第7話 ”覚悟”

 あの告白があってから数日が経ち、カレンダーも7月に入った。

 あれから、どうなったかというと・・・・

 「はは、なんか暗くなちゃいましたかね。気にしないで下さい。忘れてください」

 「いや、でも・・・」

 「心配ご無用!・・・雨強くなってきましたね。これ以上強くなったらやばいので帰りますか」

この言葉を皮切りに帰ることになった。

 私は彼の言葉を上手く飲み込むことができなかった。というよりも、理解が及ばない。え、死ぬ?どいう意味だろか。比喩?実際に?結局今日まで理解することはできずにいる。

 

 それからも数日、彼とは会わなかった。その間に誰かに話した方が楽になるかと考えたが、他の誰かに話すこともできず日々が過ぎていった。

 

 7月中盤、日中の暑さはだんだんと夏に近づき辛くなってくる。そして、学生には頭が痛くなってくる時期に入る。学期末テストである。私は、勉強ができるほうとまでは言わないが、まあまあである。でも、テスト前は勉強をしないといけない。そして、日々の忙しさに追われ、あのに対して考えを巡らせる機会もなかった。


 「やっと、終わったー、疲れたー」

 「だねー、お疲れ~」

今日学期末テストがようやく終わった。いやー、終わった。やはり、テストは難しく感じる。後は、テストの返却という山を乗り越え、夏休みである。まぁ、その山が高いのであるが。なので、ひと時の休息である。

 「・・・聞いてよー。先生がさ、”この感じだったら、赤点2つで済むなって”言うんだよ~、・・・2つ確定かよ!!」

と言いながら、机をたたく。・・・おかしなテンションになってるな。というか、どんまいとしか言えない。いつもよりはいいのかな・・・?

 「ど、どんまい。2つで済むかもだって、ま、まぁ、良かったんじゃない?」

 「ううううううう」

舞は机に突っ伏しながらうなり、「いつもよりは頑張ったのにー」と言っている。

 テストの赤点取得者には夏休みに補習が待っている。本人のとった点数と教科の数で長さは決まるが・・・。基本的には1週間はある。そんな終わった直ぐに言われるとは、、、優しさなのか、な?

 「ま、まぁ。補習が終わったらどこか行こう。ね!」

 「うん。行く」

舞は顔を上げて即答した。


 「夏休み楽しみだね。うーん、どこ行こうか!」

と元気になった舞が楽しそうに言う。うん、元気になってよかったけど、さっきまでの落ち込みはどこに。

 「その前に補習だけどね」

うーと言いながら、嫌そうな顔をする。それを見てると、自然と笑ってしまう。それを見て、「何笑ってんだよー」と言いながら、笑い合う。

 今日は、午前中で学校が終わり、今は下校中である。

 忙しさが落ち着くと、頭の隅っこにあったことを考える時間ができる。ちょうどいいので、舞に相談してみることにする。

 帰り道にあるカフェでお茶をしながら、前にあったことを話す。しばらくの沈黙が二人の間を流れ、舞が口を開く。

 「・・・そっか。何とも言えないね」

声のトーンは低く一言、もの悲しそうなほっとしたような、何とも言えない顔でそう言った。

 「・・・どうしていいのか、というよりもどのように受け止めていいのかがわからなくて」

 「・・・そうだよね。・・・優しいね」

 「え?」

 「混乱したり、困惑しても、放っておかずに受け止めようとしているところがさ。・・・最近出会ったばかりで、相手を理解して受け入れてくれるなんて・・・自分も大変なのに」

と一回口つぐみ、一度間をあけてから言う。

 「相手もうれしいだろうね」

と安心したような笑顔で言ってきた。正直に言って驚いた。でも、相談して良かった。心がすこし、楽になった。そんな風に思ってくれたことがうれしかったし、救われた気がした。それからも、話に乗ってもらい、自分の中で何かが定まった気がした。

 あの時は、舞のあの笑顔の意味を知ることはなかった。


 今日終業式が終わり、夏休みが始まった。結果的には自分は赤点なしでいい点とそれなりの点にわかれた。舞に至っては、赤点を2つで抑えたらしい。いつもなら、ほぼと言いたくなるような結果であるが、今回は頑張ったらしく2個で済み、赤点も一つはぎりぎりで済んだらしい。本当にやればできるのに。補習は1週間ぐらいでいいかなと言われたらしい。「1週間は長いよー」と言っていたが、先生も鬼ではなく出来が良ければ、短くはなるらしい。


 私は、今夜は公園に行こうと思っている。テスト期間も行ってはいたが、前より回数は少なくなっていた。彼と会うことはなく、助かってた場面もあったが、今回会えたら覚悟を決めて話そうと思う。何を話すかはわからない。でも、あれから、お互いの秘めていた部分に触れた。だから、助かっていたというよりも逃げていたんだと思う。だからこそ、この気持ちに区切りを、決着を―――

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