第11話 刺突耐性Lv2
「ふむ、スライムか。久しぶりに見るのう」
ドラコの肩にスライムがへばりつく。
木の上からいきなり飛び掛かって来たのだ。
「こ奴ら、本体には絶対に寄って来んからな」
そう言うと、無造作に掴んで地面へと叩きつけた。
叩きつけられたスライムは粉々に砕け散り、ジュウジュウと音を立てて消えていく。
「だ、大丈夫なのか?」
「何がじゃ?」
ドラコはケロッとしている。
見ると、彼女の肩や手には溶かされた跡は見当たらない。
どうやらスライムの攻撃は全く効いていない様だ。
分身と言えど、その強さは頭抜けている。
流石は森の主と言った所だろうか。
「次から魔物は――そう言えば、名を聞いていなかったな?名はなんという?」
ドラコが俺の名前を聞いて来る。
確かに名乗って無かったな。
「俺の名前は榊益男だよ」
「益男か。パッとしない名前じゃな。まあいい。益男、次からは魔物はお主が始末しろ。いいな」
「へ……いやいやいやいや!無理無理無理無理!あんなの倒せっこねぇ!」
絶対無理。
俺は武器も持ってないんだぞ?
素手の俺に一体どうやって魔物を倒せと言うんだ?
「なんじゃお主、あの程度の魔物も殺せんのか……」
ドラコが呆れた様に溜息を吐く。
その目は、心底残念な物を見る哀れみの眼差しだった。
流石にそんな風に見られるとちょっと傷つくのだが。
「しょ、しょうがないだろ!こっちはレベル1で丸腰なんだから!」
せめて武器位は欲しい所だ。
「武器のう……」
ドラコは少し考える素振りをみせ、そして何を思ったか徐に親指と人差し指を自分の口の中に突っ込んだ。
彼女の口からゴリっという音が聞こえ、白い歯が摘み出される。
どうやら自分の牙を引っこ抜いた様だ。
意味が分からん。
「これをお主に授けよう」
そう言うと、ドラコは引っこ抜いた牙を俺に突き出してきた。
俺はその様を唖然と眺める。
「なんじゃ?いらんのか?」
「いや、いきなり授けようとか言われても……え?なに?お守りか何か?」
「ああ、これは武器じゃ。兎に角、これを握って武器を想像してみるがいい」
これが武器?
現実なら胡散臭い事この上ない話だが、此処はファンタジーな異世界だ。
まああり得るかと思い、牙を受け取って武器を想像する。
当然思い描くのは剣だ。
「おお、すげぇ」
手にした牙が光り輝き、俺の手の中で剣の形へと変わる。
柄は飾りっ気のないシンプルな形だが、その純白に輝く刀身はとても美しい。
思わず見惚れてしまう程に。
「それならスライム如き、一撃じゃ」
「おおお、マジか!」
このインフェルノ世界で生き延びるには――死なないけど――レベル上げが必須だ。
スライムを簡単に倒せる様になったのはでかい。
さあ、ゲーム攻略開始だぜ!
暫く歩くとドラコが足を止め、前方を指さした。
そこには角ウサギの姿が。
「キラーラビットじゃのう。どれ、仕留めて見せるがいい」
「了解!」
俺は手に握った牙を再び剣にする。
この剣はいつでも牙に戻せるため、持ち運びに便利だった。
「キュイィィィィ」
キラーラットが反復横跳びを始める。
剣を持って強気になっていたが、そう言えばこいつ分身するんだった。
……剣があっても当たらなかったら意味なくね?
「くそったれぇ!」
俺を取り囲んだキラーラビットが一斉に突っ込んで来る。
俺はイチかバチか出鱈目に剣を振り回し迎撃を試みるが――世の中早々上手くいくものではない。
「ぐ……つぅぅ……」
腹部に角が深々と刺ささり、痛みから膝をつく。
俺から素早く離れたキラーラビットは、再び分身からの頭突きを俺の胸元にかましてきた。
その鋭い角は、俺の胸を深々と容赦なく抉る。
鋭い痛みと衝撃。
そこで俺は意識を失った。
「根本的な能力が足りてないのう」
目を覚ますと、いきなりドラコからのダメ出しを受けた。
辺りを見回すと、キラーラビットはもういない。
恐らく彼女が始末したのだろう。
ファンファーレが鳴り響き。
刺突耐性がレベル2に上がった事を俺に知らせて来た。
正直、いくら耐性が上がっても倒せないんでは意味がないだが……
俺……ちゃんとレベル上げられるのかな?
先行きが不安だ。
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