第37話 夏休み、何して遊ぶ?

 夏休み。日本では春に始まって夏に一旦休校になるのが夏休み。アメリカでは進級、進学の季節と少しのズレが生じています。もちろん、アメリカと日本では授業内容が違うので、私が日本人クラスメイトよりも半年早く進学している利点はあまりありません。


『へぇ…アメリカって教科書が無いんですね』


「YES、授業は全部、教師がプリントアウトしてくる。参考したい本があれば、自分で買うか、図書室で見つけるか、する。」


『それ考えると、日本ってお金かかるよね。私達がお金出してるわじゃないけどさ』


 こんな話は時々出てくるもの。日本人は外国人との違いを知りたがるのか、私は良い参考人となります。


『ところで、シェリーは夏休みはどうするの?』

「ん~、アメリカ帰りたかったけど…。」


『わかるぅ。世界的にヤバいもんね。コロナとか』

「YES、アメリカの家族も全員、かかった。私も、日本に来る前に罹ったけれど、日本では大丈夫だった。」


『でも、美波さんもこないだ罹ったよね』

『ヤバいって、もうさ熱出るわ、咳出るわ。外出らんないわ』


「今年は日本で過ごす。家族にはアプリの動画通話で話せるし、問題無い」

『外国のスマホって日本でも使えるの?』


「No、通話はできない。けれどLINEやWhatsAppはWi-fiさえ繋がっていれば大丈夫。」

『Wi-fiってうちも使ってる~。ママにテストで満点取ったの見せて買ってもらったんだっけど、格安契約にしろとか…。家にいる時はWi-fi繋げとか、めっちゃうるさい』


『コンビニでも繋げられるし、いいよね』


『うち定額の電話し放題のやつ、長電話できるし最高だよ。』

『いや、LINEで十分じゃね?』


 日本人の高校生もスマートフォンの携帯率が高い。アメリカも携帯電話を持つ学生は多いけれど、その大半は電話をかけるわけではない。電話番号でメッセージを送り合う。理由は契約が従量制のため、長電話はそのまま電話料金に直結してしまうので、専らWi-fiでデータ通信を行うのが一般的なのです。


『アメリカの友人ともLINEするの?』

「No、アメリカではLINEを使ってる人がほとんどいない。他国からの留学生くらい?」


 私は日本に来る時に、日本の電話事情について調べたうえで、日本人が使用するLINEの存在を知り、そこからナツミを始めとした日本人と知り合うきっかけができましたが、本国の友人同士ではLINEを一切使用しません。

 では何を使っているか。それはWhatsAppです。まぁ日本人がLINEを使うのと同じです。竜也との連絡はLINEを使っています。アプリを使い分けることで、誤送信をすることがありません。


『へぇ~私、LINEなら世界中の人と友達になれると思ってた。だってシェリーも使ってるじゃない。』


「私は…えっと…。日本来る前、日本の事調べた。LINEの事知った」


 私はそう説明していると、葵が近づいてきて一言…。


『たっちゃんとお話するため…だよね。』


 この一言で、話の流れが止まってしまいました。


「あ…葵!?」


 振り向くと、葵は顔こそ笑顔でしたが、少し不気味な雰囲気も出ていました。すると話の流れは一気に、おかしな方向に向かっていきました。


『そういえばシェリー、佐藤さんと仲良いよね。付き合ってるの?』


「つ…付き合ってる…とか…あ、いや…」

『シェリー正直に言っちゃえばいいじゃん。どうせそのうちバレるんだし。』


 葵はどんどん流れを大きくしていく。


『え?じゃあホントなの?だって佐藤さん女子に凄い人気だけど、全然相手にしないって感じだったから、好きな人いるんだな~って思ってた。』

『ねぇねぇいつから付き合ってるの!?』


「ああ…あ、そ…それは…。」


 まさか葵から秘密がバラされるとは思ってもいませんでした。教室中がざわつき始めて、私の周囲にいるクラスメイトは、ほぼ私の発言に耳を傾けている様子でした。中には話途中で私達の集団に駆け寄る人もいました。


「ああ、もう葵。それ…言わない約束。」

『葵、知ってたの?だって佐藤さんの事好きだったんでしょ?』

『そうだよぉ。たっちゃん、私にも秘密にしてたんだから。』


 そんな会話が展開されているのを察したのか、私達の元へ竜也が駆けつけました。


『なんだ葵、シェリーの事困らせてるのか?』

『だ…だって…たっちゃん最近、私の事…見てくれないし…』

『佐藤さん来たわぁ』

『素敵!これって三角関係って事だよね?』


 竜也はちょっと照れている様子でしたが、何とか落ち着こうとしているらしく大きく深呼吸をしました。


『あのな…。はぁ…、シェリー、言っちゃっていいか?』


 とは恐らくと察した私は、竜也の真面目な顔を信じて頷きました。


『シェリーが昔、心臓の病気だったのは、You Tubeを見ているのなら分かるよな』


 葵も含めた女子達は、もちろん知っている様子で中には頷く人もいました。


『彼女の心臓には、偶々ハワイで仕事中に交通事故にった、俺の父親おやじの心臓が適合して使われたんだ。』


『え~!?マジ?それ』

『凄いじゃん。え?じゃあシェリーってお父さんって事に?』


『まぁ…そうならねぇだろ…、まっそういった縁があってこっちに留学してるんだよ』


『おい、聞いたぞ?あん時、シェリーちゃんって偶然来たわけじゃなかったんだな』


 そう言って近づいて来たのは、2年前に竜也と一緒にいた友人で、高校生になっても同じクラスメイトになった翔さん。


『翔…聞いてたのか。』


『そりゃあ、お前が急に女子の方に行くから興味あるだろう?それより、シェリーちゃんの事、もっと聞かせろよ』


 なんだか、夏休みの話から逸れて、私絡みの暴露大会になっちゃったみたいです。

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