前のエピソード――第5話　共通研修

　共通研修の時にもらったノートに、2020年の自分へメッセージを書く欄があった。まだまだ先の事という感覚だったが、それでも、少し近づいてきたように思えた。そして、その日の夜、ノートにこう書き込んだ。

「暑さに負けず、頑張れ！」

　いよいよ2020年がやってきた。ウキウキする俺の気持ちとは裏腹に、世の中では不穏なニュースが散見されるようになった。新型コロナウイルスによる肺炎のニュースだ。海外から帰国した人が感染していたらしい。あまり広まらないといいのだが。

　2020年3月。フィールドキャストの役割が決定したというメールが来た。

「来たー！」

メールを見て思わず叫ぶ。早速マイページにログインして、役割を確認すると、

「ユニフォームチーム」

と書いてあった。ユニフォームチーム？会場は、

「東京UAC」

東京ユーエーシー？運営サポートとも書いてあるので、おそらくユニフォームを配布する役割だろう。UACがどこなのか分からないので検索してみた。すると、地方UACというのはいろんな所にあったが、東京UACに関しては情報がなかった。地図検索してみても出てこなかった。だがまあ、そのうちに分かるだろう。東京には違いないので心配ない。まあ、俺にとってはどこでも遠い事に変わりは無いが。

　しかし・・・。活動内容は何でもいいと思っていたが、運営サポートに決まって、俺は少しばかりがっかりしている。華やかな表舞台とは無縁な、地味な役割だ。活動場所がせめて競技場や選手村の近くだったらいいのに。

　そんな「がっかり」はもう捨てよう。それよりも、活動期間にはどこに泊まろうか。なるべく前向きに考える事にした。このホテルがいいか、あっちのホテルがいいかと、都内のホテルを調べ始めた。まだ場所も日にちも分からないから、予約が出来るわけでもないのだが。