王vs救世主、第1ラウンド(その1)
「で。お前が”救世主”と名乗る者か?」
偉そうな超イケメンこと王ラステイルの傍に、二人の男が立っている。
向かって左、ラステイルの右側に居るのは、ラステイルより上背のあるややごつめの男。最初に言葉を発したのは、この男だった。
名は、ケリム。ラステイルが幼少の頃より彼に仕える、この国の実質ナンバー2である。
「まず、名前を聞きましょうか。それと、いきなり王宮の庭に現れた経緯を話してもらいます」
ラステイルの左側に居るのは、リル。先ほどまで執務室で王の補佐をしていた執事風の細身の男だが、この国のナンバー3といっていい存在である。
―― うわー、なんかヤバそ~~~
救世主は、きょろきょろと目だけで辺りを見回し、自分の置かれた状態がかなり不利そうなものを感じていた。
―― いや! 物語の始めなんてこんなもんだ! ここからオレの無双伝説は始まる! 考えろ!考えるんだ!! どうすればオレが華々しくデビューできるかをなぁっ!!!
「質問に答えてもらえないものですかね。ったく、ラステイル様の御前で無視などと…」
リルの声と視線が尖っていく。
「いいですか、そこの者。貴方が目の前にしているのは、この国の王、我らがラステイル様です。我らの存在は等しくこの方の為にあり、全てのものはこの方の為にある。よって貴様のその行いは、この方の為にならず…………」
「待った。おい待ったリル」
滔々としゃべり続けだんだん尖っていくリルに、ケリムがストップを掛ける。
「待ちません。この者にラステイル様の偉大さを100回聴かせるまではっ………!」
「お前は質問に応えさせたいのか、自分が語りたいのかどっちなんだ」
「どっちもですっ!!」
二人の掛け合いの中、真ん中に位置していたラステイルが、ふ、と動いた。
二人の掛け合いが始まる前、値踏みをするように救世主を見下ろしていたラステイルの顔は、掛け合いに一瞬だが柔らかく緩み、その後、口の端を歪めた笑みを薄く浮かべた。
ゆっくりと、救世主に近づく。
一歩、一歩。
彼が動くと、周りが自然と背筋を伸ばして敬意を表明する。
空気さえも、居住まいを正し、彼にひれ伏すようであった。
救世主の手前ですらりとした長い足を止め、腕を組む。スタンドカラーの襟に届くかというほどの黒い髪が、微かに揺れた。
金色の切れ長の目で、救世主を見下ろす。
「俺がこの国の王、ラステイル・リネイユ・エンクシーカーだ。俺に用か?」
低いがどこか高さも感じる特徴的な声が、救世主の上に掛けられた。
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