第5話 屋上
「隼人!!隼人!!!」
大声を上げながら歩みは速足へ
そしていつの間にか走り出していた
一階から二階
そして三階
人の気配があるかないかだけを確かめて走り抜ける
もし感じなかったらもう一度繰り返すまでだと思いながら走りぬける
すると
「・・ったーー・・・ぞ!!!」
三階の廊下の途中で途切れて聞こえる声
「隼人!?」
すぐに声の正体に気づく
「隼人!!どこだ!!」
しかし、居場所まではわからずこちらも大声で返す
「・・・」
だが答えが返ってくることはない
「隼人!隼人!!」
声を出しながら歩き端についた時
階段の上階
つまり屋上から
「でれるぞ!!!!!」
歓喜にあふれる隼人の声が聞こえた
その声にすぐに反応して俺は階段を駆け上がる
そして屋上への思い鉄の扉を体当たりのようにあけ放つ
そこには
「やっとでれるぞーーーーーー!!」
そう叫んでいる隼人が屋上のフェンスのむこうに立っていた
その様子に
「隼人!!何してるんだ!!」
あわてて声をかけた
「匠!!ほら!!出れるぞ!!俺たちやっと出れるんだ!!」
そういって嬉しそうにこちらに話しかけてくるが
その様子はもはや正常とはいいがたかった
「隼人!何言ってるんだこんなところから飛んだらケガ、いや死ぬかもしれないぞ!!」
正気を失っているであろう隼人に俺は危険性を伝えるが
「お前こそ何言ってるんだよ!!死ぬ!?この学校にいる方がよっぽど死んじまうだろうが!!」
荒々しくこちらに声を上げる
「みたろ!?智也も恵理も!!!二人ともひどい状態で・・・あんなの普通じゃない!!この学校は普通じゃないんだ!!」
声は裏返りすでに正気は失われてる
「隼人・・・」
その様子に言葉が出ずただ名前を呼ぶ
しかし隼人は
「俺見たんだ!さっきここから!!美香が!!美香が校庭に立っていた!多分美香が俺たちを恨んでこんなこと・・・きっとそうに違いない!!!」
「隼人・・・何言ってるんだよ?なぁ頼むからこっちに戻って来いよ」
そう語り掛ける
「信じないのか!?だってそうだろ!?俺たちがあの時美香を置き去りにした!それでいなくなった!!きっと恨んでる!!俺たちを!!置いていった俺たちを!!!!」
早口でまくしたてながらこちらに言い放つ
「たしかにそうかもしれない・・・けど美香がそんなことする娘か?しかも、恨みなんて・・・」
「おまえは見てないからそう言えるんだ!!美香は見ていたこちらをじっと!!きっと俺たちを羨んでるんだ!!」
俺が話しかけている言葉に被せるように隼人は話をつづける
「おまえはそうだよな!!美香のこと好きだから!!そんなことしないって言いたいんだろ!!恵理がおまえのことが好きなのに知らないで!!お前は!!」
「隼人・・・」
狂ったように叫びながら言葉を発する隼人に俺は何も言えず
ただ名前をいうしかできなかった
「・・・ごめん・・・けど、俺はもう無理だ!な?匠もここから出よ?な?」
そういって手を差し伸べる
しかし
「隼人・・・頼むから話を聞いてくれよ・・・」
そういってなんとか飛び降りることを止めようとした
しかし
「わかった・・・もういい・・・俺は・・・行く!」
そう言って足を軽やかに屋上のへりから離した
「隼人!!」
声をあげてフェンスの方へと走り出す
だが、
ドシャ!!
明らかにわかる死の音
そして見下ろす屋上からの景色には
赤い固まりが地面に張り付いていた
「そんな・・・飛び降りただけで・・・」
あまりの光景にそこに膝をついた
涙があふれてくる
「なんで・・・こんな・・・俺たちが・・・どうして・・・」
ただただ疑問が心をかけていく
そして隼人が言葉にしたあることを思い出す
「美香?・・・美香が?・・・だとしたら・・・」
美香が俺たちを迎えに来た
そう考えると仕方ないように感じた
だってあの時美香を置き去りにした俺たち
その報いがあってもしょうがないと・・・
「次は・・・俺かな・・・」
そうつぶやいて力なく立ち上がる
そして、屋上から去るべく鉄の扉へと向かう
涙でぼやける視界の中扉にたどり着き
そこで一呼吸をする
そして扉を開けた
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