第35話 ギュッとして欲しいと想う事もあるのです。
その数日後、私は無事に退院しました。竜也が竜也ママと共に迎えに来てくれて、ママさんは自分の子供のように私をギュッとハグしてくれました。
『本当に心配したんだからね。』
「…ママさん…。」
帰りの道中。私は竜也にある提案を相談してみました。
「(※英)竜也…。その…。今日、ママはお仕事なのよね?」
『(※英)はい。私がタクシーで迎えに行くって言った。断られました。』
「(※英)じゃあ…帰ったら、ゲーム…しませんか?」
『(※英)大丈夫…?』
『あら?二人で何英語で話ししてるの?私の話?』
私達が英語で話をしている内容がママさんも気になっているようです。でもこれには理由があって、実は二人だけの隠語になっているのです。
「ママさん、今日も、お仕事、ファイトです。」
『ふふ、ありがとうね。夕飯は…ごめん。また、シェリーちゃんにお願いしちゃおうかな?』
「ふふふ。OK。任せて」
これで誤魔化せているかは分かりませんが、私達の言うゲームとはセ○クスの事です。もちろん、二人で話し合って決めた事ですが、実際に言うのは今回が初めてです。
『竜也、病み上がりなんだから、あなたも手伝いなさいね』
『分かってるよ。母さん』
夕飯の買い出しを済ませた後、竜也ママは仕事へ出掛けていきました。
「ママさん。土曜日も仕事、大変ね」
『まぁ…タクシー代金使わなくて済んだけどな。』
夕飯までにはまだ時間がたっぷりあったので、私は先にお風呂へ入る事にしました。入院生活でもシャワーを浴びる事はできましたが、できればゆっくりと湯船に浸かりたかったのです。
(はぁ…久しぶりに入るお風呂。日本人はお湯を溜めて入る習慣があって、初めて来た時は衝撃でしたが、これも慣れればとても気持ちが良い。)
コンコン…。
私が入浴中のお風呂に、ドアをノックする音が響きました。
『シェリー…、あの…。』
「…。竜也…?」
『あ…ああ…。その…タオル…持ってきたぞ』
「ありがとう…。」
…。…。…。
「竜也…?まだ…いる?」
『な…ああ…いるよ?』
「…入る?一緒に…」
『いい…のか?』
帰り道で、私から竜也に求めてしまった以上、その場の空気はすでに、そういった流れになっていました。
2年ぶりに二人で入る湯船。お互いに身体的な変化は目覚ましく、特に私は当時よりも更に女性らしさが際立っているのは、自分自身でよく分かっています。
彼の視線の先が、私の顔よりも下に向いているのもすぐ分かりました。
「ここで…する?」
『いい…のか?』
「うん。そんな気がして…ちゃんと持ってきたよ」
湯船のちょっとした物置スペースには、ママが持たせてくれた
…。…。…。
「竜也…セ○クス、上手になった?」
『な…そこまで…じゃねぇよ…。』
お互いにふわふわした体で、リビングのソファーに肩と肩をくっつけて座るこの瞬間が、今まで入院していた私の不安を一気に消してくれる。
『シェリーの…胸の傷…。』
「ん?」
『その…。触っても…いいか?』
「OK…。」
竜也に傷を触らせるのも久しぶりのこと。私が着るシャツの下側から彼の手が徐々に侵入し、ゆっくりと胸の谷間にある手術痕に触れていく。
「ん…。」
カサカサする傷の感触と共に、僅かに胸をかすめる腕の感触が交差し、思わず変な声が出てしまいます。
『父さん…。生きているんだな』
「ん…。い…YES…。私も…元気。パパさんも…元気。」
私の手も無意識に彼の下の棒に触れてしまい、その状態に思わず驚いてしまいます。
『ごめん…シェリー…。また…。』
「あ…。た…竜也…?」
思わぬ2回戦目に、危うく
「はぁ…はぁ…はぁ…。た…たつ…や」
結局、3回戦までもつれて、気がつけば夕方になっていました。
…。…。…。
「竜也…、ありがとう。けど、ちょっと疲れた。ははは」
『わ…悪りぃ…。退院したばかりなのに…。』
「私が…そうして欲しかった。竜也、謝ること無い」
夕飯を作る私と、それを手伝う竜也。まだ互いに学生同士だと言うのに、その光景はすでに新婚夫婦のようでした。
(私には時間が無い…。だから、今の幸せをいっぱい感じていたい)
もし私達が結婚できる年齢に達したとしても、その時に私が生存できるかは分からない。だけれど、早まって子供が出来てしまっても、それがかえって自分の寿命を縮めてしまう可能性もある。
ちなみに臓器移植者の妊娠・出産は基本的には可能ですが、移植者特有の薬物服用による影響は少なからず起こりうる事象のようです。特に授乳に関しては免疫抑制剤の種類によって、新生児に影響が出る可能性もあるため、医師との相談が不可欠とされているのです。(日本移植学会より)
「竜也は…葵と…その、セ○クスしたこと、無いのか?」
『な…ね…ねぇよ。俺が…シたのは…シェリーだけさ…。』
私の突然の質問にも、竜也は顔を赤くして答えてくれます。そんな恥ずかしそうにする顔もまた、彼の魅力の一つと言えます。
「じゃあ…ちゃんとゴム…付けないと…ね」
『あ…当たり前…じゃねぇか。ってなんで、葵とその…前提なんだよ。』
行為をしたあとだと、どうしても関連した話題になってしまいます。私は顔を真っ赤にしている竜也の頬に、軽くキスをします。
『な…急にびっくりするじゃねぇか』
「あはは。竜也、顔、赤ぁい」
私の日本で初めての入院、そして退院した日。私にとってそれは、とても忘れられない一日となりました。
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