第5話 共通研修

 面接試験に合格したのか、とにかく問題なく俺のボランティアジャーニーは続いた。次の連絡が来た時にはどれだけ安堵したことか。

 2019年の10月に、フィールドキャスト共通研修があるという事だった。こちらも早速予約した。今度の会場は国立オリンピック青少年センターという、代々木の施設である。

 2019年10月4日。またもや飛行機に乗り、羽田へ向かった。今回も寄り道せずに直行。こうやって遠出するのも最近では珍しい事だった。何せ、普段は近所の散歩くらいしか外に出る事もないのだから。

 建物に入ると、シティーキャストの研修場所もあった。階段を上って行くと、受付があったのだが、ちょっとびっくり。カメラマンがいっぱいいて、入場する人たちを撮影していた。今日はこの共通研修の初日なのだ。それで、報道陣の取材が入っているのだろう。 受付を通り抜けると、そこにフィールドキャストのユニフォームが展示してあった。マネキンが着ている。以前テレビでデザインが決まったというニュースを見ていたが、実物を見るのはもちろん初めてである。

 視聴覚室のような階段状の大きな部屋に入り、適当に座った。今日はテキストやノートを渡され、お勉強会のような物が行われた。オリンピックやパラリンピックの歴史を学び、障害者などの視点に立つ事や、ピクトグラムについてなどを学んだ。ピクトグラムというのは、競技を図柄で表したものだが、これは前回の東京オリンピックの際に出来たそうだ。それまでは欧米で開かれていたので、言葉の壁はそれほど大きな問題ではなかったが、アジアで開催されるにあたり、言語の違いに焦点が当てられ、言葉が通じなくても見ただけで分かるような図が使われるようになったというわけだ。なるほど。

 研修では、実際にボランティア活動をする時の注意事項なども教わった。活動当日は家からユニフォームを着て行く事や、荷物は指定のバッグ以外は持ち込めない事、サポート企業への配慮についてや、写真撮影に関する注意事項など。

「えー、あのバッグ小さいよね。あれに全部荷物入れるとか、無理じゃない?」

と、隣の女性たちが話していた。

 休憩時間には、マスコミの人たちが写真を撮ったり、ボランティアに取材をしたりしていた。俺の後ろに座っていた女性2人がいくつかの新聞社や雑誌社から取材を受けていた。どうしてこの子たちばかりそんなに人気があるのかな、と不思議に思っていた俺は、トイレに立って、そのついでに後ろに座っている女性たちを見た。すると、なるほど。茶髪で、日焼けしていて、派手だ。話が聞こえてしまったのだが、2人とも大学生で、ボート競技をやっていて、是非オリンピックでボート競技に携わりたいのだそうだ。

 俺みたいなおっさんは山ほどいて、珍しさは皆無。そもそもおっさんは写真の撮り甲斐もない。失礼だが、おばちゃんもいっぱいいる。若い子は貴重な存在である。


 さて、研修も終わった。この近くには良さそうな店もないので、お土産は空港で買うことにした。羽田空港に着き、人形焼きを買った。そして、一度精算を済ませた後、思い直してせんべいも買った。

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