第7話 突然の災禍
2020年2月末。突然学校が全国一斉休校になった。新型コロナウイルスが広がり始めたのが理由だが、まだまだうちの辺りは関係ないと思っていたのに、近所の小中学校もみな休校になり、いきなり身近な問題だと感じた。
子供のいない俺なんかには関係ない出来事だが、世の中には相当の影響とインパクトを与えた。子供が家にいるため、仕事に出られない母親が出てきたり、テレワークの普及や国民の自粛ムードのため、飲食店の多くがつぶれ、社会問題が一気に加速した。地方では、東京から来た人、帰ってきた人から感染が広がったとかで、村八分問題も出始めた。うちのうどん屋も、観光客が減ってだいぶ客足が鈍った。年寄りはより危ないと言うことで、母親が店に出るのを控えるようになった。
俺には幸い、金銭的な心配はない。溜めた金や退職金の他、東京のマンションを売った金もまだある。俺が目下心配なのは、東京オリンピックが中止にならないかという事だ。それだけは勘弁してくれ。俺は毎日ニュースや新聞にかじりついていた。
2020年3月24日。東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が発表された。正直、安堵した。中止だけは嫌だったので。コロナ禍が収まってから、ちゃんとしたオリンピックを開催してもらいたい。延期になった分、英語でも勉強し直そうかと・・・思っただけだった。もうどう頑張ってもしゃべれるようにはなれそうもない。受験の時には散々勉強して、単語も覚えたものだが。昔の日本人は会話を重視しておらず、読解力ばかり磨いていたから。せめて大学生の時だけでも、もっと会話を勉強していれば良かった。
オンライン研修が何度かあった。本来ならば、2020年の4月頃から、役割別研修やら会場別研修なんかがあるはずだったのに。それでも、この時期に俺も東京へふらっと出かけてくるわけには行かなかったので、オンラインでの研修はありがたかった。
「東京に行くんだったら、帰ってくる時には自主隔離してもらわなきゃならんよ。」
母親に言われた。
「自主隔離って、俺の部屋で?」
「いいや、うちの敷居をまたいでくれちゃ困る。駅前のウイークリーマンションで2週間隔離してもらわんと。」
「え・・・。」
そう来るか。そうだよな。一日で行って帰ってこられるのに、2週間隔離なんてとんでもない。だが、実際に東京へ行く事はなかった。本番まで、全てオンライン研修だったから。
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