おもちゃの国 城門 其ノ二


 あの絶壁を登り上がり、どうやらこの城門まで辿り着けた者がいる様だ。 やって来るとは予想したが、到達までの時間が思った以上に早かった。

 私が戻ってすぐ、城門の防御システムを作動させておいて良かった。 今は対処用ビームが城門の扉正面と両サイドから、その不埒者の額を狙っているだろう。


 この対処用ビーム。 物体を裏表うらうえにする光機で、内側と化した表はかたちを留めようと内部へ集積し熱化させ、表側と成った内在物は無限に膨張し冷却し、遂には弾け消失する、といった空恐ろしい武器だ。

 かたちが消し飛んだあとの残識ざんしき(人間世界では魂・霊魂と呼ぶらしいが)は、地面から伸び出たダクトに吸い込まれ人間世界へと強制排出される。 ダクトは城門の外から、表玄関への通路まで要所要所に吸込み口を出させてあって、物体を持たない残識ざんしきのみならば吸い込んでしまい此処へ辿り着くことは無い。 対処用ビームは飽くまでも、物体を持つものを排除する光機である。


 セキュリティロボットにバグが発生して、城門内に向けこれが誤発された折、偶然居合わせて私は浴びてしまった。

 国内であったから散ったしきは集め寄せられ元に戻して貰えたが、外であればどうなった事か。

 どちらにせよ、あの悪夢の如き、悪寒のする恐怖は二度と体感したくないし、知った侵入者も再び浴びようとしない筈だ。


 今回の不埒者は誤って迷い込んだ者で無いことは確かだが、一応は相手に戦意の有無を確かめなければいけない。 何事も確認した上で結論を出すという言行は大切である。

 形式上ではあるが、その役目は執事ロボットに任される。


 インターホン親端末機から相手の様子を確認し

「何の御用でしょうか?  本日は何分にも立て込んでおりますのでお引き取り下さいますようお願い致します。 又、厳重に警備しておりますので、騒ぎ立てられません様ご忠告致します。」

と穏やかに告げる。

 しかし当の不埒者。 そんなことは全く耳に入らないのか、何らかの武器を使い外側から闇雲に城門を破壊しようとしている。

 これは明らかな先制攻撃。 交戦するしかない。


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