第36話 苦手の教科は国語なのです。
「う~~~。」
今日の放課後は、日本語の"漢字"と言う文字を練習しています。
「なんで、日本語ってこんなに、書かなきゃいけないの?」
『いや…なんでって俺も知らねぇよ…。日本人だし、当たり前に書いているからな』
英語もスペイン語も読み書きをマスターしている私ですが、日本語の書きは非常に難しいと感じます。私が感じた問題は、その多種多様の読み方です。音読み、訓読み、ひらがなの組み合わせ。
「竜也…このカタカナ(?)は書かなくてよい?英語で書いてダメか?」
『それだと読める人しか読めないだろ?』
「だってぇ…。カタカナ(?)をそのまま英語に訳しても意味違う事ある。分からないよ」
『ああ…まぁ…和製英語ってやつだな…。』
「ワセイ…エイゴ?」
『ようは…
アニメソングの歌詞に使用されている英語は、ちゃんと意味のあるもので作られていることが多くて覚えやすかったのですが、確かにカタカナに振られたローマ字をそのまま発音すると、意味不明に陥ることがあったのを覚えています。
「う~ん。竜也に英語を教えるの、楽しかったけど…。自分が日本語覚えるの…楽しくない。」
『そりゃあなぁ…母国語は簡単だけど他国語ってなるとな。それでも俺はスペイン語まで覚えているシェリーの方がすげぇと思うぞ?』
「…ホント?」
『ああ、マジかっけえ…ってっっっ』
竜也の褒めセンスは本当に私のやる気を起こさせてくれる。そんな竜也に私は思わずキスしてしまいました。
『ぷぁ…。』
「はぁ…好き…竜也。」
『シェリー…。手…止まってるよ』
「はっ!」
竜也にツッコまれて我に返った私は、漢字書き取りの続きに入ります。チラリと横目で竜也を見ると、竜也は自分の唇を指でゆっくりと触っているのが見えます。
(ふふふ。竜也、やっぱり素敵。)
その行為自体も気になって仕方ありません。おかげで書き取りの文字が小動物でも這っていたかのようにウネウネと蛇行しています。ノートの端にこっそりと、スペイン語で「me gusta」と書いてみたり、こんな事言うと不謹慎ですが、いつ心臓が止まっても良いくらい幸せな時間がそこにありました。
『なぁシェリー。』
「ん。分かってる。書き取り終わったら、次は竜也の番。
『ああ、頼むわ。シェリーの日本語と同じで、俺も英会話はなんとかできているけど、文章になるとスマホに頼りっきりだからな、手書きになると悩むんだ。』
「竜也、
『だからこそ、頼りにしてるよ。シェリーも、漢字頑張れ』
私達は共にお互いの苦手分野を埋めつつ、私にとっては初めての日本語で受ける期末テストがやってきました。
とはいえ、英語はもう間違えようが無く、数学は万国共通なのである程度の知識さえ有していれば問題はありません。私の苦手分野である日本語の国語と日本の歴史が多く入る歴史のテストが最難関です。
初日の1回目から英語のテスト。クラスメイトが悲鳴を上げる校内放送から流れるヒアリング音声は、母国語である私にとって独り言を聞いているようなもので、終了後は全員から質問攻めに遭います。
『やっぱりシェリーさんは母国だから余裕よねぇ』
「あはは…。読んで、聞いて、そのまま書くだけ。」
『いいなぁ~私も英語ペラペラになりた~い』
「新聞、雑誌、あと映画や音楽、聞く、見る、読む、大事」
『英語の新聞って売ってるの?』
そう聞かれると、私も売っているのを見た事はありません。
「本屋、あまり行かない。よく分からない。輸入しているところ、あるなら買える。今ならネットでも見れる。」
『ネットかー。でもお金も掛かるよね。』
クラスメイトに私がいる事で、英語への関心がここまで高まっているとは私自身も考えませんでした。特に私のいるクラスの英語の成績は平均で学年トップ。これは授業以外の時間で英語に触れる時間が長いからでしょう。
「みんな、英語のテスト、どうでしたか?」
私が聞くと、みんなの顔は笑顔が多く、中には私の手を握って感謝する人もいました。
『ホントはね、英語が苦手だったんだ。シェリーのおかげで今回のテストは良い点が取れそうなの』
「(※英)本当?凄いじゃない!」
私はクラスメイトと会話する時、全てを日本語で話すわけではなく、時折英語で会話し、分からない時にゆっくりと和訳する事で、簡単な単語はクラスメイトも聞き取れるようになりました。
竜也が言うには、日本語でも地方特有の方言によっては同じ事が起こるらしい。
(そういえば、入院してた時のお爺さんの言葉、ほとんど聞き取れなかったなぁ)
そこが日本語の難しいところ。英語で言うところのイギリスとアメリカの違いよりも難しいと私は感じました。
今回のテストでは、基本的な知識が問われる数学と理科はほぼ満点に近い成績。英語はもちろん満点なのですが、国語は…ギリギリ赤点は回避しましたけれど、今後の反省点が多く残る結果になりました。
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