第121話121「決勝トーナメント決勝(4)」



「カ、カイトが、あんな防御で精一杯だなんて⋯⋯」

「う、嘘だろっ!? 何だ、あのさっきとは次元の違うリュウメイの動きはっ!?」

「まったく⋯⋯見えなかった」

「リュウメイ・ヤマト王太子⋯⋯⋯⋯こ、ここまでの強さとは。というか、この二人が『一回生』ということ自体がそもそも⋯⋯異常です」


 突然、動きが変わったリュウメイに、ザックやその横にいるガス、カート、ディーノが驚きの反応を示す。そして、その反応は彼ら以外の会場すべての者たちもまた同じだった。


 しかし、カイトやリュウメイの強さが目立ってしまい、本人たちはつい忘れてしまっているようだが、そもそも『一回生レベル』を軽々と超えているのは彼らも・・・また同様である。


 今はまだカイトとリュウメイの強さに麻痺・・しているため気づいていないが、後に、そのことを実感・・することになる。しかし、それはまた少し先のお話。


——さて、そんな中、別のところでは驚き・・と共にこの状況を好機・・と捉える者たちがいた。


「まさか、カイト・シュタイナー以外にも、ここまでの強さを持つ者がおったとは⋯⋯⋯⋯こりゃ驚いたのぉ」

「しかし、すごいな⋯⋯リュウメイ・ヤマト王太子。まさかここまでの実力者だったとは⋯⋯」


 会話の主は『学園長ハンニバル・シーザー』と『ラディット・クラリオン国王』。彼らは、キラキラエフェクトがかかっているかのごとき笑顔で試合を観戦していた。


「ふぉふぉふぉ⋯⋯。リュウメイ王太子は現役騎士団の『二つ名付き』と同レベルといったところじゃな」

「うむ。それにしても、学生で⋯⋯しかも一回生でこれほどの強さとは⋯⋯。しかも、この二人以外にもイグナス・カスティーノ君やガス・ジャガー君、その他何人かも現役騎士団の『二つ名付き』に迫る強さだ。⋯⋯本当に信じられん!?」

「ふぉふぉふぉ⋯⋯⋯⋯『機は熟した』。いやそれ以上⋯⋯じゃな」

「うむ。これなら・・・・予定通りに事を進められるな」

「ふぉふぉふぉ⋯⋯。さて、試合終了後・・・・・が楽しみじゃのぉ⋯⋯」

「まったくだ!」


 ニコニコおじさんの二人が向ける視線の先⋯⋯その舞台では、リュウメイがカイトに何やら話しかけていた。



********************



「『龍の息吹』——これは、僕たちヤマト皇国の王の血を引く者だけが受け継がれる魔力増幅法だ」


「⋯⋯なるほど」


 俺は目の前のリュウメイの『体内魔力の動き』を見た。すると、俺はすぐに合点がいった。


 なんたって、こいつの言う『龍の息吹』というのは、俺の⋯⋯⋯⋯体内での魔力循環カイト式魔力コントロールと同じものだったのだから。


 つまり『体内魔力を一本の筋状にして循環させる』というもの。そして、魔力を増幅させたいときは、その『体内魔力の循環スピードを上げる』⋯⋯⋯⋯まさに、俺の魔力コントロールと同じものだ。だから、さっき、リュウメイの体からユラユラと魔力が漏れてたのも頷ける。


 ただ、この『龍の息吹』による『体内魔力の循環スピード』はイグナスやガスたちよりも遥かに速かった。その速さは、俺とそう変わらないくらいだ。


「嘘だろ⋯⋯。まさか、俺と同じレベルの『循環スピード』で魔力をコントロールできる奴が同級生にいるなんて⋯⋯。これは大きな誤算だったわ」


 いや、ホントに。ていうか、


「ぶっちゃけ、どんな奴が来ようと同級生に負けることはないだろう」と高を括ってました。


「むしろ楽勝だろう」と調子こいてました。


 いや、ホント、ごめんなさい。


 誰に謝っているのかわからんが、とにかく超恥ずいっ!


 そんな調子に乗っていた大会前の自分を殴ってやりたいです!


 などと、自分責め・恥辱まみれで脳内悶絶していると、


「どんどん⋯⋯⋯⋯行くよ?」


 ドガガガガガガガガガガガガ⋯⋯!!!!!!!!


 そんなアホなことを考えている俺に、遠慮のないリュウメイの拳や蹴りが襲ってくる。


「うぐ! かはっ!?」


 俺は、何発か良いものを貰いながらも『魔力循環スピード』をさらに引き上げ対処する。しかし、それでも完全には避けきれなかった。


 ズザザザザザザザザザザザザザザ⋯⋯!!!!!


 俺はリュウメイの攻撃の勢いのまま、舞台外の壁近くまで体を追いやられた。


「どうかな、カイト・シュタイナー? 今の僕はどういう評価になっているかな?」


 そう言って、リュウメイが余裕の笑みをこぼす。


 カイトはそんなリュウメイに体勢を立て直すと返事をかえした。


「そうだな⋯⋯。お前の評価、上方修正するわ。んで、結論だが、お前の強さは⋯⋯⋯⋯今の時点の俺・・・・・・と同じくらいの強さだな」

「っ!? 今の時点の・・・・・⋯⋯?」

「リュウメイ・ヤマト⋯⋯お前強いよ、マジで。正直、このクラス編成トーナメントで使うことはないと思っていたが、どうやらそうも言ってられないようだな⋯⋯」

「な、何を⋯⋯言って⋯⋯」

「俺の強さは⋯⋯『カイト式魔力コントロール』はこれで終わりじゃない・・・・・・。まあ、お前に『カイト式魔力コントロール』と言ってもわからないだろうが、簡単に言うとお前の『龍の息吹』と同じような魔力増幅法を俺も自分で編み出して使っているんだが⋯⋯」

「何だとっ!?『龍の息吹』と同じ魔力増幅法⋯⋯? バ、バカな⋯⋯」

「そうだ。よく見ろよ。これが俺の⋯⋯いまの・・・『カイト式魔力コントロール』のMAXだ!」


 ドン⋯⋯!


「ぐぅぅぅ⋯⋯っ?!」


 カイトは体内の魔力循環スピードを一気にMAXまで加速。すると、カイトの体からリュウメイと同じようにユラユラと蜃気楼のような魔力が漏れ出て、カイトの体周りを揺らしていた。


 ビリビリビリ⋯⋯。


「た、確かにっ! これは、僕の『龍の息吹』と同じような⋯⋯魔力増幅法。し、信じられない⋯⋯ヤマト皇国の皇族以外でそれを使いこなす⋯⋯それどころか自力で編み出す・・・・・・・だなんて。しかも、そのカイトのMAXの魔力循環スピードは、僕のとほぼ一緒か上⋯⋯」


 リュウメイは、カイトの魔力放出の威圧に弾き飛ばされないよう踏ん張りながら、カイトの魔力増幅法、そして、そのMAXの魔力循環スピードに衝撃を受けていた。


 しかし、カイトの話はこれで終わりではなかった・・・・・・・・・・・・

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