第3話
走っている俺は頭の中で、ひたすら繰り返す。
「分相応、分相応・・・」
俺は、彼女と距離を置くことに念頭に置いていた。
(もうあんな思いしたくないからな・・・)
中学デビューで傷ついた思い出が、頭をよぎる。
そんなことを思っていると、学校に到着した。
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放課後
なんと彼女は今日学校に、登校してこなかった。
今日は仕事があったらしい。
席が隣だから、後で彼女に怒られることを覚悟していたが、怒られずにすんだ。
(何が、「怒られずに済んだ」だ!!)
自分で思って、自分に突っ込む。
(ひょっとしたら、彼女はお礼を言うだけのために、登校したのかもしれない。
それなのに俺は彼女を無下にして・・・)
自分のことをクソ野郎だと思い、ポコッと頭を自分で殴る。
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翌日 朝
「そんなわけないでしょ。
たまたま、仕事が入っただけ」
偶然、登校中に遇った彼女に、昨日のことを謝罪すると、彼女はこう言った。
「なんだ、よかった・・・」
「こらっ、それでも走ってどっか行くのはマナー違反でしょ!!」
「すまん・・・。いろいろワケがあって・・・」
「ワケって何よ?」
「まぁ、人にはいろいろ話せないことがありまして・・・」
「ふーん・・・」
彼女は俺をじーっと見る。
(そんな顔で見るなよ。惚れちゃうだろ)
彼女は相変わらず、変装しているが、正体を知っている俺には意味をなさなかった。
「あなた変わってるね・・・。
普通なら、何が何でも私に近づこうとする男の子が多いのに」
「あはは」
俺は愛想笑いをする。
(まぁ、普通だったら、そうだろうな。
俺も中学デビューなんかしなかったら、彼女にゾッコンだっただろう)
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職員室
「すまん、お願いできるか・・・?」
俺は担任に呼び出されていた。
隣のモデルの子に、勉強を教えてやって欲しいと。
普通なら泣いて喜ぶんだろうけど、俺にとっては嬉しくないニュースだ。
理由は、もう話さなくもいいよね?
「そうですね~・・・」
(できるならお断りしたい)
俺はもったいぶって、返答する。
「もちろんタダでとは言わないさ。
もし引き受けてくれるなら、きちんと評価しよう」
「えっ!?」
なぜ、俺が驚くかって?
この学校には、大学進学と就職に、推薦制度がある。
地味に歴史ある学校なので、OBがいろんなところに散らばっており、卒業生を受け入れてくれるのだ。
ワンチャン、そこを狙っていた俺には、かなりの朗報だ。
「なっ、だから頼むよ!!」
教師は満面の笑みで、俺に言った。
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放課後 空き部屋
「へぇ~、結構わかりやすいじゃない」
俺はモデルの子に勉強を教えていた。
なんだかんだ、教師の言ったことを受け入れてしまったのである。
仕方ないじゃないか。
堅実な生活を目指す俺にとって、成績評価は結構大事なんだもん・・・。
「じゃあ、今日はここまでだな」
俺は教科書をカバンにしまう。
「ねえ、これから暇っ?
私、奇跡的にこの後、何もないんだよね」
「そうなんだ、じゃあゆっくり休めるな」
俺はさっさと帰ろうとすると
「ちょい、待てや。
こんなカワイイ子を相手にできるなんて、一生に何回あると思ってんの?」
彼女は俺の前に立った。
「ん~、何回だろうね」
「なに、その適当な返事・・・」
「まっ、俺は帰らせてもらいますわ」
「・・・そんな簡単に帰れると?」
彼女は俺の前に、立ちはだかり続けた。
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