見せてみな

 王ラステイルは、引っ立てられた救世主アーサーの顔を見ると、それはそれは深い溜息を吐いた。

「……………………………テメエなぁ…」

「何だよ……じゃねえ、何ですか」

 王の前には、いつものように、リルとケリムが王を庇うように立っている。その前には、最初の時と同じ広間に、王の前に跪かされている救世主。

「まあな、何かやるたぁ思ってたけどな」

「それは、オレの救世主としての活躍を期待してくれてたってことだな!」

 えっへん!と胸を張る救世主に、相変わらずリルの目が光る。お控えなさい、そう言っていた。

「ケリム」

「は」

 王に呼ばれて、ケリムが王の方を向き直る。

「報告によると、こいつは牢の中で魔法を使い、鉄格子で大きな音を鳴らした。その音は牢全体に響き渡り、他の囚人や看守たちに頭痛を起こさせた、とあります」

「何やってんだ」


 そう、救世主の魔法は、発動したはいいが、鉄格子に当たって音を立てただけだった。ちなみに、鉄格子には傷一つついていない。

――なんだよ、救世主の魔法って、鉄格子も破れないのかよ。何教えてくれてんだよあの神。あれ救世主の魔法か?


「その魔法、ちょっと見せてみろ」

「はえ?」

 王が、救世主に命令した。

「いいから、ちょっと俺に見せてみな」

「危険です、ラステイル様!!!」

 リルとケリムが、王と救世主の間をふさぐ。

「いいの?」

「早くしな」


 王の命令で縄も解かれ、やってみろと顎をしゃくられる。

「よーしやっちゃうぞー! 驚いてチビっても知らねーぞ!」

 救世主は王に向かってぶっ放すつもりが、従者2人の殺気をありありと感じて、壁に向かってやることにした。

 では、と構えようとする救世主に、王が声を掛けた。

「ところで、今からお前がやろうとしてるのは、どういう系統だ?」

「ほえ?」

 声を掛けられた瞬間、救世主は体ごと王の方を向いてしまい、その時


 王は従者をすり抜けて、前に出た。

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