第4話 強酸耐性Lv1&痛覚鈍化Lv1

「ひでぇな……こりゃ」


起き上り呟く。

上半身に身に着けていた布の服は、もうボロボロだ。

残った布地も俺の血で赤黒く染まっている。


全て魔物に引き裂かれた跡だった。

死に戻りすると体は万全の状態に戻るが、身に着けている服等には適用されないらしく、もう見る影もない。


「はぁ……」


俺は大きく溜息を吐く。

森を東に進むと、30分に1度位のペースで巨大な何かに襲われて俺は殺されていた。

その回数はもう軽く3回は超えている。

幸いすべて即死なので、痛みを感じる暇がないのが唯一の救いだ。


しかしエグ過ぎだろ。

インフェルノ。


見知らぬ森に鎖で繋がれて、30分に一度は即死級の強大な何かに襲われる。

こんなもん補填無しじゃ完全に積んでるじゃねーか。


これがゲームなら完全に糞ゲーだ。

5分で投げ出す自信がある。


しかし、残念ながらこれは現実だった。

投げ出す事は出来ない。

再度溜息を大きく吐き、諦めて俺は再び歩き出す。


「なんだ?」


暫く歩くと、何か青いものが目の前の枝から飛んで来て、俺の腕に付着する。

腕に付いたそれを見ると、透明な青っぽいゼリー状の何かで――


あつっ!?


あついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあつい……


腕が焼ける様に熱い。

痛みで目がちかちかする。


「うわあぁぁぁぁ!はっ!あああぁぁぁぁぁぁ!!」


ぼとりと音を立てて、腕が地面に転がった。

悪夢の様な光景と痛み。

俺は喉が張り裂けんばかりの悲鳴を上げる。


「あああああぁぁぁぁぁあ……っが……」


叫び声を上げていると急に視界が青一色に染まり、息が出来なくなってしま

う。


今度は顔が焼ける様に熱い。

腕に張り付いていたそれは、今度は俺の顔に張り付いた様だ。

耐えがたい激痛に襲われ、そこで俺の意識は途切れた。


「ぐ……何だってんだよ……」


俺はゆっくりと起き上る。

痛みはもうない。

腕を見ると元に戻っていた。


しゃれにならない痛みだ。

それまでの巨大な何かは、俺を一瞬で殺してくれていたので痛みを感じる暇はなかった。

だが今のは即死でなかったため、やばいぐらいきつかった。


――死ぬってこんなにきついんだな。


さっきの事を思い出して恐怖で身を震わせていると、頭上で突然ファンファーレが鳴る。

見上げるとそこには――


「強酸耐性Lv1に痛覚鈍化Lv1……」


さっき痛みを受けた事で習得した様だ。

正直滅茶苦茶有難い。

特に痛覚鈍化の方は。


幾ら不死身でも、あんな痛みを何回も受けたら心の方がもちそうにないからな。


「ん?なんか首が軽いな」


違和感から首に手をやると、首輪が外れている事に気付く。

どうやら、あの青いのに頭部を完全に破壊されて取れてしまった様だ。

足元に首輪と鎖が転がっているので、俺はそれを拾い上げる。


「まあ、素手よりはましか」


俺は鎖を再度腕にぐるぐると巻き付けた。

さっきまでは邪魔だという理由で腕に巻いていたが、これからは小手代わりとして使うとする。

これが防具として機能するかは微妙だが、無いよりはましだろう。


俺は東を目指し、再び歩き出す。

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