魔法教えます

「魔法ってのは、計算式クエリーなんだよ。お前のさっきの、どこから持ってきたか知らねえが、滅茶苦茶の誤字だらけだぜ。自分で読めねえだろ?」

「読……」

――読めるわけねーだろ、あんなの、カッコよさげな模様だとばっか思ってたぜ!

「読………………めます!」

「ウソつけ」

 救世主が張った見栄は、一瞬で王に却下された。

「読めるんなら、俺が直した処言ってみな」

「えー……………………………」

――なんか指でチョチョっと書いたなと思ってたら、アレ、直してたんか。スゲーな王様。って、そうじゃなくて

「考えるまでもないだろう。お前読めもしなけりゃあの魔法の中身も知らねーだろうが」

「はい……」

 救世主は、王の言葉を認めるしかなかった。


「というわけで、その辺でテキトーな魔法まき散らされるわけにもいかねーからな、お前には基礎を学んでもらう。何か言いたいことは?」

「ありません」

 勉強かぁ……とがっくり項垂れる救世主。

――異世界に来てまで勉強かぁ……。はっ、いや、これで教えてくれるのが美少女だったり、オレの新たな展開が待ってるかも!

 がっくりきたり、期待で目を輝かせたりと、傍から見てると面白い救世主は放っておいて、王は従者を呼んだ。

「リル」

「はい、ラステイル様」

 一歩下がった処にいたリルが、王の近くに来る。

「こいつを魔法院に届けろ」

「嫌です」

 けろりと王の命令を拒否する従者。

「お前な。毎度毎度……」

「ですから毎度申し上げておりますが、私はラステイル様のお傍を離れたくないのです」

 妙にきりっと言われても。言ってることは命令違反である。

「使いくらいしてくれよ」

「ケリムが行けばよろしいでしょう」

「ケリムには別の用事があるんだよ!」

 片眉を上げ、ちらりとケリムを見るリル。不服そうな顔をしたが、

「分かりました。小僧、行きますよ」

 救世主の方を見ずに、さっさと行ってしまうリル。ケリムが救世主の背中をそっと押した。

「早く行け、リルははぐれても探してくれないぞ」

「は、はい」

――はえぇよあの人、マジで置いていく気だな

 慌ててリルの後を追いかけようとした救世主の背中に



「ところで、日本てどこだ?」




 救世主が振り返ると、王が笑ってこっちを見ていた。

 口元はにやりと歯を見せて、先程までのやりとりのようにフレンドリーさを残して。

 目は口元と同じように、笑っていた。

 但し、目の奥に笑いと違うものが浮かんでいた。

 ひやり   としたものが。


「………………………………」

 救世主がその雰囲気に答えられずにいると、王はふわりと笑って、リルの後を指差した。呪縛が解けたように、救世主はリルの後を追った。

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