第2話 のち
苛立つ、イラ立つ、いらだつ
雨道を般若の様な形相で突っ切っていく女性が1人。
近年は異常気象もあり時期が読めなくなっているが、今年の仙台はこれからが梅雨本番。そんなこともあって道ゆく人々は傘をさしている。そんな中で傘をささずに全力で突っ切っていくのだから目立つ。しかし彼女が注目を集めているのは別の理由だろう。
疾走するフォームのあまりの綺麗さに、一瞬時が止まったかのように感じて目が離せないのだ。しかしながら、至って非科学的ではあるが血液のように赤黒い怒りのオーラが滲み出ている。通行人各位は一瞬の感動から覚め、若干の恐怖を感じながら彼女に道を明け渡す。
そんなこんなで、彼氏の家から怒り心頭で飛び出してきた彼女だったが、しばらく走ると怒りも収まってきていた。
幸い長いジーンズに半袖の白Tシャツという軽装だったために、濡れてもそこまで重くはならない。むしろ疾走中に雨は上がり、晴れていたこともあり衣服は乾き始めていた。
「アイスティーください」
思い立ったが吉日とばかりに、近くのカフェに入って注文する。走り終わってから入店まで10秒。真隣にカフェがあったとしても早すぎる切り替えは彼女の長所であった。今回唯一の失敗は
「寒くなってきたな」
冷房が効いている店内は最初の5分しか味方になってくれなかった。先ほどまで湿気の中にいて、5キロも走ってきたため迷いなく入店したが、汗はかいているし雨で服は若干濡れている。体も頭も一気に冷えた。さらに目の前にあるアイスティーを見て、つい口に出してしまったのだ。辛抱たまらず、カフェオレを注文し体を温める。
一息ついて、思い返す。
今回の全力疾走、ことの発端は5日前に遡る。
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