美しいもの

「『死』というものは美しいですね」

「え……っ?」


 最初、わたしはなにを言われたのかわからなかった。

 目の前の彼はうっとりと深い青の瞳を細めて、


「ほら、その栞だよ」


 と、わたしの手元を指差した。

 すらりとした病的に白い指先は、押し花の栞を指している。

 わたしは思わずその栞を見つめる。

 彼の声が、まるで独り言のように静かに響く。


「自らの命が最も輝く瞬間、意志に反しているのに止める間もなく、時を……命を止められる。」

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