彼女の顔が、みるみる青ざめていきます。
「電話でなよ」
「……ごめん」
タイミングを考えろよ。波部はそう書いた顔でうながしました。
黒いロンググローブに覆われた細い手が、スマホを握ります。
「……もしもし」
「汐見真様の携帯でお間違いないでしょうか」
恫喝を得意とするような野太い男性の声が、音割れも辞さずに飛んできました。
「大匈メディカルセンターで昨日検査を受けられた件ですが、陽性となりました。センターに提出いただいた事前情報をもとに判断しますと即座に入院が必要となります。今センターの入院棟に空床いくつかあるとの事なのでそちらで良いですか? 他にご希望の病院ございますか?」
「……いえ、大丈夫です」
「今どちらにいらっしゃいますか? ご自宅ですよね? センターまでの送迎車をそちらに向かわせますがよろしいですか?」
「ええ。入院の支度するので出るのが遅くなると思います」
「はいわかりました。入院に必要な持ち物について念の為お知らせします――」
彼女は、あと一言、二言、機械みたいに返事をしてから、通話を切りました。
そして、いつしか氷漬けにされた人形みたいになっている彼氏を、冷ややかな目で見たのです。
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