3「じゃあ、ラブホでも行きますか?①」


「先輩。私と……シたいんですか?」


「俺は、死にたいって言ったの!」


「あら、おかしいわね。空耳でしょうか……」


「難聴じゃないのか?」


「まさかぁ、私、聴力Aだし!」


「Aってなんだよ……視力じゃないんだから」


「——まぁまぁ、面倒なことはそこまでで……ほら、行きますよ!」


「は、え——どこに!?」


「どこって……ラブホに決まってるじゃないですか?」


 なぜ、俺は今、目の前に立っているヤリたがり黒髪天使系後輩と話をしているかというと数時間前まで遡る。



 まあでも……このパツパツEカップ(推定)を揉みしだけるのなら絶対に行きたいな。








 どうやら俺と白瀬とは学部も一緒だったらしい。だから、あの日、あの屋上に来ていたのか――と辻褄は整った。


 神様のいたずらなのか、これが運命なのかは定かではないが……お天道様の考えることは中々予想できないな。


「先輩、講義ってどんな感じになってます?」


「あぁ~~、確か1コマ目と3コマ目に入ってるな。今日は結構楽な日だから俺は割かし暇だぞ?」


「そうなんですね、私も1コマ目と3コマ目と4コマ目に入ってます!」


「も、の使い方があっているのかは知らんがそうか……なら、4コマ目は適当に図書館にでも行って待っていればいいか……」


「うお、先輩って案外、優しいんですね」


「なんだ、案外って? 俺はいつでも優しいぞ?」


「優しい人が自殺とか考えたりします?」


「するな。ソースは俺。——ていうか、後。公共の場で自殺とか言うな。周りの人がビビるだろ」


「なんて根拠のないソース……まぁ、それも一理ありますね」


「おう、頼む」


「先輩の頼みならいいですよ~~」



 そして俺たちはそれぞれの学科の講義室まで向かった。


 



 1時間半を適当に寝て過ごした俺は彼女の学科の講義室や研究室が多い3階の廊下で待っていた。


「ふぅ……力学はやっぱり簡単だな」


 寒い廊下に響く俺の声。


 陰キャラ気質の学生が集まる工学部ではあるあるだが、異様に人が少ない。そのため、空き教室を独占しやすかったり、入って来た陽キャ女子へ軽蔑の目を向けることが多かったりもする。


 それに、俺も旧帝国大学を目指していた身だ。一年生を二回繰り返したとはいえ、得意分野である物理や数学はそこら辺の人間よりもできる自信がある。主に、物理に関しては。去年はやる気がなくてそうなってしまっただけだ。


「はぁ……」


 溜息を溢すと奥の方から走ってくる一人の影。


 小さく、そして髪のシルエットまでくっきりと見えている所から把握するに白瀬で間違いないだろう。


「せんぱーーい! 遅れちゃいました~~!」


「おお、遅かったな。どうしたんだ?」


「いやぁ、それがですね。教授が特殊相対性理論のお話なのに急に熱くなってアインシュタインの人生について話しだしちゃって……彼はただの公務員だったんだ~~とか言ってきて、全く勘弁してほしいです!」


「まあ、そういうもの好きな教授もいるからな」


 にしても、あの天才。

 アルベルト・アインシュタインが普通の公務員とは知りなんだ。世の中にはやはり、天才というものがいるようだ。


「それにしてもですよぉ……私、別に科学者とかどうでもいいですし」


「ははっ、百里あるな」


「ですよね! これがラプラスの悪魔とかシュレディンガーの猫のようなオカルティックな話なら耳をかっぽじりながら聞きますけど……」


「そうか……俺も嫌いじゃないから今度聞いてやるよ」


「ほんとですか! やったです!」


「おう。それじゃあまずは、学食いくか」


「はいっ‼‼」


 嬉しそうに笑った彼女。

 返事と共に10㎝ほど跳躍したおかげで豊満な胸が上下にたぷんっと音を立てながら揺れた。


 というか、揺らしていた。


 結構、含んだ笑みだったし。まぁ、俺からしてみれば万々歳だ。


 おっぱい最高。おっぱい最強。

 死ぬときはやっぱりおっぱいの谷間で溺死だな。


 なんなら乳房をおしゃぶりしてもいいよ券付きで。


「そう言えば、先輩」


「ん?」


「顔、少し赤いですけどどうかしましたか?」


「えっ⁉ あ、あぁ……まあ、ちょっとな」


「……そうですか、嫌なら聞きませんけど……でも、先輩」


「なんだよ?」


「顔が赤い先輩って案外、可愛いですねっ」


「————そうか、そらどうも」


「あ、赤くなった」


「なってない‼‼」

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