人間世界側 表玄関 其ノ五
姿を戻し階段に足を掛けたとき、予想通り二つの何者かが横を素通りし、通路へ続く階段を上へ奥へと過ぎて行く。 同時に外で立っていた人間の気配は消失し、それ分の重量の物体が玄関先の石段にぶつかり弾み鈍い音がした。
どちらかの頭蓋骨が割れた……可哀想に――
横を通り過ぎたのは何なのか? 霊魂なら追い払った経験から知っているが、空気の流れからそれに近いが質量を持つようだ。 それに微かだが霊魂には無い筈の温度も感じたが、魂たましいらしきもには感じ取れなかった。 エネルギー体としてのみで活動しているということか?
階段を三段飛ばしに駆け上がると、無形から暗い物体に変化し始めてた二個は既に20メートル程上の岩肌をロッククライミングしている。
「初めてにしては結構要領得ているじゃ無いの。実体化しての攻略法をいったい何処で入手したのか……。でも猿真似は猿にも出来る、ってね。」
早速、闘志士に実態化する。 チューブトップにショートパンツ、鎖帷子代わりのチェーンアクセ、これに孫悟空風ショートコートを纏う。
闘う時はこのスタイルと決めている。
私は舌舐めずりして、大きめの出っ張りに両手を掛けた。
掌を起伏の凸凹に吸い付かせる様に差し入れる。 そこへ少し力を入れさせると、体を面白いほど上へと持ち上げる。
登り進ませるのは指先と腕の力の連携作業。 つま先は体が左右にぶれない様、
直ぐに物体に追いつき追い越して、50メートル程先回りをして、狙いを定め爪先の当たる辺りを蹴り崩し、石のつぶてを落とし降らす。
それは数を増やし、自分達より大きいものをも巻き込んで、暗い物体の頭部分に当たり、顔部分を跳ね、岩を掴む指先部分に集中して寄ってゆき、物体の皮を肉を骨を削いでゆく。 遂には声にならない悲鳴をあげさせて、岩肌から異物を引き剥がす。
「あの高さからじゃペシャンコにまでは為らないか。 残念。」
あれに加え、直ぐにも継いの手が押し寄せるに相違ない。
急ぎ城へ戻り、戦えない住人は隠し部屋へ誘導しつつ、近衛兵の樫人形達、門番のセキュリティロボット達と作戦を確認しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます