第111話111「決勝トーナメント準々決勝(4)」



「ガフっ!⋯⋯グフっ!⋯⋯」


 初め、互角のように見えた二人の接近戦だったが時間が経つにつれ、レイアが一方的に殴られる展開となっていた。


「くっ!?」


 さすがに分が悪いと判断し、リュウメイから離れるレイア。


「わかった? ボクが君を圧倒しているってこと?」

「⋯⋯ああ、そうだな」


 そう。最初、接近戦が互角だったのはリュウメイがワザと・・・レイアに合わせていただけであった。そして、リュウメイが徐々にスピードを上げていくと時間が経つにつれ、そのスピードにレイアはついていけず⋯⋯⋯⋯というのが現実だった。


「ただ誤解しないでほしいのは、全員がボクと同じ強さじゃないってこと。ウキョウは確かに強いけどレイア姫ほど強くはないから⋯⋯たぶん。とは言っても、ヤマト皇国の同年代ではウキョウは圧倒的強さを誇るから、レイア姫はもちろんだけど、試合とはいえ、ウキョウを倒した、あのイグナス・カスティーノという生徒もすごいよ」


 リュウメイは、レイアやイグナスを『評価する』という⋯⋯いわゆる『褒める意味』でレイアに言葉をかけたつもりだった。しかし、


「フン。やっぱ、あんた、だいぶ私たちのことを下に見ているようだな」

「そ、そんなこと、ないって⋯⋯」

「いや、わかるよ。たぶん、お前はヤマト皇国でも敵なしだったのだろう。そして、さらに、クラリオン王国ここに来てからは、ヤマト皇国と同様、いや、それ以上に敵なし状態だった。結果、さらに調子に乗っている⋯⋯⋯⋯私にはそう見えるよ」

「だ、だからっ!? 違うって言ってるじゃないかっ!!!!」


 リュウメイが今までになく、激しい感情を剥き出しにしてレイアに言葉をぶつけると、その豹変した態度に観客が戸惑う。


「フフ⋯⋯どうやら自分でもちょっとは自覚・・しているようだな?」

「こ、こいつ⋯⋯」


 リュウメイとは裏腹にレイアはニヤッと口角を上げて挑発。試合はリュウメイが圧倒しているものの、駆け引き・・・・においてはレイアが逆転していた。


「お前⋯⋯キライだ」

「フン。別に馴れ合う気など毛頭ない。ハァァァ⋯⋯」


 そう言うと、レイアが急激に魔力を高めていく。


「っ!? もの凄い魔力の高まり。何を⋯⋯」

「私の今出せる最大の技だ⋯⋯受け止めてみよ! 破拳・二ノ型『直列連撃破ちょくれつれんげきは』!!!!」

「は、早いっ!?」


 レイアがこれまでで最大の加速力でリュウメイに迫る。


「おおおおおおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」


 レイアはリュウメイに迫ると、破拳・一ノ型『直烈破ちょくれつは』の連続攻撃となる技、破拳・二ノ型『直列連撃破ちょくれつれんげきは』を放つ。


 ガガガガガガガガガガガ!!!!!!!


「⋯⋯くっ!?」


 リュウメイはレイアの掌底の連撃を捌いてはいるものの顔を歪める。


「い、如何に、貴様でも、このスピードには、完全に対応できていない、ようだ⋯⋯」

「な〜んちゃって!」

「⋯⋯え?」


 ガシっ! ガシっ!


「なぁっ?!」


 リュウメイはレイアの拳を捌くどころか、両手自体を掴み取った。


「確かに最初よりもかなり速かったけど、ボクにはそれでも・・・・遅いよ?」

「そ、そんな⋯⋯」

「ボクの勝ち⋯⋯⋯⋯でいいよね?」

「⋯⋯」


 ガク⋯⋯。


 勝負手として放った破拳・二ノ型『直列連撃破ちょくれつれんげきは』を完全に止められたレイア。その技の『代償』である肉体と魔力の消耗と、戦意喪失でその場に膝を落とす。


 そのレイアの姿を見たレフリーが『ダウン』と判断しテンカウントを開始。レイアが再び立ち上がることはなかった。


「勝者、リュウメイ・ヤマト選手!」

「「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」」


 ザワザワザワザワ⋯⋯。


 観客も生徒たちもレイアがここまで圧倒的・・・・・・・に負けるとは思っていなかったのか、動揺して誰も声を出せずにいた。



********************



「「レイア!」」


 試合終了後、フラつきながらも一人で立ち上がり帰るレイア。それを見たカイトとレコは急いでレイアの元へ駆け寄った。


「レイア姫様!」

「大丈夫か、レイア!」

「い、今は、一人に⋯⋯してくれ⋯⋯」

「「!?⋯⋯レイア」」


 そう言うと、レイアは控室へとよろめきながら歩いていった。


「カイト、レイア姫様⋯⋯」

「ああ。相当ショックを受けているんだろう。あれだけ圧倒的な差を見せつけられたんだからな」

「うん。あと、リュウメイ・ヤマト王太子が、レイア姫様をあれだけ子供扱いしたのがプライドを傷つけ、落ち込ませたんだと思う」

「リュウメイ・ヤマト⋯⋯か」

「どうなの?」

「え? どう⋯⋯て?」

「カイトだったら、リュウメイ・ヤマトあいつに勝てる?」

「レコ⋯⋯」


 レコが怒りを滲ませた顔で俺に詰め寄る。


「あいつの態度、見たでしょ?! あれはレイア姫様だけじゃなく、私たちクラリオンの生徒全体を舐めていたわ!」

「⋯⋯そうだね」

「悔しいじゃない! いきなり、クラリオンここにやってきて、あんな態度されちゃ! た、確かに実際に強いから⋯⋯仕方⋯⋯ないけど⋯⋯」

「レコ⋯⋯」

「でも! クラリオン私たちだって負けてない! 強いってところ、見せたいじゃない! だから、だから、その役目は⋯⋯⋯⋯カイト、あんたがやりなさいっ!!!!」

「ええっ!? ぼ、僕っ!!!!」

「そうよ! あんただって、だいたい『規格外』なんだから。あんたぐらいしかいないでしょ、あいつに勝てる可能性があるのは!」

「い、いや、僕、まだいまから試合で⋯⋯まだ準決勝に進むって決まったわけじゃ⋯⋯。そ、それに、イグナスも⋯⋯いるし⋯⋯」

「茶化さないで! あんたがズバ抜けて強いのはもうわかっているから! それに今のイグナス君ではまだあいつには勝てないわ。力不足なことくらい、カイトだって感じてるでしょ?」

「⋯⋯」

「準決勝、どういう対戦カードになるのかわからないけど⋯⋯でも、カイトがリュウメイ・ヤマトあいつを倒すの! いいっ?!」

「は、ははは、はいっ!!!!」

「よし! けっこう!」

「痛っ!」


 そう言って、レコがカイトの肩をバシッと叩いて舞台の観覧席へと戻っていった。


「⋯⋯リュウメイ・ヤマトか」


 カイトが一人、その場で考え込んでいると、


「お? カイト・シュタイナー!」

「! リュウメイ・ヤマト⋯⋯君」


 舞台からリュウメイ・ヤマトが入ってきた。

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