第42話 義姉さんと私

 海水浴を楽しみ帰宅した私の前に、都会で大学生をしている義姉おねえさんこと、佐藤可憐さんが現れました。


「(※英)竜也のお姉さん?」

『(※英)ええ。そうよ。うちのママからシェリーの事は聞いてたけど、まさかこんなに綺麗な女性ひとだなんて思わなかったわ。』


「じゃあ…。イングリッシュで話さなくても、大丈夫ね」

『あら、気を使わなくても良いのよ?』


 義姉おねえさんとは初めての対面でしたが、竜也ママにどことなく似ている顔立ちではあるものの、竜也とも共通している部分もあり、それが私にとっての親近感を漂わせていました。

 言葉使いも大学でしっかり学んでいるようで、ほぼ独学で習得した竜也よりもハキハキと聞き取り易い英語を話している印象でした。


(どちらかというと、ってイメージね。)


 そんな事を考えているうちに、義姉おねえさんはどんどん私の距離を詰めて、急に背後に回ったかと思えば、竜也ママ同様に私の胸を後ろから鷲掴みにしてきました。


「ん~~。お…おねえ…さん?何、しますか。」

『いい~じゃな~い。同性なんだし、それにぃ興味ありありなのよねぇ。タツの恋人なんでしょう?って事は、義妹いもうとってことなんだし』


 そう言って義姉おねえさんは、私の胸を触り続けます。


「お…、おねえさんは…。そういう趣味の…方、なのですか?」


 私の質問に、少し考えている義姉おねえさん。


『ん~まぁ男の方が好きよ?でも、女の子同士でも問題無し!特にシェリーちゃんみたいな可愛い~は特に…ね』


『いい加減にしろよ、姉さん。』


 丁度良い場面で、竜也が私の部屋にやってきました。


『あらぁ…残念ねぇ』


 義姉おねえさんはそう言って私の胸から一瞬は手を離しましたが、今度は揉まないに程度にさわさわと触ってきました。


『ったく、相変わらずなんだな。』

『ちょ…、怒んないでよ~、スキンシップよ。女性同士のね。』

『はぁ…。シェリー、悪りぃ、姉さんはいつも、お盆には帰ってくるんだ。忘れてたよ』


「…お…ぼん?」


 初めて聞くワードに、私は胸を触られていた事も忘れてキョトンとしてしまいました。後から説明された事だけど、日本のと言う風習は、故人を偲び年に特定の日程で先祖の墓を尋ねる事らしく、特に夏のお盆は一般企業が長期休業になるほどなんだそう。


 そんな風習はアメリカには無く、私自身も親族の墓を訪れた事はほとんどありませんでした。


『それよりも!姉さん。そろそろシェリーから離れてくれないか?』


『もう、スキンシップって言ったでしょう?』


『いいや、姉さんは人だから嫌なんだよ。』


(ええええーーー!?)


 竜也の話が本当なら、義姉おねえさんは女性好み嗜好があると言う事を意味しています。


 竜也は凄い剣幕で自分の姉を私から引き剥がすと、何故か今度は竜也自身が私の胸を触って来ました。


「ああーん。た、竜也!?」


 姉弟と立て続けに触れられた私の胸は、自分でも思ってた以上に敏感になっていました。


『あ!ご、ごめん。シェリー。』


 私の反応に、竜也はすぐに胸から手を離して、その代わりに両手で包み込むような形になりました。


『こら、タツぅ?女の子の胸をそんなに乱暴に扱わないでよ。』

『だっ…誰のせいだよ。ってか、姉さんも揉んでたじゃねーか。』

『私は良いのよ。それにシェリーちゃんかわいいし。』


「あ、あのー…。」


 私の介入する余地も無く、二人の問答はヒートアップしていきました。その後姉弟の争いは、私が救援を求めたママさんの一喝によって終結しました。

 

『すいませんでした…。』

「竜也、義姉おねえさん。大丈夫?」


 ママさんの見事な一撃を脳天に受けて、二人共私に深々と謝罪してきました。


(ママさんが家庭で一番強いのは、日本もアメリカも変わらないのね…。)


 勿論、二人共悪気があってやっているわけではなく、義姉おねえさんは初めて出会った異国人の妹(候補)だから、スキンシップのつもりで接触した事も再三話していましたので、きっと本心なのでしょう。


『じゃあ、私はどうスキンシップを取れば良いのさぁ』


 頭をさすりながら、義姉おねえさんはママさんに質問しています。ただ、私もについては心当たりがありました。


(そういえば、私も葵とスキンシップを図った時、お風呂に誘っちゃったなぁ…。)


 と、私も当時を振り返っていましたが、それと同時にママさんも私の胸を触っていた事を思い出しました。


(あ…、ママさんと義姉おねえさん…、やっぱり親子だけに考え方が似ているのか…。)


 そう考えたら、私の行動は決まっていました。


「あの…、よければ…、一緒に…お風呂、入りませんか?」

『え?ええええ~~~???』


 私の一言に、義姉おねえさんは飛び上がるように驚いた様子でした。


『で…でもでもでも…、アメリカ人ってお風呂とか、他人と一緒に入ったりしないんでしょう?』

「イエス、私、日本の事、いっぱい調べて、えっと…裸のツキアイ?聞いた時、ちょっと嫌でした…。は…恥ずかしいのです。けれど、今は、日本のお風呂、楽しんでます。大丈夫…です。」


『じゃあ、ママ、あそこ行こうよ。秘境の温泉!あ、シェリーちゃん分かる?ジャパニーズ スパってやつ!』

「ジャパニーズ…スパ?」


 スパ。つまり温泉です。私も聞いたことはありましたが、日本に来て一度も行ったことはありませんでした。


『え~~??あそこ道狭いし、駐車場も止めるの苦手なのよねぇ…。』

『ママ、お願い。ね』


 義姉おねえさんは何度もママさんに頭を下げてその意思を曲げませんでした。ママさんは娘のためを想ってか、渋々了承してくれました。

 ママさんは休暇があと1日しか無かったので、翌日の予定を急遽変更してくれて、4人で温泉へ向かう事になったのです。

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