第63話063「魔力特訓(3)」
「もしかして、俺の『闇歴史』ともいうべき、あの
俺はひとり言を呟きながら、思考の海へとダイブした。
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俺は、前世で三十代のときに
俺は小さい頃⋯⋯小学三年生から中学一年生あたりまで、親や友人にバレないよう、一人こっそりと『マンガ』を描いては、その『自分の描いたマンガを自分で読む』ということをやっていた。
というのも、今では当たり前のように、WEB環境で誰もが『自分の描いたマンガを投稿できるサイト』があるので、子供から大人まで『自分の描いた作品を他の人に読んでもらえる環境』があるが、小学生だった三十年前当時はそんなネット環境は当然ないし、また『マンガを描く』という趣味を他の人に知られるのをかなり恐れていた時代でもあった。
なので、俺は自分の作品を他の人に見せることもないまま、そのマンガ制作の趣味を中学一年で幕を降ろすこととなる。
しかし、それから二十年以上経った三十歳のある日——俺は再び『マンガ制作』に挑むこととなる。理由はもちろん、描いたマンガをWEBで人に見せる環境があったからだ。
ぶっちゃけ、ほぼニート状態だった俺は
しかし、それから二年ほど続けていたマンガ制作も突然、終わりを迎えることとなる。理由は、想像以上に自分の絵のレベルが理想とかけ離れていた為だ。
自分でいうのも何だが、そこそこ描けている自信はあった。⋯⋯が、それでも『自分が求める絵のレベル』には到底無かった。
まあ、そんなの「ただの言い訳」であることはわかっていたが、それでも、その自分の画力の無さに絶望し、俺は筆を折った。
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そんな、『黒歴史』の一つである俺の『マンガ制作』というかつての趣味。これを活かして、みんなの『体内の魔力循環のイメージ』を伝えられないだろうか?
つまり⋯⋯⋯⋯『体内で魔力を循環させて魔力を引き出す』という俺の持つイメージを、マンガの描写で表現すればみんなにも伝わるのでは?
試してみる価値はあるっ!
そう結論付けた俺は、早速行動を開始。まずは、みんなに今日は解散してもらい、それから三日間特訓は休みであることと、俺が三日間学校を休むことを伝える。
「というわけで、次の集合は四日後とします。では解散っ!」
そう言うと俺は、皆が動揺しザワつく中を気にせず飛び出していき、急いで街に出て紙とペンとインクを買って寮の部屋に戻り、そのまま引き籠った。
『異世界ヒキニート生活』の始まりである。
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【舎弟のみなさんside】
「お、おい、カイト!」
カイトがいきなり、考え込み始め固まったかと思ったら、次には「というわけで、次の集合は四日後とします。では解散っ!」などと言って、俺たちの「なんだよ、いきなり?!」「どゆこと?」といった声には全く耳を傾けず、さっさとどこかへ走り去った。
「お、おい、ザック! どういうことだよ? カイトがいきなり出て行ったが何があったんだ?」
「え、え〜と⋯⋯」
ガス様が俺にカイトの突然の奇行について質問してくる。すると、
「はんっ! 大方、ロクでもないことでも考えついたんだろ? よくあることだから気にすんな、ガス!」
イグナスが俺に代わって、ガス様に説明をしてくれた。
「なんだ、なんだ? 突然、カイトの奴、飛び出していったぞ?!」
「ふむ。『思い当たる
「ま、まあ、そうですね。カイトの考えは俺らにもよくわからないですし、行動はいつも突然なんで⋯⋯はは」
俺は、苦笑しながらカート様とディーノ様に説明をする。それにしても、本当にディーノ様はカイトのことをよく見ている。凄い洞察力だ。
「それじゃー、どうするんだ?」
「とりあえず、カイトが言っていたように四日後、またこの場所に集合しましょう。それまでは、とりあえず各々『自主練』⋯⋯ということで」
「ま、そういうこった。はい、解散、解散⋯⋯」
そう言って、俺はイグナスと一緒に寮へと戻る。
「まあ、ザックがそう言うなら解散とするか。おい、お前ら行くぞ」
「はい、ガス様」
「ウッス!」
ガス様たちもまた、寮へと戻るということで後ろからついてきた。こうして、魔力特訓の第一日目が終了した。
次の日、宣言通りカイトは学校を欠席。さらに、それから三日間、本当に予告どおり学校を休みこととなる。魔法授業でレコ先生がちょっとキレてた。
——そして、四日後
カイトは学校に登校してきたが、だいぶ
お昼休み、カイトは「俺、午後の授業は休むから」と言ってきた。だいぶ具合が悪い様子だったので、「今日、特訓場に集まるのはやめる?」と聞いたが、「だ、大丈夫。締め切りは絶対に守る! 予定どおり、放課後、集合だ」などと、よくわからないコメントを残し、姿を消した。
——放課後
森の秘密特訓場に皆集まっていたが、カイトはまだ来ていなかった。俺は「今朝、具合悪そうだったから部屋で寝ているのかも⋯⋯。カイトの部屋に様子を見に行っていきます」と言って走り出そうとしたとき、
「おーい、みんなー! 完成したぞぉぉぉーーーっ!!!!」
と、お昼の時にやつれていた同一人物とは思えないほど、ハイテンションなカイトが
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