曇り のち 嵐

@hihumi_coffee

第1話 嵐

「ペンタゴン知らないの?」

「五角形のこと?」


他愛もない会話をしていた。

最近君が苛立っていることは感じていた。

だからこそ、少しでも空気を和らげようと思っただけだったのだ。


「五角形?違うよ、クイズ番組の名前。でも、君の歳だと見た事ないのか。」


他意はなかった。バカにしたわけでも、マウントを取ったわけでもない。

振り返るとそこには般若が立っていた。


間違えた。彼女が立っていた。


「お前のそーゆー気の抜けたところがむかつくんだよ!」

と怒鳴って出て行ってしまった。


黒い傘を手に取り玄関を飛び出る。

肌に纏わりつく様な湿気を切り走る。

彼女の姿は追いきれない。


呆然と立ち尽くし、そうだったと思い出す。

災害はいつだって不意に現れて全てを瞬く間に崩壊へと導く。

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