第11話 UACでの受け取り
6月1日。やっと訪れる事が出来たUAC。ユーアックとも読む。正式名称はユニフォーム・アクレディテーションセンター。旧ホテルオークラ別館という事で、なるほど建物は古いようだ。これが終わったら建て替えるのではなかろうか。
ユニフォームを受け取るにも予約が必要である。13時に予約してある。ここで受け取って、13時半からの午後の活動をしようという目論みだった。
受付から、早速ユニフォーム姿のフィールドキャストの皆さんがいた。皆笑顔で、生き生きと活動していた。
「マイページのバーコードのご提示お願いしまーす。」
そう言われて、スマホの画面を出す。
「はい、ありがとうございます。では、まっすぐお進みください。」
言われた通りに進んでいくと、いくつかカウンターがある。
「Cカウンターへどうぞ。」
あちこちにユニフォーム姿のボランティアさんがいて、誘導してくれる。そうか、オリンピックの競技とは関係なくても、こうやって大会の役に立つ仕事が出来るんだな。そう思わせてくれた。
「身分証明書をお願いします。」
カウンターに座り、免許証を出した。前にはアクリル板が設置されており、お互いマスクをしていて話が聞き取りづらいという難点がある。これもコロナ禍のせいだ。仕方がない。
ここでは、まずアクレディテーションカードという物を作ってもらうようだ。活動するには、この身分証明書となるアクレディテーションカードがないとダメなのだ。
目の前に座っているボランティアさんが、パソコンでパシャパシャと何か入力している。そしてマウスでクリック。だが、ボランティアさんの顔が曇る。
「えーとですね。登録されている写真が、機械の方で読み取れないみたいでして、撮り直しになってしまうのですが。」
「え?!撮り直し?今日、カード作れないんですか?」
俺は焦った。今日から活動が入っているのに。
「いえ、ここで写真も撮れるので、今日作れますよ。」
「ああ、そうですか。」
良かった。俺は紙切れをもらい、それを持って写真再撮影のコーナーへ案内された。
「撮りますよー、はい。」
え、カメラはどれ?と思っているうちに終わったようで、少し待っているとプリンターから紙が印刷され、ラミネート加工され、立派な紐(ランヤードと言うらしい)が通され、アクレディテーションカードが出来上がった。それを渡され、
「早速首から提げてくださいね。」
と言われた。まだ温かい、というか熱々のカードを首から提げる。なんだか大きなカードで邪魔だが、特別感があった。そして、顔認証の機械の方へ進んだ。マスクを外してカードをかざすとピロリンと鳴ってOKの文字が出る。
「はい、これで認証されましたよ。次はユニフォームの受け取りの方へお進みください。」
笑顔で見送られ、次のカウンターへ進んだ。
ユニフォームチームのテリトリーに入ったようだ。カウンターのパソコンで何やら操作していたボランティアさんが、紙にサイズを書き込んでいる。俺のサイズだと思われる。それを手渡され、次に進むように言われた。
試着が出来ると言われたが、試着室はだいぶ混雑していて並んでいた。もうだいぶ時間が経ってしまって、そろそろ13時半になる。試着などしている場合ではない。ほとんどの来場者が試着をするようだったが、俺は試着室を素通りし、階段を上がって行った。
上の階に上がると、まずはユニフォームを入れるトートバッグを受け取り、そして活動用のバッグを受け取った。それから靴の受け取り、ジャケットの受け取り、ポロシャツの受け取り、パンツの受け取り、靴下の受け取り・・・と続く。ホテル時代には売店が並んでいたであろうと思われる場所だった。最後に全ての物が揃っているか確認してもらって、外に出る。が、俺は活動があるのでまた戻らなくてはならない。ぐるっと建物を回って、最初に入った所ではなく、地下3階から入った。この間受け取ったメールに書いてあったので。そしてエレベーターで12階へ。ここで活動の受付をして、更衣室で着替えた。
こうして、晴れてユニフォーム姿となった俺は、持ち場へ連れて行かれた。今日からユニフォームの配布を行うのだ。今さっき通ってきた場所なのでなんだか面白い。今日は在庫の補充を行った。
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