王vs救世主、第1ラウンド(その2)
―― このイケメン、王様なんだ。若そうに見えるんだけど、いくつなんだろ。はっ、じゃなくて、ここからオレはどうすればいい!? ここはどういった国なんだ。救世主としてオレは取り入って王宮に入り込む方向か、はたまた追放ざまあもう遅い系か、はたまた野放しスローライフ系か! さあ、いったいどっちだ!!
状況把握の材料がなさ過ぎて、自らの行動を決めかねる救世主は、だからまだ一つの質問にも答えてないことに気付いていないばかりか、うっかり王を睨みつけていることにすら気付いてなかった。
「ラステイル様、お下がりを。危害を加えるつもりの顔をしております」
ラステイルから一歩下がった処まで来ていたリルが、庇うようにラステイルの前に出る。
「おいおいリル、こんな間抜け面に俺がやられるとでも?」
バカにしているというより、むしろきょとんとした顔をしているラステイル。
「リルの言う通りです。お下がりください。確かに何も出来なさそうな小僧ですが、こうしてまんまと王宮に潜り込んでいるのです。目的が判らないのに、貴方様の御身を危険に晒すことはないでしょう。まだ何処のどいつの手の者かも聞いていないのです」
同じくラステイルの前に出たケリムの指摘に、王はそうだった、という顔をする。
「何処のどいつの手の者か、なんてのは、これから調べりゃいいだろ。ま、とりあえず本人に一度聞いてみてからでも悪くねえ。おいそこの”救世主”とやら、お前の名前は? どっから来た?」
ぞんざいな扱いだな~と思いつつ、救世主は名前を……名乗ろうとして、止まった。
―― 名前?
名前。
名前。は。
―― 名乗りたくない。
救世主は、名乗りたくなかった。だって。
―― 日本で一番多い苗字と、日本で一番多い名前だから。
じゃあ。どうせなら、救世主らしい、カッコイイ名前を。
―― どうしよどうしよ、王様”ラステイル”なんだって。くそ、ちょっとカッコいいじゃん。どうしよどうしよ、えーとえーとえーと、考えろ、ほらそこの執事っぽい人睨んでるから、あの人マジ切りかかってきそうだし、えーと
「……アーサー」
「『アーサー』?」
ラステイルの口が、救世主の名乗った名前を復唱する。
その時、救世主の体に弱い電流のようなものが走った。
「?」
―― なんだいまの。
ラステイルの顔が救世主に近付き、至近距離から金色の目が救世主の目を覗き込む。1,2秒ほど眺めて、
「……なんかアーサーって感じじゃねえんだけど。お前それ偽名じゃねえのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます