王vs救世主、第1ラウンド(その3)

―― なんでわかった。


 やっぱバリバリ日本人顔で、アーサーはなかっただろうか。いや、この世界で『日本人顔』とかないだろうから、だから。

 なんでわかった。

「あなた。王に対して敬語がありませんよ」

「どえ!?」

 リルのもうすぐ刃物を取り出しそうな目が刺さる。

「テレパシー!?」

「『やっぱりバリバリ日本人』から、お前の口が喋ってたぞ」

 呆れたように、ラステイルが言った。


 がく、と救世主は項垂れた。

―― ヤベえ、白状しちまった。さよなら、オレの新たな出発!


「おい、(自称)アーサー」

「(自称)付けるのかよ!」

 王の呼び掛けに反射的に答えてしまった救世主だが、王の後ろで食卓に出てくるようなナイフを磨きだしたリルが目に入ってしまい、気を付けようと思うのだった。

「………… です」

「? なんだ?」

「アーサー、です」

「そうか。じゃあ(自称)アーサー」

「(自称)付けるのかよって言ってんだろ!! …………です」

 リルの前にケリムが立ちふさがっている。王は、その気配を察してはいるがいつものことなのか、振り向きもしない。

「名前を訊かれて堂々と偽名を名乗るってことは、どこから来たか、何の用でここにいるかってことも、喋りゃしねえよな」

「あ、いや、」

―― アーサーなんて言わなきゃよかった。でも本名言いたくなかったし。日本とか言ってもしょうがないだろうし。何の用?こっちが聞きたいよ

 ぱくぱくと口を開けては閉じ、しかし何も言わない救世主を見下ろし、王は一歩後ろに引いた。

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