第9話 活動日が決定!と思ったら・・・

 ツイッターを始めることにした。ここに「せいたろう」という名でアカウントを作った。

 「東京2020ボランティア」で検索すると、たくさんヒットした。ボランティアをやりたいという人がたくさんいて、その人達はオリンピックを開催して欲しいと思っている。ボランティアを辞退したという話も聞いたが、それでも7万人ほどの人がボランティア登録しているはずだ。その人たちがオリンピックを開催して欲しいと思っている。俺は改めて仲間の存在、自分と同じ思いの人たちの存在を知って、心強く思った。


 2021年4月19日。とうとう活動日のオファーが来た。世の中では「オリンピックなんて本当に出来るのか?」という雰囲気になっているようだが、準備は着々と進んでいるという事だ。

 世論に反して政府が意固地になって五輪を開催しようとしている・・・そんな報道もあるが、この時ばかりは政府を応援してしまった。いつもは政府に文句ばっかり言っている俺ではあるが。

 活動日は60回ほど入っていた。この中から都合の悪い日を11回までキャンセル出来るのだが、俺に出来ない日などないので、全て承諾した。

 ああ、やっと東京に行ける。まずはホテルの手配だ。5月10日から7月27日まで活動日が入っているので、5月9日から7月28日まで宿泊するのだ。ちなみに、やっと東京UACの場所が分かった。虎ノ門の近くにある、旧ホテルオークラの別館だそうだ。近くにホテルはたくさんあるが、競技場はない。やっぱりちょっと残念だ。

 ホテルの予約をしてワクワクしていたのに、またもや事態は急変した。4月25日から5月11日まで、東京都に緊急事態宣言が発令されたのだ。それに伴い、都道府県をまたぐ移動は避けなければならないそうで、

「緊急事態宣言期間におけるUACの活動は、東京都内在住のボランティアの皆さまに限定して担っていただきたい」

というメールが送られてきた。

 な、なんだとー!ん?いや、5月11日までか。それなら、5月10日と11日の活動が出来なくなるだけだ。よしよし。東京へ行く日を2日ずらそう。

 と、その時には思っていたのだが・・・。


 5月7日。すっかり東京行きの準備が整っていたところへ、緊急事態宣言が5月31日まで延長されるというニュースが舞い込んだ。感染状況から考えて妥当だとは思うが、この、まとめてしまった荷物はどうなるのだ!

 そして、組織委員会からメールが届いた。都外在住者の活動は、5月いっぱいは控えて欲しいとの事。ううう、やっぱりそうか。とにかくホテルの予約変更をした。俺は本当に、オリンピックボランティアをやれるのか?


 あまりに悶々とし、不安と無気力感に苛まれ、外に出る事も嫌になった。ただただインターネットで「東京2020」とか「オリンピックボランティア」などの語句で検索し、新しい情報がないか、そればかり気にしていた。

 そんな毎日を過ごしていたら、ある日ツイッターでふと目に留まった投稿があった。俺と同じユニフォームチームの人が、ブログに活動記録を書いていて、ツイッターで宣伝していたのだ。

 どんな仕事をするのだろう。そういう興味があって、ブログを開いた。読んでいくと、とても文章が読みやすく、引き込まれた。読み終わると、まるで自分が体験してきたような満足感が得られる。俺は麻薬にとりつかれたかのように、その人のブログを読み続けた。

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