救世主と神

――うわー、連れてこられたと思ったら、牢屋か~。


 救世主、(自称)アーサーは、狭い牢屋の中を見回した。

 当然だけど狭い。暗い。感じよくない。出られない。

――しかしオレ! くじけるな! もしやこれは、追放ざまぁのプロローグ!!

  そうと決まれば、スキルのチェックと、復讐かスローライフかの見極めを……

  あれ、スキル? スキルってこう、指さしたり手を振ってみたらステータス出てくるもんじゃないの?

「何やってるの、きみ」

「ん?」


 今まで(自称)アーサー1人だった牢屋に、ひょろりと長身で長いウェーブの掛かった金髪の男がいた。

「あーーーーっ!!! テメエ!」

「どーも~~~~~っ神でーーーすっ」

 チェキ!と2本指を立てた手を額にかざし、ぺろりと舌を出す男。いや、神。

 チャラい。

「テメエ……」

 しかし、(自称)アーサーにはどうでも良かった。それより

「テメエ、ここどーなってんだよ、ここ来て出会ったの男ばっかだし、王様怖いし、何のためここ選んでオレ送ってきたんだよっ!!」

 そう、(自称)アーサーをこの世界に『救世主』として送ってきたのは、目の前のチャラ男もとい神だった。


 思い返せば今日のこと。

 通っている高校からの帰り道、立ち寄ったハンバーガー屋で、水曜の試験の教材をテーブルに広げていた月曜日。当然のことながら、身など入らない。

「あーあ……どっか行っちまいたいなぁ……異世界とかさ」

「行きますか?」

「は?」


 誰もいなかった2人席の向かいに、チャラそうな男が座って、ニコニコ笑い掛けてきていた。

「アンタだれ?」

「神でーっす」

 チェキ!と2本指を立てた手を額にかざし、ぺろりと男は舌を出した。

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