電話の着拒とブロック決められておしまいと消え入りそうな声で言って、安白は両手でびったりと顔を覆ってしまった。


 当然といえば当然だ。嫌がる相手を騙して連れて行ったというだけで、そのまま警察に駆け込まれても文句は言えない。安いホラー映画のクソ野郎のような真似をする人間がまさか実在するとは思っていなかったので、そんなものの存在を確認できたという謎の感動に近い感情が胸に湧き上がる。

 安白の言う心霊スポットについては、俺も噂だけ聞いたことがあった。俺や安白の通う大学近くの住宅街、執念深いガーデニングやハイグレードな国産車に無闇に大きい白犬を飼っているような典型的な金持ちの家の群れの中、一際目を引く屋敷がある。他の量産型で平均的な一軒家とは規模が明らかに違うその屋敷にはかつて何らかの忌まわしい過去や因縁があったらしく、住む人がいなくなった今も取り壊されることもなくそのままにされているのだと出所も事実もはっきりとしない噂話だけが囁かれ続けている。

 ありきたりなご当地心霊スポットだ。夏休みの特番で落ち目の芸人やアイドル崩れが来るほどの知名度もなく、精々がコンビニで売られている胡散臭い雑誌の──それこそ『激ヤバ心霊スポット百選』のような頭の悪い特集でおざなりに扱われるのが関の山だろう。地元の人間だけが知り恐れ、素知らぬ顔で目を逸らしながら日常を送る。箪笥の中の髑髏とも蔵の中の狂女でもいい、忌まわしくも恐ろしいものだからこそ、身内の恥おらが土地の自慢として存在を見逃され続ける類のものだ。

 忌避と好奇と微かな愛着。土地の人間が日常風景として扱い続けてきた異物へ抱くであろうものは郷土愛と縄張り意識と同族意識のどれが近いのだろうかとふと考えて、どうやっても結論が出そうになくて諦めた。

 つまり彼女にとっては安白の目論見はデリカシーのない騙し討ちと地元の名所をよそ者が馬鹿にしたというおよそ侮辱的な行為だったわけで、そんなことをすれば振られるのは当然だろう。ついでに自覚なくそういうことをやらかすこいつは結構な馬鹿なのだなということが一遍で腑に落ちて、俺は深々と嘆息した。


 顔を覆ったまま動かなくなった安白を放ってスマホの画面を見れば、十時を少し過ぎたところだった。オチまで聞いた以上、もうお開きにしてもいい頃合いだろうと、俺は反省会の主役たる安白にお伺いを立てる。


「十時過ぎたぞ。そろそろ出よう」

「やだ俺まだ飲み足りない……」

「じゃあこのあとお前んちで二次会やろう。コンビニ寄って酒買ってこう」


 それでいいよなと念を押せば安白はこくりと項垂れるように同意を示して、すっかり氷ばかりになったグラスを未練がましく呷ってみせた。


***


 誘蛾灯の真下。煙草の火だけはぽつりと赤く、秋の夜闇に流れる煙は白くたなびく。

 二次会の物資調達のために寄ったコンビニ前の喫煙所で飲み屋の店内で吸えなかった腹いせのように点けた煙草はいつもと同じ味だ。隣の安白はレジ袋を提げながら、俺の奢った肉まんをもそもそと齧っている。


「あとサプライズもやりたかったんだよ俺……驚く顔とかそういうのが見たかった……」

「サプライズとかあれ相手選ぶから博奕だぞ。何で不意を突こうとしたがるんだ」

「予想通りに普通にやるのってつまんないじゃん」

「そういうのは普通をきっちりできるやつが言わないと説得力がない」

「普通にやると退屈って言われるじゃん。意外性がないって」

「評価点が合わねえ相手なんだそういうのは。熊は鰓呼吸できないから雑魚って評価してるやついたらそいつ馬鹿だと思うだろ。そういうことだよ」

「俺熊なの?」

「とりあえず馬鹿だよ」


 煙の合間にどうしようもない話をしながら、がらんと暗いコンビニの駐車場を眺める。寒くなってきたせいで夏の虫のように屯していた不良連中子供たちの姿は消え、ぼんやりとした店内の光が黒いアスファルトに滲んで夜に流れ込んでいる。


「……ここから近いのかよ」

「ん? 来たことあるし知ってるだろ。アパートこっから五分ぐらい」

「そっちじゃねえよ。幽霊屋敷の方」


 安白の目が丸くなった。


「ここから十分かかんないとは思う、けど、さあ──ええ?」

「何だよ」

「え、心霊スポット行って何すんの?」

「連れてこうとしてたお前がそれ言うの本当どうかと思うけど」


 ただの好奇心だよと答えれば、怪訝そうな視線が向けられる。俺からすれば『彼女の怯える顔が見たい』という理由よりは好奇心怖いもの見たさの方が余程世間の同意を得られると思う。

