第64話064「魔力特訓(4)」
「皆様、お待たせ致しました、お待たせし過ぎたのかもしれませんっ! ナイスですね〜!」
カイトは、だいぶ
「皆の者、刮目せよ! これが俺の秘策⋯⋯題して『マンガでイメージ膨らませればいいじゃない作戦』だっ!」
と言って、カイトはこの四日間のヒキニート生活で描き下ろした『魔力循環のハウツーマンガ』を披露した。
「「「「「⋯⋯は?」」」」」
YES! ノーリアクション!
********************
「えーと、つまりだね〜⋯⋯諸君」
そう言って、俺は皆にゆっくりと丁寧に『マンガ』の説明をした。
「⋯⋯つまり、それは『魔力循環のイメージを絵にした』ってこと?」
「そういうこと。ただし、
「?」
「一枚の紙に『コマ』というものでいくつも区切りがあってだね、そのコマの中には『絵』と、登場人物の言葉が『セリフ』というもので描かれている。そして、そのコマの絵とセリフを読み進めていくと、あら不思議、頭の中でその絵とセリフが臨場感を持って動きだす。そんな没入感を味わえば、魔力循環のイメージが沸くはずなのである!」
カイトは鼻息荒く捲し立てる。
「とりあえず、『百聞は一見にしかず』だ! まずは、今回の魔力特訓そもそもの主役である、イグナスから読んでみてくれ!」
「お、おう、わかった。とりあえず、読むだけなら⋯⋯」
そう言って、イグナスは戸惑いながらもカイトから『マンガ』を受け取り、おそるおそる読み始めた。
ちなみに、今回俺が描いた『魔力循環のハウツーマンガ』というのは、20ページ程度のもので、内容はただ魔力循環の手順を絵にしたのではなく、一応、『師匠』と『弟子』的な登場人物を出して『修行シーン』を描いた。
ちなみに、その『修行シーン』とは『魔力循環の修行』となっており、師匠が主人公に魔力循環を熱意を持って教えると、その師匠の熱量に触発され、遂に魔力循環が成功する⋯⋯というストーリーを描いた。
そして、その師匠が主人公に教えている描写が、俺がみんなに説明していた『魔力循環のイメージ』となっている。
ちなみに、今回20ページと結構な枚数を描いたが、それは『物語性』を出せば、よりマンガに没入し、イメージしやすいだろうという狙いだ。
——三分後
「⋯⋯ありがとう、カイト」
読み終わったイグナスが、俺にマンガを渡した。
「どうだ、イグナス? イメージはできそうか?」
「⋯⋯師匠。俺は『闇の魔王バルザック』を倒すため、かならず師匠の魔力循環を成功させてみせますっ!」
「ん、んん〜?? イ、イグナスきゅん????」
「はぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜⋯⋯」
イグナスは俺の掛け声も無視して、目を閉じて何かを集中し始めた。ていうか『闇の魔法バルザック』て、マンガの悪玉のボスのことなんですけどぉ〜?
あ、あれ〜? イグナスって結構、
そんなイグナスの『
「お、おおおおおっ!!!! わかる! わかるぜ、師匠っ! これが⋯⋯これが魔力循環ってことかーーー!!!!」
「「「「「えぇっ!?」」」」」
どうやら、イグナスはマンガを読んで『魔力循環』を一発で習得したような発言をする。まさか、イグナスが嘘をつくことはないと思うが、一応俺は確認する。
「イ、イグナスきゅん? 今、魔力循環⋯⋯できているの?」
「ああ! カイトが言っていた魔力の球体から筋状に延ばして、下腹部、右足、右手、頭、左手、左足、下腹部と一周させて、今はその循環を維持させてる! す、すげー! カイトが言っていたことはこれか!」
イグナスが興奮しながら、俺に説明をする。どうやら本当にできているようだ。
「じゃ、じゃあ、イグナス。その循環の速度を上げてみてくれ」
「おう、わかった!」
イグナスは俺の指示どおり、速度を上げている様子。
「よし、じゃあ、その加速状態で⋯⋯そうだな、あのあたりにある大きな岩に向かって魔法を放ってみてくれ。あと魔法を打つときはその速度を増した『魔力の筋』を手に一気に収束して打ってみてくれ。とりあえず、最初は初級魔法で頼む」
「わかった! うぉぉぉぉ〜〜〜〜⋯⋯
イグナスの突き出した右手から無数の氷の矢が射出する。
ドガガガガガガガガガ!!!!!!
「「「「「な⋯⋯っ!?」」」」」
見ると、的にした大岩は破壊されることはないものの、無数の氷の矢が大岩をザクザク削り、硬そうな岩の表面がボロボロになっていた。
「⋯⋯へ? 今の下級魔法⋯⋯だよな?」
「な、なんだ、今のは? あんなの
「す、すごい⋯⋯すごいよ、イグナス」
「⋯⋯ふっ! やるじゃねーか、イグナス! 習得しやがったぜ、この野郎ぉぉぉ!!!!」
皆がイグナスの
「痛っ! 痛ててて!! ガ、ガス! ちっとは手加減しろ、このクソゴリラっ!!!!」
「はっはっはっ! うるせー! 俺様より先に習得しやがって! なんだ、あの馬鹿げた
そして、他の三人もイグナスの元に行き、イグナスを囲みながら輪になって『カイト式魔力コントロール』を習得したことを自分のことのように喜び、賞賛した。
「あ、あのぉ〜、一応、俺もマンガを描いて、その、すごく頑張ったんだけどな〜。お、俺にもなんか、こう⋯⋯『すげーな、カイト!』的なものをだね⋯⋯」
カイトの声は、青春映画のような煌々と光を放つ五人の輪の中に届くことはなかった。
チクショー!!!!(小梅太夫)
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