第18話 決闘
チュートリアルのパネルと閉じると、少しだけ時間が巻き戻る感じで時が動き出した。
「私はこの街屈指のランクAハンター。ドゲス・クッソ―だ。いい店を知っている。良ければ食事でもどうかな?お嬢さん」
軽薄な言動だ
ドラコを見ると、明らかにその男を不快そうな眼付きで見ていた。
彼女はこういうタイプが嫌いなのだろう。
その時、妙案が頭に浮かんでしまった。
ドラコを嗾けて金髪野郎をボコって貰い、俺がトドメ刺せばチュートリアルクリア出来んじゃね?と。
……いや、流石にそれはあれか。
卑劣にも程がある。
チュートリアルをクリアしたいとはいえ、それは人としてやっちゃいけない気がする。
「悪いが、わしにはパートナーがおるのでな。他を当たれ」
ドラコが虫を追い払う様に「シッシ」と手を振る。
それを見て気分を害したのか、金髪の矛先が俺へと向く。
「パートナー?まさかその貧相な男が……等とは言いわないよな?」
俺を見て鼻で笑う。
ドラコに相手にされないからって、一々鬱陶しい奴だな。
ま、貧相だというのは否定しないが。
「ほう、目の前でワシの物を馬鹿にするか。いいだろう。お主がこやつと戦って勝てたなら、その時は食事でも何でも付き合ってやる」
「え!?」
何言ってんだこいつ?
俺がAランクのハンターに勝てる訳ねぇだろ?
正気か?
「ははは。この貧相な男を倒せば何でも言う事を聞くだって?その言葉、忘れないで貰おうか」
金髪の男はここでは不味いと言って、俺達について来いという。
ドラコがそれに付いて行ってしまったので、俺もそれに渋々従った。
町はずれらしき場所。
周りに人気がない広い場所に、俺達は連れて来られた。
その道中、金髪が不機嫌そうに奴隷達を蹴っているのを見てムカついたが、まあ俺には何もできないので強く生きてくださいと心の中で祈っていおく。
これがイージーならきっと格好よく助けられたのだろうが……ま、インフェルノだししょうがないよな。
「では始めようか」
金髪が腰に下げてあった剣を抜く。
様になる構えだ。
素人目にも熟練している事が分かる。
ごめん嘘ついた。
そんなの分かる訳ない。
ま、でもAランクなんだし相当な腕前である事は間違いないだろう。
「決着の判定だが……気絶した方が負けという事でどうだ?」
「何を温い事をいっておる?相手を殺した方の勝ちに決まっておろう?」
「へぇ……いいのか?そう言えば怯むと思ってるんだろうが、俺は本当にその男を殺すぜ?死体は魔法で処分すればいいだけだからな」
チュートリアルで倒せって出るだけあって、こいつ完全に屑だな。
しかし嫌な予感しかしない。
……だって俺死なねーし。
「御託はいい。さっさと始めよ」
「はっ!そうかい!」
金髪が動いた。
そう思った瞬間、俺は上空を見上げていた。
そして視界がぐるんと縦に一回転する。
俺が最後に見たのは、首のない自分の体だった。
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