第12話 出会っているのに
活動が始まってから、俺はずっとユキさんを探していた。けれども女性は多いし、実際には年齢も身体的特徴も知らないのだ。今日来ているかも分からない。結局全く分からなかった。
活動を始めて数日後。夜ホテルに帰ってパソコンを立ち上げ、ツイッターを眺めていると、ユキさんの新しい投稿を見つけた。またブログが更新されたようだ。俺は早速そのブログを読んだ。すると、
「昨日の午後、ジャケットの配布をした。」
と始まる。えぇ!昨日の午後、俺もいたぞ!昨日はえーと、そうだ、在庫の補充をしていたのだ。ジャケットの補充もした。あそこにユキさんがいたのか!
ああ、ジャケットの配布をしていた人を思い出せない。絶対に見ているはずなのに。俺は頭を抱えた。これも歳のせいか・・・。
数日後、またユキさんのブログが更新された。夜、ホテルで読んだ。すると、昨日の午後、UACで靴の配布をしたと書いてあった!昨日俺は、すぐ近くでポロシャツの配布をしていたのだ。なんと!そんなに近くにいたのか。ずっと近くに・・・。一瞬意識が遠のいた。いかん。血圧が上昇したかもしれない。一旦落ち着こう。
俺はわりと連日活動をしているので、今日の活動の記憶が邪魔をして、昨日の活動の事を詳しく思い出せないのだ。いつもいつも、ユキさんのブログは前日の事が書いてあって、俺の記憶は既に塗り替えられてしまっている。
それでも、何とか昨日の事を思い出そう。昨日、斜め前の靴のブース。確か2人で配布を行っていたはずだ。毎日あそこは2人だから。うーん。昨日、昨日・・・。確か挨拶くらいはしたような。顔までは思い出せない。というか、女性だっただろうか。何せマスクをしているから、顔も半分しか見えないし。少なくとも、髪の長い女性はいなかったと思う。あ?もし後ろに結んでいたら気づかないかもしれない。何せ、女性には疎いもので。
ブログには、ユキさんが溜池山王駅から通ってくる様子も書かれていた。そこから、桜坂と鼓坂を上ってくるそうなのだ。そして、ある重要な手がかりを得た。
「今週は一日おきに活動がある」
そう書かれていた。つまり、昨日活動があったから、今日はなくて、明日あるという事ではないか?いつも午後の活動をしているから、明日も午後にあるのでは?以前のブログで、13時ごろに駅に到着したと書いてあった。だとすれば、13時に溜池山王駅で待ち伏せすれば、ユキさんに会える・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます