第3話 チャイナドレスムーブメント
あたしは目が覚めた時にあたし自身の臓物が床にぶち撒かれていることを知った。
あたしの鎖骨あたりから、腹、下腹部に掛けて、パックリと鋭利な物を用いて裂かれていた。
なんとかしないと。
あたしは血を流しながら這い回り、リビングを通過、自室の引き出しから裁縫セットを取り出して、パックリ裂かれた場所を、丁寧に縫う。
昔から、裁縫には自信があったから。
縫い終わりチャイナドレスを着て、書道することにした。
やはり、臓物が床にぶち撒かれているのは、気分が良くない出来事だし、気分を、変えたかった。
白い紙に、
『臓物が全部なくてもこうして立派にやれてるからあたしは凄い。』
と、なかなか、芸術性のある書体で、書くことができた。
チャイナドレスは、彼に貰った。
井上三木安って人。
政治家男性で、75歳。
彼が、書道するときはチャイナドレスが一番いいと、セックスの最中に、教えてくれた。
一度は、頭髪の欠如したおっさんの中のおっさんである井上三木安と、魚顔のあたし、両方ともチャイナドレスを着て、激しい、濃厚なセックスをした時もある。
「あっ、あたし、もうイクわよ!射精だわよ!」
井上三木安は、チャイナドレス姿で、毛深い下半身を丸出しにし、黒ずんだチンポコを、あたしのマンコに入れて、泣き叫びながら、射精していた。
「僕はね、男の秘書65歳とも、お互いにチャイナドレスを着てセックスしますよ、それが、凄くいいんだよね。
男の秘書65歳の毛深いケツ穴が、チャイナドレスの隙間から、ヒクヒクしているのが見えるわけで、僕はそのエロティクに、ほんと夢中になったよ。」
そう意外にも爽やかな笑顔を浮かべながら、井上三木安75歳は言っていた。
だが、その後、マクドナルドのクーポン券が、ポケットに入れていたはずがなくて、通行人のひ弱そうな痩せたスーツの男性に対して、胸ぐら掴んで、
「てめえが盗んだのか!この下等国民が!てめえは自分の糞を喰い、糞をして、その糞をまた喰い、また糞をして、それまたその糞を喰い、永遠に糞だけで生きればいいだろうが!」
と、怒鳴りつけていた。
このご時世に不謹慎かも知れないが、あたしが床にぶち撒けられた、あたし自身の臓物のことを職場で話したら、明日バーベキューする?魚顔ちゃんのホルモン、もったいないから、みんなで食べようよ、と言われた。
あたしも、あたし自身の臓物が、あのまま床で腐っていくのは忍びないことだと思っていたし、バーベキューには賛成した。
でも、自粛至上主義みたいな人に、通り魔殺人とかされたら、凄く嫌かな、という気がした。
通り魔は怖い。
しかも、むさ苦しい、頭ボサボサ、無精髭の、小太りのおっさん通り魔は、チャイナドレスを着ていて。
手には切りとった血まみれの、自身のチンポコを、持っていて。
「セックスすんな!セックスは超濃厚接触!俺はセックスを30年以上自粛!」
そんな叫び声が、閑静な住宅街に突然響いたら怖いから、止めて欲しい。
切なる願いである。
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