第15話 ハンター
結論から言うと、冒険者ギルドはなかった。
だが代わりに道にでたむろしていた口の軽そうなおばさんの集団から、ハンターギルドなる物の情報を入手する。
ひたすら魔物を狩って生計を立てる職業の様で、まあ狩専の冒険者みたいな物だ。
取り合えず俺達はそこへと向う事にした。
「結構立派な建物だな」
レンガ造りのしっかりした大きな建物。
そこがハンターギルドだった。
門を潜って入ると、中は清潔感溢れる感じに整えられている。
狩りを行うギルドだと言うので、もっと荒くれ者どもがたむろしてそうなイメージを持っていたが、全然そんな事はなかった。
まるで区役所みたいだ。
「どれどれ」
入口付近ににあった冊子に目を通すと――字は普通に読める。ドラコや他人と普通に話せる事を考えると、異世界転生時に与えられたなのだろう――国から魔物駆除の依頼を一手に引き受けている組織だという事が分かった。
仕事内容は、魔物退治とその素材の収集だ。
正直。
今のクッソ弱い俺に務まるか少々不安ではある。
だがレベルを上げるという目標を考えると、ある意味天職とも言える仕事ではあった。
レベルを上げつつお金が稼げるわけだからな。
とりあえず、出来るかどうかは置いといて登録だけでもしておいて損はないだろう。
「あのー、ハンターになりたいんですが」
ピカピカによく磨かれた木造のカウンター。
そこに座る受付の女性に俺は声をかけた。
茶髪のボブカット。
美人ではないが、愛嬌のある笑顔をしている。
「ハンターへのご登録ですね。では、此方で魔力の計測をお願いいたします」
「え!?」
彼女はカウンターの上に、手のひらサイズの青い水晶玉を置く。
魔力の計測と言っていたので、おそらくマジックアイテムなのだろう。
「ハンターになるためには、魔力は最低10は必要となっております。規定値以下ですと、ハンターとしては登録できませんので」
受付のお姉さんから補足の説明を受ける。
だが俺の魔力は10どころか、0だ。
計測したら俺が奴隷だという事がばれてしまう。
はぁ……ハンターは諦めるしかないか。
「どれ」
横から急に手が伸びて来た。
ドラコだ。
彼女はひょいとその手を水晶の上に手をかざす。
すると突然水晶から強烈な閃光が……
そのあまりの眩しさに、俺は思わず手で光を遮る。
「凄い!こんな数値を見るのは初めてです!」
閃光が治まった様なので、目をあけて水晶を見ると、そこには536という数字が浮かんでいた。
受付の女性が驚いた様に声を上げている事から、それがかなり高い数字だと言う事が分かる。
まあ分身とは言え、一つの街を震え上がらせる森の主だしな。
「こっちの方はわしの弟子で、魔力は10にも満たない。だからわしの登録を頼む」
「あ、はい。畏まりました。では、身分証の提示をお願いします」
門でやったのと同じく、ドラコは相手に手を向けてそれを幻覚で済ませた。
便利な能力――いや、魔法か?――だ。
幸い登録料などはない様で、問題なくハンターとしての登録は終わる。
「仕事はどう受ければいいんですか?」
「あちらの掲示板にランク毎の依頼が張り出されていますので、そこから選んでいただく形になります」
「ランク?」
まあゲーム等ではよくある設定だ。
だが知らないふりをして一応聞いておく。
認識のずれから、変な落とし穴があっても嫌だからな。
何せここはインフェルノの世界だ。
油断するわけにはいかない。
「ランクと言うのは――」
俺は受付の女性から説明を受ける。
下級クラスはFからAの6段階あり、上級は
ドラコの魔力量は上級レベルらしいが、この街のギルドで上級ランクは発行できない為、下級最上位のAランクスタートになっている。
「Aランク以上を目指される場合、各国の首都で手続きを行っていただくことになります」
「はぁ……」
まあ俺には関係ない話だ。
魔力0だし。
ランクを上げるかどうかは、ドラコ次第だろう。
「どれどれ」
早速掲示板で仕事を確認する。
張ってあるのは最低ランクであるFかB以上の高ランクの依頼だけだった。
今は昼過ぎだ。
中間の依頼が無いと言うよりは、手ごろな仕事は殆ど持っていかれてしまっていると考えるのが妥当だろう。
つまりこのギルドには、EからCのハンターが多いって事だろう。
「これなんてどうじゃ?」
ドラコが一つの依頼書を指さす。
それにはAランクとデカデカと記されている。
内容は北の山に住むキマイラを討伐し、その目玉を手に入れるという物だった。
当然俺では話にならないので、ドラコが討伐する事になる依頼内容だ。
どうやら彼女は、ハンター生活をエンジョイする気の様だ。
「いいんじゃないか?」
「ふ、では決まりじゃな」
ドラコが口の端を歪め、嫌らしく笑う。
それを見て一瞬嫌な想像が過るが、まあ流石にないだろう。
俺じゃどう足掻いても、絶対勝ち目の無さそうな相手だしな。
「これでお願いします」
「畏まりました」
その依頼書を手に取り受付で登録を済ませ、ギルドから出ようとすると――丁度入り口から金髪の男が中に入って来た。
その男の手には鎖が握られており、それは三つの首輪に繋がっていた。
つなぎ目の無い首輪――奴隷の首へと。
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