 紫煙を夜闇に混ぜながら少し待つような間を取れば、安白が渋々と答えた。


「……まあ、見るだけならいいけどさ」

「見るだけだよ。どういう建物かってだけ噂で聞くばっかりで気になってたから。夜に見てみたかったし、心霊スポットってやつ」

「物好きかよ。悪趣味」


 お前もなかなか馬鹿なんじゃねえのという安白の言葉に、俺は煙を噴き上げて応えた。


***


 秋の夜空は星も地味だ。ぽつんと明るい星ですら他の季節の連中と比べれば暗い方だろう。冷え切った空気が頬を撫でる度に、理由の分からない寂寥感のようなものが胸に湧く。寂しいのと寒いのは見分けが難しいなと思う。

 どうしてかまたぐすぐすと鼻を鳴らし始めた安白に道案内をさせながら、できるだけ声を潜めて俺は問いかける。


「食い終わって泣き出すなよ。子供か」

「だって寒いなあって思ったらなんか泣けてきて」

「そんなに悲しいもんか、女いなくなるってのは」

「言い方がスレてんだもんなあ。そういうやつじゃなくてさ、こう、心の拠り所とかそういうやつだよ」

「拠り所にどういう扱いをすんだよお前」

「だって可愛いところ見たかったんだ。色んな反応が見たいんだよ、俺だけのが欲しいやつ」

「他人に随分なこと言うよな、自分の趣味で人つつくなよ。金魚つつき殺す子供か」

「そういう怖いことはしたことない……」

「同じことしてるくせに。人相手にやる分むごいだろ」


 直進、左折、端、道なり、右折。ぐだぐだと話している最中、唐突に前を歩いていた安白が足を止める。ぼんやりとしていた俺は背中にぶつかりそうになって、すんでのところで踏み止まった。

 ぽつんと燈る防犯灯、照らされる安白の顔が向く方に俺も倣う。

 夜に沈む高塀は黒く、その合間から続く小路は闇に白々と浮かぶ。玄関扉のノブはぼんやりとした銀色に光り、遠目にもじゃらじゃらとした鎖が巻かれているのが見える。


「ここだよ」


 ぶっきらぼうに言い捨てた安白の声が微かに震えていたのが寒さのせいかどうかはさすがに揶揄う気にもなれず、俺は幽霊屋敷を

 噂には聞いていたが、確かに外から眺めるだけで分かる。周囲の住宅とは明らかに雰囲気と規模が違う。塀の長さも玄関の広さも相当なもので、地方都市とはいえこの辺りなら随分な値段になるだろうことが容易に予測できるほどだ。幽霊屋敷と呼ばれているのに建物は外から見て分かるような劣化は見当たらず、二階にずらりとはめ込まれた窓は割れてもいない。カーテンが掛かっていないせいか、ぽかりと虚ろに黒い窓枠の向こうに何か夜に似たものが押し込まれているような錯覚を覚えて、俺は嫌な気分になる。


「お前こんなとこに彼女連れてきたのか」

「怖いだろ。最初は入る気だったけどいざ到着したらまあね、迷う前に彼女に先制喰らったから即撤退だったけど」


 こうやって見ると俺が馬鹿やったなってよく分かるよと安白が呟く。恐怖は馬鹿にも有効な刺激なのだなと俺はひどいことを考えて、また胸底に押し込める。ここで機嫌を損ねて置いていかれるのはぞっとしない。

 一陣強い風が吹いて、剥き出しの耳が冷えて痺れる。とりあえずは名所観光が済んだことに納得しながら、俺は安白に声を掛けた。


「じゃあ帰るか。寒いし」

「あ、本当──わあ俺今すげえほっとした。ミサキちゃんもこんなんだったら俺本当悪いことしたんだな……」


 より戻せなくても謝れないかなと脳天気なことを言う安白に曖昧に返答を濁して、俺たちは帰路に着こうと幽霊屋敷に背を向けた。


「おかえりですか」


 朗らかなのに温度のない声がした。

 俺と安白は反射的に振り返る。あれほどはっきりと聞こえた声の主はどこにも見当たらず、幽霊屋敷の玄関には厳重に鎖が巻かれたままで、人の気配はおろか虫の声すら聞こえない。屋敷の窓々はべっとりと黒いままで、防犯灯の光も届いてはいない。


 黒々とした窓に湧き上がるように白い人影が一斉に張り付く。影は両手で片手で三本手で高く低く不規則に様々に、こちらに向かって手を振ってみせた。


 深夜の住宅街に絶叫が響き渡り、秋の夜の静けさにすぐ呑まれて消えた。

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