第2話

「終わった~」


入学式が終わり、俺は帰宅する。



(いや~、こんな快適とは・・・)


周りの学生は誰かと帰っている中、俺はボッチだった。


それでも、この上ない幸福を味わっている。



(中学生のときは、この時点でいじられまくってたからな・・・)


俺は、悲惨な中学生デビューを思い出す。


あれに比べると、ボッチであることなんて余裕すぎた。


ーーーーーーーーーーーーーーー

下校中のことだった



「んっ?」


俺の目の前には、立ち止まっている女の子がいた。


どうやら、自転車が動かずに困っているようだ。



(俺も過去同じような経験をしたので、ひょっとしたら・・・


 って、だめだめ!!)



「余計な人間関係を作ってはいけない」


これは俺が中学デビューで学んだことだ。



(心を鬼にして、ここはスルーする)


俺は、彼女の横を通ろうとすると




「あの、ちょっと手伝ってもいいですか・・・?」


無意識に彼女に、話しかけていた。



(なにやってんだ俺ええええええええ!!!)


俺は心の中で叫ぶ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっぱりな」


彼女の自転車が動く。


過去の経験は無事、役に立った。



「あっ、ありがとう!!」


彼女は、はしゃいでいる。



「いいって、いいって。じゃあね」


俺はその場をそそくさと離れる。



(余計な人間関係は作らない・・・)


そう思い、俺は走る。



「あっ!!」


彼女はまだ話したいことがありそうだった。


でも、俺はさっさと帰宅する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日


俺は電車の中にいる。


今、登校中なのだ。



「次の電車まで、お待ちください・・・」


向かいのホームでアナウンスが流れる。



(向こうじゃなくてよかった~)


俺は、人がごった返している、向かいを見てそう思う。



(もし、あの中にいたら・・・)


ぺしゃんこになった自分を想像していると



ピンピンッ



「んっ?」


誰かが俺の袖を引っ張っていた。


俺は、袖を引っ張っている手がある方を見ると・・・



「えっ!?」


「静かにしてよ」


昨日、自転車を直してあげた子がいた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ちょっ!!」


学校の最寄りの1つ前の駅でその子は、俺を降ろした。



「よっと・・・」


俺を押して無理矢理電車から降ろすと、彼女も降りる。



「ついてきて」


「はぁ・・・」


俺は彼女について行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


改札を出ると、彼女は反転して俺を見る。



「ここなら、落ち着いて話せるから」


そう言って、彼女は眼鏡とウィッグをはずした。



「おまっ!?」


目の前に現れる女に、俺は驚く。



「どう、分からないでしょ?」


隣の席のモデルの子が、そこにはいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「君だったんだ・・・」


「そうよ、ちゃんとお礼したかったのに」


あまりのことに、変身っぷりに驚く。


(ウチの学校の制服を着ていたので、同じ学校の人だと思ったけど、彼女だったなんて・・・)



「な、なんでそんな変装しているの?」


「私、仕事上モデルやってるから、いろいろとめんどくさいんだよね・・・」


「そうなんだ・・・」



よくわからないけど、いろいろあるのだろう。


俺は中学デビュー如きで、いろいろ苦労した。


プロのモデルとなると、俺とは比べものにならない苦労があることを察する。



「でね、それでなんだけど・・・」


彼女は俺に顔を近づける。



(やばい、こんなかわいい子が俺に近くにいていい存在ではない。


 ・・・逃げろっ!!!)



「お礼なら、十分ですー!!」


叫びながら俺は、その場から走り出した。



(分相応、分相応・・・


 静かに生活するんだ・・・!!)


「あっ、またっ!!!!」と言う彼女を後に、俺は去る。

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