第8話:初めての顔合わせ

当日。

朝早くから列車に乗っていた。

久しぶりの一人での遠出である。

目指すは北海道函館市の函館山。

世界3大夜景の一つが見える場所である。

列車内では久しぶりに駅弁なる物を食べた。

いかめしだ。

美味かった。

車窓から流れる景色を見、音楽プレイヤーで好きな曲を聴く。

なんていう良い時間であろうか。


『流れゆく 車窓の外を 見てみれば 色付く音色に 踊る気色』


とか作ってしまう。

決して気色は誤字ではないと告げておこう。

窓から漏れる陽を顔に浴び、目をつぶり、流れ行く時間を感じた。


函館には昼3時頃着いた。

食事まで一人町をぶらぶら観光した。

そして軽く食事を取った後、歩いて函館山に向かった。


一時間ぐらい歩いただろうか。

山の展望台に着いた。

私はいろんな思いをはせていた。

過去の事が振り返っては消え振り返っては消えた。

なぜか泪が出てきた。

彼女に悪い事をしたと感じたからだろうか。


その日は平日である。

観光客も少ない。



夜になった。

星が少しずつ多くなる。

そして満天の星空になった時である。


『星空の下で!』


とどこからか声が聞こえた。

振り返ってみると、…女性が一人いた。

私も「星空の下で」と返した。


彼女:やっと会えましたね。

私:ああ。

彼女:かおるです。初めましてですね。

私:早春です。ネット上ではいつも会ってましたよ(笑)

かおる:そうですね(笑)


それから無言の時がしばらく続いた。


早春:…星が綺麗ですね。

かおる:ええ。

早春:今まで生きてきた中で一番綺麗な星空です。

かおる:…一句作ってくれませんか?

早春:え?

かおる:『春の夜の』がお題です。

早春:わかりました。


私はしばらく考える


早春:春の夜の…できました。

かおる:聞かせてください。

早春:『春の夜の 桜舞い散る 夜風吹く 流れる星に 祈る思い出』

かおる:意味は?

早春:桜舞い散る春の夜に昔の思い出を思い返し、幸せになれる様流れ星に祈るといった意味です。

かおる:やっぱり本物ですね(笑)


私はその見えない笑顔だけで十分だった。


かおる:冷えてきましたね(笑)

早春:そうですね。

かおる:それでは行きますか!

早春:え?どこへですか?

かおる:例の店に飲みにですよ。

早春:あっ。分かりました。


その店は偶然二人共行った事がある店だった。

そこで飲み明かして次の日になるのだった。

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