おもちゃの国 城門 其ノ壱


 『外敵侵入に備えよ』 その概要は、王からのお告げが各々の頭脳部分に聞こえていたので理解している。

 ここの国の者達は、肝心な要項は以心伝心であるから。


 侵入者を阻む要の城門。

 城門と云っても厚い金属の扉が一つ有るのみ。 城門を入り、その直ぐ前には憩い目的にも使えるエントランスがあり、いつもの此処は至って無防備だ。


 誰に知られず何者とも争わずに済んできたから―――


 此処は外の世界との国交を絶っている。

 人間世界への表玄関は、交流を図るためにあるのでは無い。 王が新たな知識を得たい場合、人間世界を散策しに出掛けるので、都合上設置されたものだ。


 外の事を知って良いのは王だけで他の者は誰一人、知ろうとしない。 言葉然り、歴史然り、物事の道理や原理等の知識然り、知って良いことは王からお告げによって報せられる。

 であるからして、この決まりに誰も疑問を持つ必要が無い。


 表玄関を出入りするのは王と護衛役。 その護衛役も、大抵は例の御庭番のじいが請け負っていて、秘密保持を理由に別の者には譲ろうとしない。 外に出たがる者もいないので、取り敢えずは争奪戦には発展しない。

 それだけ国交断絶は徹底している、ということである。


 それでも知ってか知らずか不用意に侵入しようとする者もいる。

 こちらはあちらへの不可侵を固く守っているというのに、失礼千万なのである。

 そんな不埒者に平和を脅かされては堪らない。 可哀相だが最先端の防衛システムにより瞬時に弾けて煙へと変わって貰う。

 そんなこんなだから住人は皆、毎日無邪気でいられる。

 その為の此処、それが望みで王が造られたこの国、この世界。


 この世界のような所が他にも点在するらしい。

 それぞれ、その国の王が創るものらしい。

 人間世界も、その王が創ったものなのだろう。

 そして、ひとりの王が選び創ったのが〝 おもちゃの国 〟なのだ、と。

 そう、我らが王は、おもちゃでは無い。


 見た目は至極、おもちゃチックな王様だが―――



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