王vs救世主、第1ラウンド(その4)

 それを合図のように、兵士たちが寄ってきて救世主を取り囲む。

「とりあえずお前は、ここにいてもらう」

「! ラステイル様!」

 リルが抗議の声を上げる。が、ラステイルは無視をする。

「お前が城の庭に急に現れたこと。現れるなり、兵士に『救世主』と最初に言ったこと。じっくり聞きたいが俺も暇じゃねえ。後で聞いてやるから、ゆっくり休んでいきな」

 それきり、王は最初の位置に戻ろうと踵を返した。その背を隠すように、ケリムが救世主と王の間に立った。

「連れて行きなさい」

 リルが兵士に声を掛けると、兵士が救世主を立たせて連れていった。


「……ラステイル様」

 近くに来たケリムは、そっとラステイルにささやいた。王はそれに頷いて、

「お前はどう思う?」

「そうですね、ただの子供に見えはします」

「同意見だ。だが」

「はい」ケリムも頷く。「事実は事実。油断は出来ません」

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